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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月5日(水)☀️/☁️
238/279

17-9 ネットショップ


 隠岐空港のターミナルビルに彼女と共に入り、航空会社のチェックインと荷物の預け入れを済ませた。


 チケット予約をした彼女に手伝って貰い、俺でも順調に済ませることが出来た。

 けっして新婚旅行の予行演習じゃないよ。


 その後は、搭乗に際しての保安検査が始まるまで時間があるので、彼女と二人でベンチシートで待つことにした。


「センパイ、お土産を選びましょう」


 彼女の提案に従って、二人でスマホを取り出しネットショップを開く。


「サザエ最中もなかは頼むんだよね?」

「ええ、鈴木さんと田中君、それに人事の美奈と経理の由紀で4個ですね」


 先程、彼女がお店で4個と言ったのは、お土産を渡す候補として名前を上げた4人だと理解した。


 彼女の言う4人を思い浮かべて、俺はもう一人、お土産を渡す候補に入れようと考えた。


「さっき由美子は4個と言ったよね?」

「ええ、私達が隠岐の島へ行くのを知ってるのは、この4人ぐらいですよね?」


「部長はどうする?」

「ぶ、部長ですか?う~ん⋯」


 俺の提案に彼女が思案する。


「センパイは、部長が受け取ってくれると思います?」

「由美子が出張扱いで帰省できたのは、部長の決断だから一応お土産は渡そう」


「そうですね。4個も5個も同じですから」


 彼女が納得しつつ5個をショッピングカートに入れた。


「まあ、部長にはサザエ最中だけでよいよな」

「そうですね。他の物は渡されても迷惑かもしれないですから(笑」


「他の4人にはどうする?」

「雑貨屋で数点買ったから大丈夫です」


 彼女の言葉になる程と思う。

 雑貨屋で選んでいる時の彼女は、渡す相手の事を考えながら選んでいたのだろう。


「じゃあ、会社の人たちへのお土産はこれで良いね?」

「はい。ちょっと配送先を入力しちゃいますね」


 彼女は自分の名刺を取り出し、スマホで操作を進めている。

 続けてカード決済のためにクレジットカードを取り出した。


 そんな彼女の隣で俺もスマホを操作する。

 バーチャんを思い浮かべながら、喜んで貰えそうなお土産を決めて行く。


「はい。注文完了です」

「おつかれさまです」


「センパイ、次は桂子お婆ちゃんへのお土産です」

「ああ、お願いして良い?」


「何にするか決めてるんですか?」

「ああ、決めた。今決めた(笑」


 それから俺は、自分のスマホを彼女に見せながら、バーチャんへのお土産を決めていった。


・日本酒の『隠岐誉』

・同じ酒造の『海草焼酎』


 どちらも、剛志さんや進一さんと一緒に飲んだものだ。


「お酒だけで良いんですか?」

「『しいしび』もバーチャんに食べさせたいな。あれ美味しかったから」


「『しいしび』ですね。3枚入りで良いですか?」

「そうそう、その3枚入りの奴で」


 そんな感じで、ネットショップを使ってのお土産のチョイスを済ませた。


「届け先は?」

「ああ、淡路島の実家で良いよ」


「淡路島の実家ですよね?確か住所をメモしていたから⋯」

「あれ?⋯美奈さんに教えて貰ったの?」


「ええ、今回の出張申請を出すのに教えて貰いました」

「ああ、なる程ね⋯」


 自分で淡路島の実家で良いと口にしながら、彼女が俺の実家の住所を知っているのが不思議に思った。


 だが、今回の彼女の帰省出張には、俺のお迎えも含まれているから知ってるんだなと納得することにした。


「支払いは私のカードで良いです。後でセンパイに請求しますね」

「それなら、さっきの会社の人達へのお土産と合わせて払うよ」


「えっ?良いんですかぁ~」

「由美子の実家にお世話になったし、雑貨屋のも俺が払ったし⋯同じだろ(笑」


「センパイ アザァース」


 結果としてネットショップで購入した総額は俺が払うことにした。

 バーチャんから借りて、彼女に渡した例の封筒から出し、彼女に受け取って貰うことにした。


 そんなことをしていると、ターミナルビルの中に人が増えてきた。

 団体客が来て保安検査が始まったようだ。

 どうやら思ったよりも帰りの便は搭乗客が多いようだ。



 無事に飛行機は定刻で出発した。


 大阪の伊丹空港でも感じたが、この飛行機が飛び立つときの浮遊感は、何となく落ち着かない。


 機内は、案の定、満席だった。

 少しざわつく機内で彼女と並んで座り、『鯉のぼり』の話題になった。


「センパイ、さっき運転手のおじさんに『鯉のぼり』の話をしてましたよね?」

「ああ、実は気になってたんだ。由美子の実家は恭平君がいるだろ?」


「⋯」

「あの年齢の男の子がいたら、『鯉のぼり』もありそうだと思ったんだが⋯」


「⋯⋯」

「もしかして、聞いちゃいけない話?」


 俺が恭平君を引き合いに出し、彼女の実家でこの時期に『鯉のぼり』が立てられていない件を聞いてみた。

 俺からの『鯉のぼり』の話題に、彼女は返事に困っている感じがする。


「センパイ。実家は『鯉のぼり』禁止なんです」

「『鯉のぼり』が禁止?」


「市之助さんが決めたことなんです」

「市之助さんが??」


「実は進一兄さんが子供の頃に燃やしたんです」

「燃やした?『鯉のぼり』を燃やしたの?」


「ええ、大きい焼き魚を作ると言って、『鯉のぼり』を庭で燃やしたんです」

「ハハハ」


 俺はあの高級住宅の庭で、炎を纏って燃え上がる『鯉のぼり』を想像してしまった。


「それから実家では『鯉のぼり』は禁止になりました(笑」


 彼女の話から、進一さんの幼少期のやんちゃを見た気がした。


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