2-19 調べてみた
「バーチャん。明日の予定は?」
「新玉じゃ。」
「もうそんな季節なんだね。」
「むしろ遅いぐらいじゃ。手伝うか?」
「手伝う。手伝う。」
「今日より1時間早く出発じゃ。」
「了解です。そろそろ寝るね。おやすみなさい。」
「おお、おやすみなさい。」
寝る前の挨拶を済ませた俺は、昨日と同じ部屋に向かった。
◆
昔、俺が使っていた部屋。
昨夜と違って今日は自分で布団を引くのだが、俺が使っていた頃と違って荷物が少し増えている。
この段ボールは何だろう。
もう使っていないものなんだろうと箱の横を見ると、『Reiji』とサインペンで殴り書きがしてある。
「『Reiji』零士お爺ちゃんの荷物?」
バーチャんに断りなく見るのも悪いので、開けずに少しだけ壁際に移動したのだが『カチャカチャ』と中でプラスチック同士がぶつかるような音がする。
段ボールを移動して少し広くなった部屋の中央に布団を引き終わり、俺はスマホ片手に潜り込むことにした。
しまった!忘れてた!
寝る前に会社のメールを見ていない。
… う~ん。
寝る前に会社のメールが気になるなんて、俺も社畜な考えに染まってるんだな。
今は有給休暇中だ。
先ほど彼女と電話でも話したし、急ぎでメールを見る必要もないだろう。
仕事よりも、バーチャんの話しに出てきた核実験が気になる。
ネットでググるとWikipediaの記事がより上位で出てくる。
Wikipediaの記事が全て真実とは限らないのは知っているが、基礎的な知識を得るのには便利なので利用頻度は高い。
まずは『トリニティ核実験』の記事を読み込んでみた。
心の中には核実験に対する興味と嫌悪感があったが、今は零士お爺ちゃんに関わることなのでしっかりと読み込んでみた。
ひととおり読み込み動画も検索して見てみたが、何とも凄まじい映像だ。
この核実験で米軍の門が開いたというが、あの爆風の中では門なんて吹き飛ぶだろうと思える映像であった。
どうやって核実験で得られたエネルギーを門に注いだかも気になったが、そうした部分はアメリカの軍事機密だと考え諦めた。
続けて『広島原爆』の記事も読み込んだ。
映像も検索して見てみた。
全てが75年前に日本での事実なのだと、改めて認識させられた。
昨今は、北朝鮮が核兵器を保有しているとも言われる世の中だ。
たとえ海を隔てていても近隣国が戦争になれば、そうした兵器が使用される可能性は否定できない。
実際に日本とアメリカ合衆国が戦争をしていた過去では、あれだけ国同士が離れていても核兵器が使われたのだ。
むしろ国同士が距離を隔てていたので、自国への影響が少ないと考え核兵器を使用したのかもしれない。
そうした背景を俺が今さら考えても致し方ないことだ。
続けてバーチャんが出て来たという淡路陵と広島の距離が気になり、地図を見てかなり離れていることを知った。
広島からの距離で言えば、四国の高松とかの方が直線距離で近い。
直線距離ならば『広島と北九州』『広島と淡路陵』は同じぐらいの距離だ。
それでも広島原爆で淡路陵の門が開いたというのだから、俺の知らない何かがあるのだろう。
次に調べたのは『セダン核実験』だ。
バーチャんの話で、礼子母さんが門から出て来た核実験だ。
この核実験で有名なのはクレーターの画像だ。
このクレーターの画像は以前に見た記憶があった。
セダン核実験が行われた『ネバダ核実験場』も調べてみた。
多数の画像の中で、マネキンの画像は映画で見たことのある画像だった。
仮想で街を作り核実験で影響を調べる街だという。
映画では冷蔵庫に入って助かったやつだ。
ここまで調べて、バーチャんとの話の途中で気になった『各国の核実験』に目を向けた。
アメリカは核実験で米軍の門を開いたという。
アメリカに限らず核を保有している国では、核実験を確実に行っている。
もしかして核実験をしている国は、全てが『門』を保有しているのではないかと言う可能性だ。
滑稽な考えかもしれないが、
門を保有し
門を開くために
核実験を行っている
そんな国がアメリカ以外にもあるのではないか?
バーチャんは、米軍が『門を開く』ことに拘ったのは「魔物が転移して来た」からだと言った。
本当にそれだけなのか?
実は門を開くことで得られる『何か』があるのではないか?
そうしたことが気になったのだ。