表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月21日(水)☀️/☀️
39/279

3-8 副業


「俺、大丈夫かな?」

「なんじゃ。なんぞ悪いことでもしたんか?」


 俺は実家のネット環境を使って会社へ接続し、自分勝手にテレワークに使ったことをバーチャんに話した。

 バーチャんは気にするなと言うが、小心者の俺は気になって仕方がない。


「二郎は相変わらずじゃ。心配してもしょうがないことは心配するな。」

「お国とか米軍とかが準備したのを自分勝手に使ったんだよ、心配するのは当たり前じゃん。」


 するとバーチャんが俺を見据えてこう言った。


「二郎。よう聞け。パソコンもWi-Fiもワシが使っとるPadも全部むこうが勝手に持って来たんじゃ。ワシが不便だとかもっと良い方法がないかと言うと何かしら持って来るんじゃ。気にするでない。」

「そ、そう言うもんなの…」


 俺はバーチャんの言葉に押されてしまいそうな自分を感じた。


 確かに最初に実家へインターネット接続を持ち込んだのは俺だ。

 高3の時に進学する大学を調べたり、模試やら何やらでかなり便利に使っていた。


 鑑賞のためじゃないからね(棒読み


 その後はお国から来た人が高速化したんだろうし、Wi-Fiまで設置したのもバーチャんにPadを渡したのもその人達だろう。

 たとえむこうが勝手に準備したものでも、バーチャんが使って良いと言ったとしても、俺はお国の人や米軍の方々が考えている本来の目的以外に使ったんじゃないかと気になるのだ。


「あの大量の日記が入っているLAN-DISKも勝手に持って来たの?」

「そうじゃ。最初は紙で持って来て読み比べが大変じゃった。」


「紙で持って来た?」

「英語の紙と日本語の紙を持って来るんじゃ。それを見比べて間違いを指摘するんじゃ。」


「そんなことをしてたの?」

「それがカンシュウ(Supervision)じゃ。月に何回かやると金が振り込まれるんじゃ。」


「金が振り込まれる?」

「そうじゃ。いわゆる副業じゃな。」

 バーチャん。そこでドヤ顔ですか?


 あああ!そうか!

 『Reiji』って書かれた段ボールに入っていた大量の3.5インチFDDは、紙から磁気媒体に代わった名残なんだ。

 それでバーチャんは『もう使わん』と言ったんだ。


 それに『副業』って何だよ。

 バーチャんの年齢なら既に年金生活だろう。

 さらに副業で、日記の翻訳の監修までしてるって何だよ。


 待てよ…

 その副業ってバーチャんだけか?


「いつからやってるの?」

「何がじゃ?」


「その副業っていつからやってるの?」

「あぁ、前はお爺さんがやってて…」

 マジ?!

 お爺ちゃんが生きてる頃からなの?


「お爺さんが亡くなってワシが引き継いだんじゃ。」

「そんなに昔からやってたの?」


「それで稼がんと、二郎は学校に行けんからな。」


 俺が物心つかない時から、お爺ちゃんからバーチャんへと『副業』が引き継がれてたなんて俺は全く知らなかった。

 バーチャんは一言も言わなかった。

 お国の人が持って来た紙なんて見たこともない。

 あの『3.5インチFDD』だって、実家にあるのは始めてみた。


 それでも、俺の養育のために農業だけじゃなくて副業もしてくれてたんだ。


「バーチャん。俺の学費って…」

「それも副業のおかげじゃ。」


 バーチャん。

 本日2度目のドヤ顔ですか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ