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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月6日(木)☁️/☁️
271/279

18-23 淡路SA(サービスエリア)


コンコン


 再び半透明の板をノックする音が聞こえる。

 彼女と二人で身支度を整え半透明の板を降ろすと、山本さんが話し掛けてきた。


「まもなく淡路島に入ります。すいませんが少し休憩を入れさせてください」


 山本さんの言葉を聞きながら、車の前方に目をやると、フロントガラスの向こうに明石海峡大橋の主塔しゅとうが見える。


「ああ、お願いします」

「次のPAパーキングエリアSAサービスエリアに寄せてください。警護隊も運転手さんもお願いします」


 俺からの返事を聞くなり、山本さんがハンズフリーに手を掛けつつ運転手さんにも停車を伝えると、運転手さんがそれに応えた。


「次の『淡路SAサービスエリア』に停まります」


 運転手さんがそう告げると共に、前方に見える細マッチョの車がウィンカーを出して左車線へと移動する。

 それに続いて運転手さんもウィンカーを出し、俺達の乗る黒塗りの車も車線を移動して行く。


「門守さん、秦さん。すいませんが警護隊に軽食を取らせたいので30分程度になりますが良いですか?」

「ああ、気にしないでください。山本さんも運転手さんも遠慮なく」

「「ありがとうございます」」


 山本さんの問いかけに答えつつ運転手さんにも気遣えば、二人から朗らかな返事を貰えた。


「警護隊、軽食可です。30分で願います」


 山本さんの警護隊への連絡を聞いていると、車はスルスルと駐車場へと入って行く。

 駐車場の先には、見事にライトアップされた観覧車が見えてきた。



「よし、ここはこのぐらいですね」


 この淡路SAサービスエリアには、淡路島唯一のスタバがある。

 山本さんや細マッチョ、そして運転手さんがスタバに入って行く脇で、俺と彼女はスタバ恒例の撮影会を終らせた。


 彼女が満足したようなので、俺達も店内に入ると彼女が空腹を訴えてきた。


「私も少し食べようかな?」


 注文カウンターで彼女が呟く。

 バーチャんとの会話を思い出し、作り過ぎたらしい『いなり寿司』が実家で待っていることを彼女に伝える。


「由美子、『いなり寿司』が待ってるらしい」

「『いなり寿司』?」


「バーチャんが作り過ぎたらしいんだ(笑」

「クフフ。それなら我慢します(笑」


「ここからなら1時間ぐらいで実家だね。我慢できる?」

「大丈夫です。桂子さんの『いなり寿司』を楽しみに我慢しますね(笑」


「何か悪いね(笑」


 彼女が笑顔を見せてくれたので、飲み物だけを注文してテーブル席に着いた。

 全面ガラスの窓の向こうには、ライトアップされた観覧車が見える。


「あの観覧車、乗ってみたいですね」

「ああ言うの好きなの?」


「この淡路島に住んで、センパイとの子供が出来たら一緒に乗りに来るのかな?」


 ぶっ

 彼女の言葉に、思わず口に含んだコーヒーを吹き出しそうになってしまった。


「センパイはそういうの嫌いですか?」

「好きとか嫌いとかじゃなくて、今はちょっと考えられないかな?」


「センパイ、考えると言うか想像しましょう!」

「想像?」


「ほら、あの家族のように子供がいる家庭を考えてください」


 彼女の視線の先を見れば、親子4人連れらしき家族がいた。

 ご夫婦と中学生らしき娘さん、それに小学生らしき男の子の4人が観覧車を見上げていた。


「ねぇ、何か幸せそうでしょ?」

「ああ、家族4人だと大きめの車が必要だね」


 家族4人か⋯

 あの家族のように俺と彼女、そして子供が二人。

 おっとバーちゃんも加えるとなると、車は6人乗りを買う必要があるな。

 彼女の実家で運転したアルファードみたいな大きな車になるのか⋯


 彼女の言うとおりに想像してみると、彼女の言うとおりに少し楽しく幸せな気分になってきた。

 その楽しさというか幸せの源である彼女の手、テーブルに置かれた彼女の手に俺はそっと手を重ねる。


「あれ?」

「どうかしたの?」


 急に彼女が目をパチクリさせて俺を見てきた。

 右目を手で覆って、左目だけで俺を見てきた。

 かと思うと重ねた手を解き、今度は左手で左目を覆い、右目だけで俺を見てきた。


「何これぇ~」

「どうかしたの?」


「今、センパイから入ってくる感じがして見えたんです」

「はい??」


 彼女が何を言っているかを、俺は直ぐには理解できなかった。


「もう一度、触ってください」


 そう言って彼女がテーブルの上に手を置いた。


「ほら、センパイ。さっきみたいに触ってください」


 彼女の言葉に従って、彼女の手に俺の手を重ねる。

 う~ん。やはり彼女と手を触れ合うのは気持ちが良い。


「フフフ。やっぱりセンパイは金色です」


 彼女の言葉に驚き、彼女と目を合わせれば俺の大好きな笑顔を見せてくれる。

 やっぱり、彼女は可愛い。


 そう思っていると彼女が重ねた手を解き、今度はテーブルに残された俺の手の上にその手を重ねてきた。

 何をしてるんだ?

 そう思った途端に、俺の体の中から重ねた手に向かって『魔素』が移動しているのがわかった。


「ちょ、由美子、ちょっと待って!」

「クフフ(笑」


 俺は慌てて、移動する『魔素』に『止まれ』と意識する。

 すると重ねた手から吸い出されていた『魔素』が、ピタリと移動するのが止まった。


「あっ、センパイ!止めないでください」

「ちょ、ちょっと待って!」


 俺は慌てて重ねていた手を解き、彼女と接触しないように両手を後ろに回す。


「由美子、今、何をしたの?」

「センパイが『魔石』に見えてきました」


 そう言って口角を上げながら細めた目で俺を見つめ、両手をワシワシとさせながら彼女が俺に迫ってきた。

 その時の彼女は、まるで強大な猛獣が餌の小動物を襲う直前のような様子を見せてくる。


「待て、由美子。本当に待て」

「これで、センパイは私だけの『魔石』です、ケケケ」


 おい、俺の目を見つめて、舌舐りをするな。


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