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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月20日(火)☁️/☀️
24/279

2-13 会社の危機


「ここまでの話だと、お爺ちゃんは幼い頃に米軍の門で他の世界から現代に来たってことであってる?」

「そうじゃ。それで正しいぞえ。そして次にワシの話じゃ。ワシは…」


「ちょっと待って。」


 バーチャんが、お爺ちゃんの次に自分の話をしようとした時にスマホが震えた。

 彼女からのLINEが入ったのだ。


「電話して良いですか?」19:37

「今なら大丈夫」19:40


 そう返信すると、直ぐにスマホに彼女の番号で電話が入った。


「ごめんバーチャん。ちょっと電話させて。」

「ああ、良かろう。茶でも入れ直してくる。」


 バーチャんの話を一旦止めて、彼女と電話で話すことにした。

 お爺ちゃんの話を、自分なりに整理するためにも少し間をおきたかった。

 魔物とか転移とかを受け止めきれないままで、続けてバーチャんの話を聞けるわけがない。


 バーチャんが台所に行く後ろ姿を見ながら電話に出ると、


「センパイ!大変です!」

「まだ会社か?今日も終電か?」


「いえ、もう会社は出ました。それより大変なんです。」

「おいおい慌てるな。ゆっくり話せ。」


 彼女はかなり慌てているようだ。

 続いて聞こえてきたのは


「会社が危ないんです。」


 な、なんの話だ?会社が危ないって?


「その話、周囲に誰もいないよな?」

「あ!」


 彼女の声の後ろから、少しだが他の人々の声が聞こえた。

 『会社が危ない』なんて、他人に聞かせる話ではないだろう。

 そんな話を他人に聞かれるのは、社会人として問題がある。

 そう注意する意味でも周囲に気をつけて欲しかった。


「……… ここなら大丈夫です。」

「周囲に誰もいないよな?」



「はい。で、会社の危機ですが…」


 彼女の話を要約すると、経理と人事の同期から聞いたそうだが、決算の結果が思わしくないそうだ。

 その事は、俺は予想していたことだった。

 社内報を見ていても、去年の秋頃から月次売り上げが前年比で毎月下がっていたからだ。

 4月下旬に出される決算短信では、悲惨な数字になるだろうと予想していたのだ。


「決算が悪かったんだろ?」

「それだけじゃないんです。」


「じゃぁ、他に何かあるのか?」

「売却の話があるそうです。」


 その言葉には驚きしかなかった。


「どこに売却されるんだ?」

「まだハッキリとは聞けてませんが外資系だそうです。」


「その話って本当なのか?」

「同期の話だと株主総会で決まるとか?」


 俺と彼女が勤める会社は3月末決算だ。


 4月下旬には通期決算短信が出される。

 株主総会は例年だと6月第三木曜日。

 今から2ヶ月後ということは、1ヶ月以内に会社としての方針が出される可能性が高い。


「その話は課の皆は知ってるのか?」

「それなんですけど午後に課長が部長に呼ばれて、青い顔で帰ってきて早退しちゃったんです。」


「なんだそれ?」

「課長は課のみんなに何も言わずに早退して…」


 あいつの話はどうでもいい。

 けれども話の様子からすると、課長職までは話が降りてそうだ。


「課の皆は知らないんだな?」

「まだ知らないと思うけど…」


 う~ん。どうしよう。


 彼女は会社の危機と言うが、外資に買われるのも悪くないかもしれない。

 ここで慌てても俺には何も出来ない。

 せめて課の皆が、彼女のように慌てないように諭すことしか出来ないだろう。


「たぶん来週には社内で話題に出ると思うが、とにかく慌てない方がいいと思う。今の俺たちでは何も出来ない。会社からの話をきちんと聞いてから考えよう。」

「センパイと話せて少し安心できました。変な電話ですいませんでした。もう慌てません。」


「切るぞ。今日は早めに帰れるんだ。ゆっくり寝ろよ。」

「はい。おやすみなさい。」


 こうして彼女との電話を終えたが、俺には気になる事がある。


 課長が部長に呼ばれて青い顔で帰って来たそうだが、その理由がわからない事だ。

 会社が買収される話で、なぜ課長の顔が青くなるんだ?


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