2-14 広島原爆
「二郎や。会社の危機とか聞こえたが、続けてワシの話が聞けるのか?」
「うん。大丈夫。大丈夫だと思う。」
「ならば続けるぞ。」
そう言ってバーチャんは湯呑みに新しく茶を注いでくれた。
「バーチャんは淡路陵の門から…」
「そうじゃ。お爺さんは米軍の門から来たが、ワシは淡路陵の門から来たんじゃ。」
「待って。お爺ちゃんは核実験で門が開いて…」
「ワシは広島の原爆じゃ。」
俺はバーチャんの言葉に固まってしまった。
日本人にとって広島原爆と長崎原爆は、それなりに意味のあるものだ。
中学の修学旅行で広島の原爆ドームは見学した。平和記念資料館も回った。
その原爆とバーチャんに関わりがあると知らされるのは驚きしかなかった。
「広島の原爆で淡路陵の門が開いて、バーチャんが出てきたの?!」
「そうじゃ。偶然開いたんだろう。」
「バーチャんの話だと、米軍の門は意図的に開いたんだよね?」
「お爺さんの米軍の門は核実験で開いたが、淡路陵の門が広島原爆で開いたのは遇然じゃろう。だが、ワシもお爺さんも向こうの世界では実験だったんじゃ。」
再び俺は固まってしまった。
実験?
なんの実験だ?
向こうの世界での実験?
「ワシもお爺さんも、向こうの世界では魔王の国の人間奴隷だったんじゃ。」
「魔王の国の人間奴隷??」
向こうの世界には『魔王』様がいるの?
しかも『人間奴隷』って何だよ?
「魔王の国で魔法の実験がされたんじゃ。その時の実験材料だったのがワシとお爺さんじゃ。同じ奴隷だったからのう。」
こんどは『魔法』ですか?
またしても自分の頭が混乱し始めた。
まてよ。『同じ奴隷だった』?
「バーチャんとお爺ちゃんは同じ奴隷だった。」
「おう。人間奴隷じゃった。」
「同じ?」
「おう。お爺さんもワシも同じ奴隷じゃ。」
「同じ奴隷だった?」
「そうじゃ。二人とも同じ大魔導師様に飼われた身じゃ。」
「その頃からお知り合いで?」
「まぁ、こちらで言うところの幼馴染みかのう。同じ奴隷だったしのう。」
いやいや。
そんなところを気にしてどうする。
バーチャんとお爺ちゃんが同じ奴隷で幼馴染みとか。
むしろ魔法の実験とか、魔王の国の話の方が大切なのでは?
まてまて。
バーチャんは実験とか言ってたけど…
「米軍の門だけど、最初は魔物がでてきたんでしょ?」
「さっきも言ったが最初は剣とか鎧じゃ。」
「剣と鎧?」
「そうじゃ。剣と鎧じゃ。ワシも大魔導師様が魔法を使うのを見とったから知っとる。」
「次に米軍の門から出てきたのが…」
「魔物じゃ。それも見とった。」
「次がお爺ちゃんで…」
「これは見とらん。」
「そしてバーチャん…」
「そうじゃ。」
『剣と鎧』などの無機質で始まり
『魔物』と呼ばれる生物?
『お爺ちゃん』そして人間
この順番。
無機質なもので始まり、有機的と思われる魔物、そして最後に人間。
…これ。
明らかに大魔導師さん実験してる!