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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月6日(木)☁️/☁️
255/279

18-7 親衛隊


 山本さんを先頭に参集殿の2階に上がると細マッチョ2号が廊下に立って待っていた。


「彼が案内しますので、部屋でお待ちください」


 そう述べた山本さんは、案内を細マッチョ2号に引き継ぐと小走りに階下に戻って行った。

 細マッチョ2号に案内された部屋は応接室で、6人掛の応接セットが置かれていた。


 彼女の『スッゴク楽しい話が聞けそうですよ♪』の言葉に警戒を解き、俺と彼女は並んで応接に座る。


「由美子、何か聞いてる?」

「聞いてます。詳しくは山本さんから(ニヤニヤ」


 彼女の笑顔を眺めながら山本さんの到着を待っていると、ドアがノックされ細マッチョ2号が顔を見せた。


「皆さんが到着しました」


 その声に続いて『失礼します』と口にしながら山本さんが入ってきた。

 山本さんに続いて『先代』と呼ばれた紋付き袴の男性が入ってきた。

 一瞬、警戒をしたが、続けてもうお一方の紋付き袴の男性が入ってきて驚かされる。

 更には、もう一名の紋付き袴の男性が入ってきて、合計3名の紋付き袴な男性が揃った。

 俺は既に警戒よりも驚きが優先してしまった。


 全員が揃ったのか細マッチョが応接室のドアを閉めた。

 すると『先代』と呼ばれた紋付き袴の男性が口を開いた。


「アイちゃんは奥に座りんしゃい」

「ダメです。キンちゃんが奥です、マー君とゲンちゃんはそっちです」


『アイちゃん』?

『キンちゃん』?

『マー君』?

『ゲンちゃん』?


 その言葉に驚き、隣に座る彼女を見れば「ニヤニヤ」と口角を上げている。


 結果的に山本さんの勧めのとおりに皆が座り、俺の左側には『先代』=キンちゃんだ。

 俺と彼女の向かい側に『ゲンちゃん』と『マー君』が並んで座り、山本さんは彼女の右側の末席に座った。


    ┏━━━━━┓

    ┃キンちゃん┃

┏━━━╋━━━━━╋━━━━━┓

┃俺  ┃     ┃ゲンちゃん┃

┃彼女 ┃     ┃マー君  ┃

┗━━━╋━━━━━╋━━━━━┛

    ┃山本さん ┃

    ┗━━━━━┛


 皆が座ったところで、誰からともなく全員で会釈をする。

 見るからに、紋付き袴の男性陣の全てがバーチャんと同年代だろうと判断し、年配者への敬意を表して俺から口火を切る。


「先ほどは失礼しました」

「かまわんかまわん、アイちゃんから聞いたぞ。大変じゃのう」


 まずは『先代』=『キンちゃん』へ先ほどの同行許可に際しての無礼なやり取りを詫びると、また『アイちゃん』の言葉が出てきた。


「山本さんと面識があるようですが?」

「キンジ、話しとらんのか?」


 俺からの問い掛けに、向かいに座る『ゲンちゃん』が追い討ちをかける。


「すまんすまん。奴の使いもおったし全員が揃ってからと思って言うとらん。マサミから話してくれんか?」

「わかった、ワシから話そう」


 そう言って『マー君』いや『マサミ』と呼ばれた老人が扇子を取り出した。

 すると同じ様にキンちゃんとゲンちゃんも扇子を取り出した。


「まずはこれじゃな」


 その言葉を合図に


バッ


 と、音をさせて3人が同時に扇子を開くと、そこにはこんな文字が書かれていた。


『愛ちゃんLOVE』


 思わず山本さんを見ると、笑顔のようだが口元と目がひきつっていた。


(プププ)

 由美子さん、笑い声が漏れてますよ。


「ワシがアイちゃん親衛隊隊長のマサミじゃ。『正』しく『美』と書く」

「おう、ワシがアイちゃん親衛隊代表のキンジじゃ。『金』に『次』じゃ」

「ワシは親衛隊筆頭のゲンゾウじゃ。『源』に『三』と書く」


 御三方、『隊長』『代表』『筆頭』の違いを教えてください。


「山本さん、これって⋯」

「3月まで伊勢に居たときに3人にお世話になったんです」

「「「おぉ~ありがたい」」」


 御三方、山本さんの言葉に喜ばないで。


「それが⋯淡路陵に異動になって⋯」

「そうじゃ!二郎君、言ってくれんか?」

「おお、ワシからも頼む!」

「そうじゃアイちゃんを伊勢に戻して欲しいんじゃ」


 お前ら、ちょっと待て。

 俺には何が何だかわからないぞ。


 それに、今、俺のことを『二郎君』と呼んだぞ?!



 その後、山本さんから三人の説明を受けた。

 御三方は、全員が以前は『伊勢の門』の『守人代表』を勤めていたそうだ。

 『伊勢の門』では当代がおらず、守人の代表者が複数名いると言う。

 目の前の御三方は、進一さんが『伊勢の門』を開けたことを機会に、後任に代表を譲り引退したそうだ。


 そこまで説明が進むと、御三方が頷きながら山本さんを誉める言葉が続く。


「うんうん。愛ちゃんはワシらのことをよう理解しとる」

「愛ちゃんの上司とは雲泥の差じゃ」

「さっきの奴も使えんから追い返したぞ」


「「おお、よくやった!」」


 なんか老人が孫を可愛がる感じで山本さん=『愛ちゃん』を称える。

 まあ、山本さんが御三方から可愛がられているのが良くわかった。


 それよりも進一さんの名が出たのが気になる。

 チラリと隣に座る彼女を見れば、胸を張り背筋を伸ばし、かなり自慢気だ。

 その様子に俺は安心して、彼女が話しに出た進一さんの妹だと知っているかを聞いてみる。


「では、こちらの⋯」

「知っとるぞ、進一さんの妹さんで由美子さんじゃろ?」

「「うんうん」」


 源三さんが答え、正美さんと金次さんが頷く。


「吉江さんはお元気か?」

「保江さんはお元気か?」

「美江さんはお元気か?」

「ええ、みんな元気ですよ」


 御三方の怒涛の質問に、彼女が朗らかに答える。


「「「京子さんは!」」」


 おいおい、三人でハモってますよ。


ウゥン


 山本さんが咳払いをすると、それまで秦家の女性陣の名を口にしていた御三方が慌てだした。


「いや、アイちゃん、違うんじゃ」

「アイちゃん、ワシはアイちゃんだけじゃ」

「ワシもじゃ、アイちゃん一筋じゃ」


 3人の言葉を聞いた山本さんが諭すように告げる。


「話を戻しましょう」

「「「はい」」」


 山本さんの言葉に、御三方が大人しく返事をした。


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