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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月6日(木)☁️/☁️
250/279

18-2 元上司


 中居さんが準備してくれた朝食を食べ終え、身支度を整えて出発の準備をする。


 俺は店長から譲り受けたスーツとワイシャツに彼女からプレゼントされたネクタイ。

 もちろんネクタイは彼女が結んでくれた。

 大阪のアスカラ・セグレ社を訪問した時と同じ出で立ちだ。

 彼女も俺と同じ様に、アスカラ・セグレ社を訪問した時と同じ装いとなった。


 違いがあるとすれば、スーツに皺がないことだ。

 宿で借りたズボンプレッサーとスチームアイロンを使って、彼女が見事に皺の無い仕上がりにしてくれたのだ。


 そう言えば、俺と彼女の出で立ちを『新婚』のようだとバーチャんは言っていた。

 俺からすれば、仕事で彼女と一緒にお客様訪問をするような感じなのだが⋯

 目の前にあるキャリーバッグを二人で引いていたら『新婚旅行』に間違われるかも知れないな(笑


 そんなことを考えていたら、いつもの笑顔で彼女が声をかけてきた。


「準備できました。忘れ物も無しです」

「少し早いけど、行こうか」


(ピンポーン)


 いざ出発と思った時に玄関の呼び鈴の音がする。


「中居さんが来たのかな?俺が出るよ」


 そう告げて玄関に行くと、少し息を荒げた山本さんが立っていた。


「あれ?山本さん?おはようございます」

「はぁはぁ⋯門守さん、おはようございます」


「そろそろ行こうと思ってました」

「すいません。出発を30分⋯1時間ずらしてもらえますか?」


 何とか息を静めた山本さんが変なお願いをしてきた。


「私どもは構いませんが、何かあったのですか?」

「実は⋯」


 そこまで述べた山本さんが、誰も居ない後を見て、さらに周囲を見渡す。

 その様子に俺は山本さんに声をかける。


「中で話した方が良さそうですね」

「あ、ありがとうございます」


 山本さんを連れてリビングルームに行くと、心配そうに彼女が声をかける。


「山本さん、おはようございます。何かあったんですか?」

「由美子、座って詳しい話を聞こう」


 俺は全員を座らせ、まずは山本さんに何が起きているのか話して貰うことにした。


「実は30分ほど前に、以前の上司が来て門守さんと秦さんにご挨拶がしたい、それと伊勢神宮に同行させて欲しいと言ってきたんです」

「「はあ?」」


 俺も彼女も何が起きているかが理解できなかった。


「恥ずかしい話ですが、その⋯暴走することの多い上司でして⋯」


 山本さんの話し方から、山本さんはその元上司と折り合いが悪そうな感じを受ける。

 加えて俺は、昨日の面会を希望した来客を思い出した。


「宿の御主人や女将さんにご迷惑は?」

「それがさらに困ったことに、元上司が御主人の遠戚な方だそうで平謝りされてしまって⋯」


「それはある意味、宿の御主人や女将さんも困ってるでしょう」

「ええ、御主人や女将さんからも謝られてしまい⋯どうしたものかと上司に相談して、折り返しの連絡を待っているのです」


 親戚や遠戚から頼まれたら、宿の御主人や女将さんも断り辛いだろう。

 それもあって山本さんに相談して、山本さんは眼鏡さんに知らせたのか。


「今は御主人と女将さん了承のもと、一旦、宿の駐車場まで下がって貰えたのですが⋯」

「それで、私や彼女と話をしたいと言うこと⋯伊勢へのお詣りに同行したいと言うことなんですね?」


「はい。門守さんと秦さんの考えも確認したく、まずは出発時間の調整を願いに来ました」

「う~ん⋯」


「その元上司さんは、今はどうされてるんですか?」

「警護部隊の2名が駐車場で見張っております」


 警護部隊⋯あの細マッチョなスーツを着た二人のことだろう。


 そこまでの話を聞いて、俺の頭を変な想像が横切った。

 もしかして、この宿の御主人と女将さんは『伊勢の門』の守人、もしくは守人の関係者じゃないだろうか?

 それと山本さんの以前の上司と言う方も、もしかしたら『伊勢の門』の守人もしくは、その関係者じゃないだろうか?


 昨日の面会希望の来客に、俺と彼女が泊まる宿が漏れたというのは『伊勢の門』の守人の一部の方々が情報交換をしていて⋯


「センパイ、面倒臭そうですね」


 俺の変な想像を止めるように彼女が話しかけてきた。


「ああ、面倒臭い。一緒にお詣りに行って話しかけられても、何を話せばよいのか⋯」

「センパイ!清濁併せ呑むです!」


「はあ?」

「良いことも悪いことも受け入れましょう」


「まあ、そうだな。俺と由美子は結婚の報告に行くだけだしな」


「「えっ?」」


 山本さんと彼女が一緒に驚いた。


「センパイ『開ける』んじゃないんですか!」

「門守さん『開ける』ために来たんじゃないんですか?!」


 彼女と山本さんが俺に迫るように聞いてくる。


「待て待て」

「センパイ、さっきのやる気と同じです!お詣りしてバーンと開けて本物だと証明しましょう!」

「そうです門守さん、バーンと行かなくても少しでいいんで開けてください!」


「ちょっと二人とも待って⋯」

「はぁ~ん、わかりました。センパイはご褒美が欲しいんですね。センパイが兄さんみたいに門を開けたら、ご褒美を上げます」


「「えっ?」」

「私を好きにして良いですよ」


 由美子さん。

 どうしてクネクネするの?


「わ、わかりました。私も好きにしていいです⋯」


 山本さん。

 その大きな胸をプルンプルンさせて、持ち上げる仕草をするな!


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