表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月6日(木)☁️/☁️
263/279

18-15 状況聴取


 目の前では山本さんが立ったままで、歓喜の声で『伊勢の門』が開いた話をしている。

 熱く語る山本さんの報告に、親衛隊の御三方はお約束のように扇子パフォーマンスで合いの手を入れている。


 山本さんは一通りの報告を終え、嬉しそうな顔を俺に向けた。

 俺と目があった途端に『ハッ』とした顔になった。


「すいません!お茶も手配してなくて」


 そう告げたかと思うと内線電話に飛び付き、応接室へお茶の手配を頼んでくれた。

 その後、少し恥ずかしげにソファーに座り、背筋を伸ばして俺と彼女に頭を下げた。


「門守さん、秦さん。本日はお疲れ様でした。お二人の伊勢詣いせもうでに心から感謝します」

「はい、こちらこそ手厚い歓待に感謝します。無事に婚約の報告が出来ました。山本さん、ありがとうございました」


 山本さんの言葉に、隣に座る彼女から感謝を示す言葉が返される。

 彼女の言葉に続けて俺からも感謝の言葉を伝える。


「山本さん、幾多のお手数をお掛けしました。何事もなく無事にお詣りが出来ましたことに深くお礼を申し上げます。ありがとうございました」

「いえいえ、至らぬ対応も多々ありました。お恥ずかしい限りです」


 社交辞令のような返事が貰えたことで、幾分、山本さんが冷静になっているのを感じた。

 この状況なら、この後の予定を詰めても大丈夫そうだと考えを切り替える。


「この後はどうされますか?山本さんとしては⋯」

「門守さん、待ってください」


 チラリと山本さんが親衛隊の御三方に目をやり、俺の話を止めてきた。


「この後の予定につきましては、お二人と私で相談させてください」


 そう述べてから山本さんは親衛隊の御三方に向き直った。


「金ちゃん、源ちゃん、マー君。この後、別の担当からお話があります。お時間は⋯『あります』よね?」


 その言葉に、親衛隊な御三方の扇子パフォーマンスは出なかった。

 出てきたのは御三方揃っての驚愕の表情だけだった。


 山本さんがハンズフリーに手を掛ける。


「警護隊、参集殿の応接室へ。私に代わり先代3名からの状況聴取を願います」


 正宮で聞こえた声より少し押さえた感じだが、明らかに部隊長として威厳を感じさせる声だ。

 山本さんは告げ終えると、親衛隊の御三方に目を細めた笑顔を見せた。


「ええ、御三方からは同意を得ています」


 その声に親衛隊御三方から落胆の表情が見てとれた。

 思わず俺は笑いそうになってしまった。


「さて、門守さんと秦さん。お腹が空きませんか?」

「センパイ、お腹が空きました!」


 山本さんが声を切り替え、いつもの感じで俺達に話し掛けると、彼女が元気に答えた。

 目の前では親衛隊の御三方がコソコソ話を始める。


(どうする?愛ちゃんが怖いぞ)

(ワシらは何を聞かれるんじゃ?)

(何とか逃げ出せんか?)


「聞こえてますよ」


 そう告げる山本さんは再び目を細めた笑顔を御三方に向ける。


「そもそも、門守さんと秦さんのお伊勢詣りに、皆さんの同行を認めた理由を思い出してくださいね(ニッコリ」

「「「⋯⋯⋯はい⋯」」」


 もう親衛隊な御三方から、扇子パフォーマンスが出ることはなかった。


コンコン


 応接室のドアをノックする音が聞こえる。

 山本さんが席を立ちドアを開けると、細マッチョ2名とお茶を手にした職員らしき女性が見えた。


「ありがとうございます」


 そう言って山本さんが女性職員を先に迎え入れ、一旦、応接室の外に出て細マッチョと何かを話している。

 女性職員がお茶を出し終わり退室すると、入れ替わりに山本さんと細マッチョ2名が入ってきた。


 場の雰囲気を感じたのか彼女が俺をつついてくる。


「門守さん秦さん。お茶も出さずにすいませんでした。行きましょう」


 有無を言わさぬ山本さんの言葉に、俺も彼女も慌てて席を立つ。


「金次さん、源三さん、正美さん。今日はお疲れ様でした」

「今日はご教授ありがとうございました」


 親衛隊の御三方に礼を述べ、俺と彼女と山本さんの3人は応接室を後にした。



「もうすぐ12時ですね。では、2時半の待ち合わせで良いですか?」

「ええ、そうしましょう」


 階下に降り、運転手さんを交えてこの後の予定を話し合う。

 運転手さんと山本さんは、今日の午後に淡路島まで俺と彼女を送り届ける予定だと言う。


 淡路島の実家まで送り届けるとの手配に驚いたが、俺としては格段に断る理由が直ぐに見つからない。

 彼女が思案顔を一瞬見せたが、最終的に遠慮や断りの言葉は出なかった。


 淡路島の実家まで、運転手さんの予測としては4時間程度、渋滞を考えても5時間との話が出た。

 今の時間と昼食時間を考えて、2時半の待ち合わせとなった。


「門守さん、手荷物がありますか?」


 そう言った山本さんは、俺の手にする御札を注視した。


「そうですね。私は一旦車に戻りますので、お預かりしましょう」


 山本さんの言葉に気が付いた運転手さんから声が掛かる。


「では、先程の駐車場に2時半の待ち合わせで」


 運転手さんがそう告げて、俺から手荷物を受けとり去って行く。


「では、ここで一旦解散して、駐車場に2時半集合でお願いします。何かあれば電話でご連絡ください」


 山本さんも、あっさりと告げて2階へと戻って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ