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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月6日(木)☁️/☁️
267/279

18-19 香芝SA(サービスエリア)


 すぅ~すぅ~


 静かな車内の中、彼女の寝息を聞きながら俺はスマホを操作する。

 まずは隠岐の島を離れる際に、京子さんと吉江さんから問われた『伊勢講いせこう』と『お蔭参り(おかげまいり)』をWikipediaで調べてみる。


 俺はWikipediaの記事を読み込み、日本には古来より伊勢神宮を取り巻く幾多の文化が存在することを学んだ。

 こうした文化に『伊勢の門』の守人な方々は、色々な形で関わって来たのだろうとかと思いを馳せる。


 もう一つ、お土産を購入した店に掲げられていた『笑門』の注連縄しめなわも調べてみた。

 須佐之男命すさのおのみことの名が出て神話的な領域に行き着いた。

(ハハハ)

 思わず乾いた笑いが心の中を流れて行く。

 そう言えば大量のお土産を購入した『おかげ横丁』には『神話の館』があった。

 あの時は、手にしたお土産袋と待ち合わせ時間を考慮してパスしてしまった。

 淡路島の実家に戻ったら、今の俺の曖昧な『日本神話にほんしんわ』の知識を正す必要がありそうだなと心に刻む。


 静かな車内でそうして過ごしていると、俺も少し眠くなってきた。

 うつらうつらし始めた時に、急にスマホが震えた。

 スマホの画面に『バーチャん』と表示されている。


「はい」

「二郎か?」


「はい。あなたの孫の二郎です」

「今はどこじゃ?」


「車の中です(笑」

「そうか、二郎のジョークは笑えんのう」


「⋯(はいはい、俺も笑えません」

「由美子さんは一緒か?」


「隣で寝てます」

「なに!直ぐに寝顔を撮影して送るんじゃ!」


 ダメ。彼女の可愛い寝顔は俺の物です。


「ケケケ ジョークじゃ」

「バーチャん、今日の7時過ぎに着くと思う」


「そうかそうか、晩飯はどうする?」

「う~ん⋯」


「いなり寿司でええな?」


 『いなり寿司』と聞いて、また、やらかしたなと思わず笑いが出そうになった。


「うん、ありがとう」

「しばらく電話の電源を切るでな」


 バーチャんが意味不明な事を言い出した。


「へ?何のこと?何かあったの?」

「伊勢の連中や『国の奴ら』からの電話が煩いんじゃ」


「ああ⋯ごめん⋯」


 思わず俺は『ごめん』と口にしてしまった。

 だが俺はなにも悪いことしてない。


「7時過ぎじゃな風呂も準備しとくで。切るぞ」


プツ


 自分の言葉の意味を考える間もなく、バーチャんから通話を切られた。


「うぅ~⋯桂子お婆ちゃん?」

「ごめん。起こしちゃったね(笑」


 俺とバーチャんの通話に起こされた彼女が身支度を整え、ボタンを操作すると半透明の板が降りる。


「運転手さん山本さん、どこかで御手洗いに行けますか?」

「はい、すぐに寄せます」


 快く運転手さんが返事をすると、助手席の山本さんの首が持ち上がった。


「あっ、秦さん。御手洗いですね、運転手さん、お願いします」


 (ハハハ)

 山本さん。今、寝てたでしょ?

 そんな山本さんがスマホを取り出し通話を始めた。


「警護班、次のSAサービスエリアPAパーキングエリアで休憩です」


 山本さんがスマホを切ると運転手さんが次のSAサービスエリアを告げてきた。


「はい。次ですと⋯香芝SAかしばサービスエリアですね」



 彼女と共にSAサービスエリアのトイレで用を済ませに向かう。


 俺が先に済ませ、外に出る際に運転手さんや細マッチョとスレ違った。

 暫し外で彼女を待ちながら、SAサービスエリアの建物の中をみるとフードコートが目に入った。


 建物の中に入ってみると、奈良県の文字に目が行く。

 伊勢神宮の三重県から奈良県に入ったんだと理解していると、用を済ませた彼女に声を掛けられる。


「センパイ、飲み物買いませんか?」

「そうだね。俺は水で(笑」


 伊勢神宮に向かう際の飲み切れない甘さの飲料を思い出し、冗談交じりに彼女に念を押す。


「はいはい。自販機ですから安心してください(笑」


 そんな返事が返ってきた。

 俺の水と彼女のお茶を購入しながら、先ほどのバーチャんとの電話の話をする。


「バーチャんが電話が煩いらしいくて、電源を切ると言われたよ」

「えっ?どう言うことですか?」


「どうやら、色々なところから電話が来てるらしい」

「何ですか?それ?」


「それより、本土に来てから由美子は実家に連絡した?」

「あっ!」


 俺の言葉に反応して、彼女がスマホで電話を始めた。

 彼女が電話していると、山本さんが話し掛けてきた。


「門守さん、どうしました?」

「いや、ちょっと祖母にね⋯」


「桂子さんに?門を開けた報告ですか(笑」

「いや、色々と電話が入って煩いらしいんだ」


「えっ?ぁあ⋯ちょっと上司に連絡します!」


 山本さんが察したようだ。

 スマホを取り出し通話を始めた。

 通話しながら、細マッチョを手招きしている。

 細マッチョの両名が直ぐにやってきて、山本さんの指示でスマホを取り出しハンズフリーを耳に着けた。

 山本さんも同じ様にハンズフリーを取り出した。


「あれ?私を待ってました?(笑」


 そんな俺達を見つけたのか、運転手さんが冗談交じりに声を掛けて来る。


「いや、運転手さんの安全運転に皆で感謝していたところです(笑」

「ありがとうございます。先に車に戻ってます」


 山本さんや細マッチョの様子を見て、運転手さんが何かを察したらしく車に向かって行く。

 それを見ていると、彼女が話し掛けて来た。


「センパイ、全滅です⋯」

「門守さん、秦さん。一旦、車に戻れますか?」

「ああ、由美子、一旦、車に戻ろう」


 山本さんの提案に同意し、皆で車に戻ることにした。



「山本さん、念のために給油します」

「そうですね。『警護班も給油願います』」


 全員が車に乗り込み、シートベルトをしたところで運転手さんが給油を提案してきた。

 それを受けて山本さんが細マッチョの車への給油も指示する。


「シートベルトは大丈夫ですね。それでは出発します」

「門守さん秦さん。すいませんが区切らさせていただきます」


 運転手さんの出発の合図に合わせて、山本さんが半透明の板を操作してきた。


「センパイ、どうします?」

「どうするって?」


「しばらくは変なのが来そうですよ(笑」

「面倒臭そうだね(笑」


「私は心配してませんよ」

「??」


「だって、センパイが守ってくれるんですよね♥️」

「はいはい」


「センパイ、言い方!」


 アヒル口に怒る彼女の顔が可愛い。



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