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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月6日(木)☁️/☁️
265/279

18-17 伊勢のお土産


 昼食を済ませスタバ前の撮影会も済ませた。


 そんな俺と彼女はスタバの2階に設けられた席に座り、お茶を楽しみながら、この後の予定を話し合う。

 決まってると言えるのは、5月10日(月)に東京へ戻ること。


 彼女との結婚を進める話になると、なかなか具体的には進みそうもない。

・結納をどうするか?

・結婚式をどうするか?

・新居をどうするか?


 これに加えて俺と彼女で淡路島に住む話になると、さらに話が進まなくなる。

・淡路島にいつ戻るか?

・会社をいつやめるか?

・その後の生活は?


「センパイ、考え出すとキリがないです」

「そうだね、由美子の言うとおりだ。ここで考えても話し合っても結論は出ないな」


「まずは桂子お婆ちゃんへのお土産を買いましょう!」

「お土産?」


「今度は伊勢のお土産ですよ、何にします?」

「隠岐の島のネットショップで買ったのが届くのは、いつ頃だろう?」


「早くて土曜日だと思います」

「遅いと日曜か来週か⋯お酒とおつまみが、今週中に届かない可能性があるな」


「そうでしたね。けど、今日は伊勢のお土産で、来週は隠岐の島のお土産と考えましょう」

「そうだね。お酒とおつまみ、後は⋯お茶かな?」


「じゃあ、お酒とおつまみとお茶ですね。センパイ、行きましょう!」


 彼女の号令でスタバを出て、彼女の案内に従って石畳の通りを少し歩くと、面白い看板に出くわした。


『ひもの塾』

 どうやら干物を扱う店のようだ。

 通りから見ても、幾多の干物が見える。


「ここは帰り道に寄りましょう」


 彼女の言葉で店先から見える範囲だけの立ち寄りとなった。


 だが店の軒先八分ほどに渡る注連縄しめなわに、『笑門』と墨書きされた札を見つけた。

 俺が今まで追いかけてきた『淡路陵の門』『米軍の門』『隠岐の島の門』『伊勢の門』に続く新たな『門』なのか?

 新たな『門』の登場なのか?


 周囲の店を見ると、同じ様な札の着いた注連縄しめなわが見える。

 隣の店も同じだ。

 改めて見れば、この通りに面した全ての店に『笑門』の札が着いた注連縄しめなわが掲げられているようだ。

 師走から新年を向かえる頃ならば、店の軒先に注連縄しめなわが付けられているも理解できる。


 今は既に新緑萌える5月。

 こんな時期まで、注連縄しめなわを掲げ続けるのは意味があるのだろうか?

 もしかして『笑門』の注連縄しめなわを掲げている店の全てが、『笑門』の守人だとしたら⋯


 そんなことを考えていると、目の前に積み上げられた酒樽が見えてきた。


「よし!酒家さんも確認!」


 そう告げる彼女の手にはスマホが握られていた。


「ここも後です。干物屋さん、酒屋さん、後はお茶屋さんですね」

「もしかして、里依紗姉さんから⋯事前聴取済みとか?」


「当然です!姉さんは伊勢の事前リサーチでは大事な情報源ですよ」


 そう答える彼女の意気込みに、スマホ片手に質問を繰り返される里依紗さんの姿が思い浮かぶ。


「お酒とおつまみ、それにお茶まで調査済みとはスゴいね(笑」

「クフフ。お婆ちゃんにお母さん、それに姉さんから桂子お婆ちゃんの好きそうなものを聞いて、そのお店を紹介して貰っただけです」


 お婆ちゃん=京子さん、お母さん=吉江さん、この二人がバーチャんの好みを知っているのは少しだが理解できる。

 姉さん=里依紗さんが、何でバーチャんの好みを知ってるの?


「『赤福』発見!」


 彼女が絡めた腕を離して俺の前に出る。

 彼女の向かおうとする先を見れば、大きな金文字で『福赤』と書かれた看板が見えた。


 福赤?

 ああ、古くからの店だから逆から読むんだな、『創業宝永四年 赤福』と読むのが正しいんだな。

 宝永四年って西暦何年だ?


「これもお土産の候補だよね?」

「センパイ、当然です!」


 そう言いながらも素通りし先に行こうとする彼女を追いかける時、俺の視界に『まねき猫』が見えた気がした。


「おかしいなあ、お茶屋さんが⋯」

「そこじゃないの?詰め放題とか出てるよ」


「そこです!」


 うっかり通り過ぎたらしい彼女が戻ってきて、俺の左腕に手を絡ませる。


「これで全て揃いました(ニッコリ」

「そうだ!追加して良い?」


「えっ?追加ですか?」

「漬物が欲しいかな⋯」


「漬物ですね⋯えぇ~と⋯はい、大丈夫です。まずはお茶を買いましょう」


 俺の漬物の発案に承諾が得られ、伊勢のお土産購入が始まった。



 俺の両手には、お土産の紙袋がぶら下がっている。

 買い物の時に発揮される彼女の能力で、1店舗毎の滞在時間は短いのだが、1店舗毎に紙袋が増える。

 お土産の紙袋が4つになった時点で、彼女が器用に入れ直してくれたので2つにはなったのだが⋯重さは変わらない。


 伊勢茶、赤福、伊勢漬け、伊勢うどん、伊勢蒲鉾、伊勢醤油⋯


 正直に言って、俺は漬物を提案したのを少し後悔しています。


 漬物を買うために向かったのが、『おかげ横丁』と呼ばれる観光客相手のお店が連なる場所だったのだ。

 視界の隅に見えた『まねき猫』は『おかげ横丁』への入り口で、そこに足を踏み入れたことで、お土産が一気に重くなった。


 まだお酒も買っていないのに、干物も選んでいないのに、俺の両手はズッシリとしたお土産の詰まった紙袋で塞がっている。


「センパイ、後はお酒と干物です」

「ごめん、干物はパス」


「えぇ~ 桂子お婆ちゃんに怒られます~」

「その分お酒を買おう!」


「うしっ!了解です。最後にお酒ですね」

「はい、それで最後にしてください⋯」


 その後、俺は再び自分の言葉を後悔した。

 干物よりも酒の方が重かったのだ。


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