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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月6日(木)☁️/☁️
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18-18 イタタた


 お土産の紙袋を両手に駐車場に戻ると、既に山本さんと細マッチョ2名、それに運転手さんの4人が待っていた。


「遅くなってすいません」

「いえ、時間通りです(笑」


 山本さんが笑顔で返事をしてくれる。

 細マッチョも運転手さんも笑顔だ。


 その笑顔に何かの含みを感じる。

 どうも俺と彼女の様子を笑っているような⋯


 両手が荷物で塞がっているのは俺だけではない。

 彼女も両手が塞がっているのだ。

 まるで『御上おのぼりさん』が、ここぞとばかりにお土産を買い込んでる姿に見えるのだろう。


「全てトランクで大丈夫そうですね。山本さん、そちらの車に移せますか?」

「そうですね、移しましょう」

「お手数をお掛けします」


 運転手さんと山本さんがやり取りし、細マッチョの車に視線をやる。


 運転手さんが黒塗りの車のトランクを開くと、俺と彼女のキャリーバッグ以外に、お土産用の紙袋が4個見えた。

 細マッチョが隣の乗用車の後部座席を開くと、そこにもお土産の紙袋が見えた。

 細マッチョが黒塗りの車のトランクからお土産の紙袋を全て移し、空いた場所に俺達の両手を塞いでいたお土産が収まる。


「つい、買っちゃいますよね(笑」

「フフフ」「「ハハハ」」「へへへ」


 彼女が皆に声を掛けると、乾いた笑いが皆から返ってくる。


 なるほど。

 両手にお土産のスタイルは、俺と彼女だけじゃなく、ここにいる全員が同じ様な姿だったのだ。


 チラリと運転手さんを見れば


「皆さん同じです」


 俺の思いを察したのか、そう述べて実に朗らかな笑顔を見せてくれた。


 少し心に余裕ができたので駐車場を見回すと、黒塗りの車は俺達の1台だけだった。


「山本さん、先代の方々は?」

「皆さん、先に帰りました」


 親衛隊の御三方は『伊勢の門』の守人代表の『先代』だよな。

 地元である伊勢でも、早々に退散したのか?

 開いたという『伊勢の門』が気になって帰ったのか?

 それとも山本さんからの事情聴取=状況聴取から早々に逃げたのか?

 今となってはわからないな⋯


「山本さん、警護の方々も淡路島まで行くんですね?」


 彼女が山本さんへ問いかける。


「はい、彼らも淡路島まで同行します」


 彼女が少し安心した顔を俺に見せる。

 たぶんだが、彼女は心付けを渡すタイミングを知りたいのだろう。


「では、出発しましょう」


 俺と彼女が乗り込むのを見届けた山本さんは、自身が乗り込む前に片手を上げて細マッチョに合図をする。

 合図と共に細マッチョ二人が乗用車に乗り込んだ。

 山本さんが助手席に乗り込むと運転手さんが声を掛けてくる。


「シートベルトの着用をお願いします。それでは淡路島まで4時間30分の予定です。出発します」


 そろそろと黒塗りの車が動き出すと、それに合わせて細マッチョの車も動き出した。

 細マッチョの車が先に進み、俺達の乗る黒塗りの車が後に着く形での走行となった。


 窓から外を眺めれば、伊勢神宮の象徴とも言える宇治橋鳥居が見える。

 いよいよ伊勢ともお別れだ。

 次に来るのは彼女と結婚式を挙げ、籍を入れた後だろう⋯

 などと考えていると、山本さんが話し掛けてきた。


「門守さん秦さん、おかげ様で皆が喜んでおります」

「それは何よりです」


 皆が何に喜んでいるかは不明だが、喜んでいるなら由としよう。


「先代の方々も同行できて、貴重な体験が出来たと感謝していました」

「ハハハ⋯そうですか」


 貴重な体験?

 見習い女神メイドに再会出来たことか?

 天使アマツカさんに会えたことか?

 山本さんから状況聴取を受けたことか?


「そう言えば『伊勢の門』のほうにいらした方々はどうですか?」

「彼らは色々のようです。喜ぶ者もいれば肩を落とす者もいたそうです」


 待てよ。

 『伊勢の門』が開いたとは聞いたが、開いたことで何が起きたんだ?

 あの神様サンダースさんや若奥様(女神)さんが顔を出したりしたのか?

 それに開いた『伊勢の門』はどうなったんだ?

 誰かが『門』を閉じたのか?


「山本さん。その後、『伊勢の門』はどうなりました?」

「今は閉じているそうです。『淡路陵の門』とは違って、我々は『伊勢の門』には近寄れませんので事情聴取の最中だそうです」


 なるほど⋯

 『国の人』は『伊勢の門』に近付けないのか、むしろ『淡路陵の門』の方が近いようだな。


「山本さん、すいません。ちょっと閉めますね」


 彼女がそう言うと共に、半透明の板が上がり始めた。


「すいません。気が付かなくて⋯」


 山本さんの申し訳なさそうな返事を最後に後部座席は静かになった。


 彼女が俺に手を重ねる。


イタタた


 由美子さん。痛いから俺の手を抓る(つねる)のは止めて!


「センパイ、延々と山本さんを質問責めにするんですか?」

「いや、そうじゃなくて⋯」


「自分がやられて嫌なことは、他の人にしちゃダメです(メッ」

「は、はい⋯」


「それともぉ~」

「山本さんに門を開いた『ご褒美』の催促ですかぁ~」


「いや、違う違う」

「私からの『ご褒美』が先です!順番が守れない子はお仕置きです!」


イタタた


 お願いだから俺の手を抓る(つねる)のは止めて!


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