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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月21日(水)☀️/☀️

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3-12 最初の酔っぱらい


「継ぐって、後継ぎってこと?」

「そうじゃ。」


「な、何を継ぐの?」

「…」


 一瞬、バーチャんはハッとした顔をしたが、直ぐに知らんぷりをする顔に戻った。

 バーチャんはお茶を啜り、何事も無かったかのように黙ってPadを操作し始めた。

 俺は暫しバーチャんの返事を待った。バーチャんは黙ってPadを見続けている。


 このバーチャんが黙ってしまう様子を俺は知っている。


 俺は大学進学をする際に、東京の大学に行くか神戸の大学に行くかを迷いに迷った。

 その際にバーチャんに相談した。

 いろいろとバーチャんと話し合った。

 話し合いの最後に、こうしてバーチャんは黙ってしまった。


 就職留年をする際も、バーチャんに相談した。

 フリーターで東京で1年辛抱するか。

 淡路島に一旦戻るか。

 就職留年するか。

 その話し合いの時にも、最後はこうしてバーチャんは黙ってしまった。


 俺が将来のことで悩み相談しても、最後には黙ってしまう。

 こうなったバーチャんは、これ以上は何も言わない。

 バーチャんが俺に自主性を求める時には、こうして黙って何も言わなくなるのだ。


 俺は黙って仏間を出て、再びお爺ちゃんの部屋に戻ることにした。



 バーチャんは『継ぐ』と言った。


 これはもしかしたら『門』に関わることじゃないだろうかと考えた俺は、『継ぐ』の語句で大量の日記に検索をかけてみた。

 ノートパソコンの画面には、大量の『継ぐ』を含んだ文章が出てくる。

 その検索結果を眺めて『何を継ぐ』のかを読み取ろうとした時、スマホが震えた。


 そう言えば日記にかかりっきりで、午後は社内メールを見ていないことを思い出した。

 一瞬、『継ぐ』の検索結果を読み続けようか迷ったが、検索結果を捨てて社内ネットにログインした。

 スマホには彼女からのLINEが入っていた。


「電話で話せますか?」18:45


 社内ネットに接続したノートパソコンで彼女のIDが社内チャットに参加していないことを確認して、LINEに返信を打った。


「お疲れ様。今なら大丈夫」18:55


 暫くして彼女からスマホに電話がかかってきた。


「はい。門守です。」

「秦です。センパイ。今、大丈夫ですかぁ?」


「今日は定時に帰れたのか?」

「はぁい。部長が来て定時に帰れってぇ~」

 部長が来て定時に帰れ?


「定時前に部長が来て、皆に定時に帰れってぇ~」

 これは何かあったな?


「まあ、たまにはいいんじゃないの?」

「そうですよねぇ~。センパイは淡路の実家を満喫中ですかぁ~。」


「おう。何年ぶりかで農作業したりして腰が痛いよ。」

「集団お見合いはしたんですかぁ~(してるしてる」


「その話で電話してきたなら切るぞ。」

「センパイの実家ってやっぱり淡路島だったんですね。(ほろほらやっぱり」

 淡路島?なんで知ってるんだ?


「今、人事の美奈とぉ経理の由紀で飲んでてぇセンパイの話題になったんですぅ。聞きましたよぉセンパイの実家。ゼミの時にも聞いてた気がしたけどぉ確信が持てなくてぇ~」

 こいつ、酔ってるんじゃないか?


「私も美奈も由紀もぉ。センパイのぉ集団お見合いに興味アリでぇ~。みんなそろそろ考えないといけない時期でぇ~(ねぇ~」


 だめだ。酔ってる。

 それに人事と経理の同期に実況してる感じがする。

 さっきから、電話の向こうからヒソヒソ声も聞こえる。


「切るぞ。」

「あぁ~センパイ切らないでぇお見合いの…ブチッ」


 酔っぱらいの相手をする気にならず、俺は電話を切って社内メールを読むことにした。


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