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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月21日(水)☀️/☀️
33/279

3-2 新玉ねぎ


 俺は朝食後の洗い物を終え、お爺ちゃんが使っていた部屋で社内メールを眺めていた。


 10通ほどの未読を全て見たが、特に俺個人に宛てたものは見当たらない。

 俺が属する課に返答を求めるものも見当たらず、全てが情報共有を目的としたメールと判断した。


 少しだけ山田からのメールを期待したが、俺への質問事項を纏めるのに時間を要しているのか不明だが山田からのメールは入っていなかった。

 昨日の彼女の話では昨日は課長が早退している。山田が俺への質問を纏め終わっても課長からの確認が取れていないのかも知れない。

 どちらにせよ、有給休暇中の俺が急いで応じる案件は無いと判断した。


 また、彼女が話していた『会社の売却』が匂うメールは1通もなかった。

 この件もまだ水面下の話なのだろう。


 スマホを見直して入電もLINEも入っていないのを確認して、昨日までの履歴を全て消した。

 山田の個人電話からの記録は一瞬迷ったがこれも消した。

 あいつの電話番号をスマホに残すメリットは俺には無いと判断して消した。


 とにかくこれで朝のテレワークは終わりとして、農作業に行くために昨日バーチャんに借りた一郎父さんの作業着に着替えた。



「バーチャん。今日はこの列で良いの?」

「そうじゃ。この倒れとるのが多い1列じゃな。残りはまた今度じゃ。」


 新玉ねぎが育つ一面は、既に葉が倒れている列とまだ倒れきっていない列でしっかりと別れている。

 この葉が倒れている状態で新玉ねぎは収穫するのだ。


 周囲を見渡せば、全面に渡り葉が倒れている中を同じように収穫に精を出す方々が見える。

 一度に全面を収穫する組はそれなりの人数だ。

 こちらはバーチャんと二人だけ。

 中学や高校の時は俺も手伝っていたが、やはり一列ごとに成長具合が違っていた。

 きっとバーチャんは一人でも収穫作業ができるように、植え方に工夫をし育て方にも更なる工夫をしているのだろう。


 倒れた葉を束ねて持ち、1個1個玉ねぎを地面から剥がして行く。

 地面から剥がした玉ねぎを葉がついたままの状態で並べて行く。

 そんな作業をする俺の後ろでは、バーチャんが根切りと葉切りをして行く。

 根切りと葉切りがされた新玉ねぎは、そのままにして切った葉の部分から水気が切れるまで置かれるのだ。


 やや中腰になりながら地面に倒れた葉を持って次々と地面から剥がして行くのは、昨日同様に腰にくる作業だ。

 最初は俺の方がペースが早いが、腰を伸ばしていると程なくしてバーチャんが追い付いてくる。

 中学や高校時代は俺の方が早く、ひととおり玉ねぎを地面から剥がし終えると、俺も根切りや葉切りを手伝ったが今日は無理そうだ。


 ちなみに他の畑では根切りも葉切りもせずに乾燥させる方々もいる。

 また根切りだけして葉を残す方々もいる。


 俺はバーチャんから、この根切りと葉切りをする方法だけを教わった。


 俺は立ち上がり腰を伸ばしていると、畑の脇から声をかけられた。


「二郎ちゃん。桂子ばあちゃんに追い付かれるぞぉ~」


 声の主を見ると、今はマクドの店長で元整備士のお兄さんが道端に止めた白い軽トラから顔を出していた。


 整備士のお兄さんは軽トラを降り、笑顔で近づいて来る。


「昨日はどうも。」


 俺は腰を伸ばしがてら挨拶をする。


「ピンクの軽トラが見えたから、桂子ばあちゃんを手伝おうと来たけど大丈夫だな。」

「おお。朝から元気な二郎がおるで平気じゃ。」


 バーチャん。

 朝から下ネタは勘弁してください。


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