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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月21日(水)☀️/☀️
42/279

3-11 帰省3日目の晩御飯


「やっぱり旨いなぁ~」

「そうか。そうか。」


「ししゃもを焼いて食べるなんて久しぶりだよ。」

「東京では食えんのか?」


「食べれるけど魚を焼くのが面倒で。」

「じゃあどうしとるんじゃ?」


「レンジでチン。」

「電子レンジか?あれじゃ焼けんだろ。」


「焼けない。熱するだけだね。」

「ワシもやったことあるが、もの足らんのう。」


「魚を焼くとグリルを洗う必要があるでしょ。一人の食事でそこまで手間をかけるのが面倒臭くて。」

「グリルは磨けばよかろう。」


「昨日も話したけど、ここ数ヵ月は忙しくて食事に手間をかける気にならなかったんだよ。ついついコンビニで弁当を買って済ませてたから。」

「もしかして飯も炊いとらんのか?」


 バーチャんに言われて最後に飯を炊いたのはいつだろうと振り返ってみた。

 あれ?最後に炊いたのはいつだ?


「早よ、嫁貰わんと体壊すぞぇ。」

「…」


 仕事に余裕ができたら自炊に戻れると応えようと思ったがやめた。

 この流れは何を言っても嫁取りの話になりそうだ。


 バーチャんが煮物も作ってくれていたので、久しぶりにバーチャんの手料理を堪能でき充実した晩御飯となった。



 晩御飯も終わりグリルも磨き終えて、仏間でお茶を飲んで寛いでいる時にバーチャんが直球を投げてきた。


「二郎は結婚する気はあるんか?」

「あると言えばある。」


 バーチャんの問いかけに俺は否定しなかった。

 俺だって嫁さんが欲しい気持ちはある。


「もしかして、既に決めた人がいるんか?」

「う~ん。正直に言うけど今は付き合ってる人はいないんだ。」


「じゃあ見合いするか?」

「…なんか見合いに抵抗があるんだ。」


「どんな抵抗じゃ?」

「そうだね詳しく言うと…」


 俺はバーチャんにわかって貰えるように、昨日考えていたことを説明した。


 地元で見合いをしたら、今後はこの淡路島に根を張るだろうこと。

 それが悪いとは言わない。

 けれども今はその時期だとは思っていないこと。


 そうした説明をバーチャんにしていたのだが、説明している自分の言葉に矛盾と言うか間違いがあることも感じ始めた。


 こうして話しをしているバーチャんを、いつまでも一人にしておいて良いわけがない。


 既に80歳を過ぎているのだ。

 育ててくれた恩を返すべく、今日にでも地元に帰ってくるのが正しいのではないだろうか。


 ここで「一人では寂しい」とバーチャんに言われたら、俺はどうするんだろうか。

 そうした迷いのある気持ちも、きちんと伝えるべきだと考え始めていた。


「バーチャんはいつまで一人でいる気?」

「なに?!ワシはお爺さん一筋じゃ!」


 ごめん。俺の言葉が足りませんでした。


「正直に言うけど、いつまでもバーチャんを一人にしといて良いとは思わない。」

「…」


「いつかはバーチャんの世話をする。その時は帰ってくる。その時には嫁も連れて来たい。連れて来れなければ見合いもする。」

「…」


 バーチャんは黙ってしまった。

 俺の気持ちは伝わったのだろうか?


「戻ってきて世話をしてくれるとは、ありがたい話じゃ。」

「わかってくれる?」


 バーチャんの言葉で、俺の気持ちが伝わり始めたと思った。

 これで今回の帰省中は見合いの話は再燃しないだろうと思った。

 けれどもバーチャんの次の言葉で、見合い以上に悩ましい話になってしまった。


「次郎が戻ってくると継ぐことになるじゃろう。継ぐ気になったら戻って来い。」


 バーチャん。何を継ぐんですか?

 主語がない気がするんですけど…


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