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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月5日(水)☀️/☁️
239/279

17-10 Yamamoto


 飛行機は、何事もなく無事に大阪の伊丹空港に着いた。


 現在、俺と彼女は預けたキャリーバッグが出てくるのを待っております。


 同乗した団体客さんの荷物らしきものが出てきて、各々の持ち主の手に渡った後に、俺と彼女のキャリーバッグが出てきた。

 互いに自分のキャリーバッグをドナドナしながら到着出口へと向かう。


「センパイ、眼鏡さんが迎えの話をしてましたよね?」

「ああ、言ってたね。来てるのかな?」


 彼女と到着出口を出て、空いているベンチを見つけて並んで座る。

 迎えにくる予定の『ヤマモト』さんから着信があるかと、スマホを見るが着信は無かった。


「眼鏡さんに電話してみるか⋯」

「センパイ、お迎えの人って女性ですか?」


「いや、わからない。どうかしたの?」

「さっきから、こっちを気にしている女性がいるんです」


 彼女の目線の先を見れば、いかにもな感じのリクルートスーツを着た女子大生にも見える女性がいた。

 到着出口から出て行く人々を、一人一人確認しているような感じだ。


 どうやら俺と彼女の視線に気づいたのか、何かを言いたげにこちらを見る。

 こちらを見るのだが、俺と目線が合ったかと思うと顔を背けた。


「由美子の言うとおりに、あの人かもしれないね」

「どうします?声をかけます?」


 彼女の言うとおりに、こちらから声をかけても良いのだが⋯


「ちょっと困ったな」

「何がですか?」


「眼鏡さんと話して、お迎えの方の名前は聞いたんだが⋯」

「あの女性じゃないんですか?」


「そうだと思うんだが、確認する方法がないんだ」

「えっ?迎えに来た方かどうか聞けば済むと思うんですけど?」


「由美子は、大阪のエリックさんを覚えてる?」

「あ~⋯センパイが言いたいことが何となくわかりました。彼女が迎えの方か確認するには⋯」


 彼女は察してくれたようだ。


 アスカラ・セグレ社を訪問した際に、偽のエリック・セグレさんに会わされた。

 最初は盲信してしまったが、彼女の兄である『進一』さんの名を出されて違和感を覚えた。

 後に本物が出てきたが、互いに初対面の為に確認が出来ない。

 そんな状況が打破できたのは、俺と彼女が知っている元課長の佐々木さんが出てきたからだ。


 目の前でキョロキョロと人探しをする女性にも同じことが言える。

 あの女性が、眼鏡さんが言っていた『ヤマモト』さんと確認する方法は⋯


「センパイは電話番号を教えたんですか?」

「いや、俺からは教えてない。由美子が部屋に入ってきた時、俺が眼鏡さんと電話してただろ?」


「ええ、眼鏡さんと電話してましたね」

「その時に、迎えにくる方に俺の番号を教えると言ったんだが⋯」


「う~ん。彼女がセンパイの電話番号を知ってるなら、センパイに電話してきますよね?」

「そう思うんだが、彼女はスマホを持ってるんだよ」


 件の女性を見れば、スマホを操作している。


「眼鏡さんから番号を知らされてないのかな?」

「もしくは俺の番号を記録し忘れたとか?やっぱり眼鏡さんに電話するよ」


「それしかないですね⋯」


 スマホを取り出しアドレス帳を開き、『国の人な眼鏡』をタップして通話をする。


 プップップッ

 トゥルートゥルー

 トゥルートゥルー

 トゥルートゥルー


 ただいま電話に出ることが出来ません⋯


 プツ

 留守録になったので通話を切った。


「ダメだ、出ない」

「じゃあ、私が⋯」


 そう言って彼女が立ち上がろうとした時、件の女性が意を決したような表情でこちらに向かって歩いて来た。


「俺が対応するから。名乗らないで」

「え、えぇ⋯」


 件の女性が俺と彼女の前で止まろうとした時、俺から声をかけてみた。


「Can we help you?」

「「⋯⋯」」


 俺の発した言葉に、件の女性が固まり隣に座る彼女も固まる。

 それでも俺は言葉を続けた。


「Looking for someone?」

「ま、マイ⋯」


 どうやら、件の女性は俺からの英語での問い掛けに戸惑いつつも、何とか答えようとしているのがわかる。

 俺からの英語での問いかけに、同じように英語で応えようと頭の中で英文を組み立てているようだ。


「ま、My name is Yamamoto⋯」

「Can I talk to your boss on the phone?」


 女性が『Yanamoto』と名乗ったところで、俺は次の問いかけを被せてみた。

 すると件の女性が再び固まった。


「あなたの上司と電話で話したいそうです」


 隣に座る彼女が、俺の英語を通訳しつつ、件の女性が手にするスマホを指差した。


「は、はい。今、繋ぎます」


 件の女性は慌ててスマホを操作する。


 俺が隣に座る彼女の手を握ると、彼女はアヒル口で抗議したそうな顔を見せてきた。


 そんな彼女の耳元に俺は小声で囁く。


(イジワルだったかな?)

(やりすぎだと思います)


 俺の耳元を手で被うようにして、彼女が囁き返してくる。


(あの電話が繋がったら俺に電話するように日本語で伝えて)

(はい。わかりました)


 再び彼女の耳元に囁くと、先ほどと同じようにして彼女が返してくる。


「繋がりましたが⋯」

「あなたの上司に、待ち合わせしている方に電話するように伝えてください」


 件の女性が繋がったと伝えてきたので、彼女が先程の小声での打ち合わせどおりに応えた。


 すると、件の女性が困った顔をしながらも諦めたように、通話の相手先に伝え始めた。


 その姿はスマホで会話しながら、『すいません』『すいません』と何度も謝っていた。


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