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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月5日(水)☀️/☁️
236/279

17-7 ちゃんぽん


 それなりの量の雑貨を購入し、支払額が多くなった。

 バーチャんから借り、彼女に預けた封筒からの支払をお願いした。

 店員さんに宅配便での配送をお願いしたら、大量購入に感謝されつつ、配送料を無料にしてくれた。


 支払いを済ませ、配送を依頼したところで彼女が大胆な行動に出た。


 彼女はそれまで使っていたバッグから中身を取り出し、購入したカゴバッグに移している。

 格段に彼女のバッグの中身に興味はないが、彼女の移し替える様子を見れば小分け用のポーチを巧みに使っていた。

 それまでのバッグに雑多に入れている様子はなく、ポーチを移し替えるだけの作業だ。


「直ぐに使いたいの?」

「うん♪」


 彼女の朗らかな笑顔に癒される。

 全てをカゴバッグに移すと、店員さんが紙製の手提袋を渡してくれた。


「よろしければ使ってください」

「ありがとうございます」


 彼女が礼を述べ、それまでのバッグを手提袋に納めると、今購入したカゴバッグを手にして俺に微笑む。

 う~ん。やっぱり彼女は可愛い。


「とてもお似合いです」

「うんうん」


 店員さんの言葉に俺も頷く。


「そうだ、このポチ袋もお願いします」


 そう言って、彼女はレジの並びに置かれたポチ袋に手を伸ばす。

 彼女は中身を移したカゴバッグから財布を取り出し支払いを済ませると、カゴバッグに納めた。


「本日はお買い上げいただき、ありがとうございます。それでは、この名刺宛に配送しますね」


 店員さんは確認の意味を込めて、先ほど彼女が渡した名刺を再度見せてくる。


「はい、よろしくお願いします」


 そんなやり取りをして、彼女と共に雑貨屋を後にした。


 店の外に出ると、再び彼女が腕を絡めてくる。

 そんな彼女の横顔はウキウキとした感じで、新しいカゴバッグが嬉しいのだろう。


 彼女と腕を絡ませながら、和菓子屋から来た道を戻って行く。


「あれ?戻るの?」

「ええ、次は『ちゃんぽん』です」


 言われてみれば少し空腹を感じている。

 彼女の提案した『ちゃんぽん』は、隠岐の島へ降り立った際に食べ損ねたものだ。


「あぁ~『ちゃんぽん』ね。お勧めのお店?」

「ええ、以前によく来ました」


 そんな会話をしながら、彼女と隠岐の島の街並みを散歩するように進んで行く。


 先ほど寄った和菓子屋を見れば、女性客が二組ほど見える。

 なかなか、人気のある店のようだ。


 少し進むと、『隠岐の地酒専門店』の看板を掲げる店が見えた。


「バーチャんが見つけたら、喜びそうだな」

「ここより、実家の奥にある工場の方が良いと思いますよ」


 実家の奥の工場⋯隠岐の島の銘酒『隠岐誉』の工場のことだな。

 確かに、工場見学でバーチャんを連れてきたら喜びそうだ。


 さらに進むと、そこはかとなく空腹を誘う匂いがしてきた。


 匂いの元を辿れば、小綺麗な外観の店舗でイタリア国旗が掲げられている。

 隠岐の島で『イタリア料理』を出す店とは、かなり洒落た感じだ。

 海産物を使った本格的なイタリア料理だろうか?


「このお店は、兄の結婚式で戻ってきた時に来たことがあります。ピザが美味しいんですよ」

「へぇ~」


「東京に戻って検索したら、Facebookを見つけたんです」

「なるほどFacebookか。このお店ならやってそうだね」


「Facebookのお店の記事を読んでたら、フェリーが欠航してお店が大混雑する話がありました」

「そうか!フェリーが欠航すると、観光客が足止めされて街全体に人が溢れるんだね」


「そうなんです。海が荒れてフェリーが終日欠航すると、天気が悪いのに街が観光客で賑わうんです」

「なるほど、離島あるあるだね」


 隠岐の島の街中は、スレ違う人も車も少なく、街歩きの散歩としては良い感じだ。

 そんな街がフェリーの欠航で賑わうのかと考えながら、彼女と腕を組み、彼女の案内で街並みを散歩して行く。


 道行く正面に『おき西郷港』と大きく記された建物が見えたところで、彼女が組んだ腕を押すようにしてきた。


 この右側の路地に入るんだなと察して、路地の奥を見れば見たことがあるような屋根が奥に見えた。


「あれ?ここって隠岐の島に来た時に寄ったフェリー乗場に近いの?」

「ええ、もうこの路地の突き当たりがフェリー乗場ですよ」


 隠岐の島に来た時に、空港からのバスを降りたのが『西郷港フェリーターミナル』だ。

 それがもう目の前だと言う。


「センパイ、そこの店です」


 彼女に言われた方を見れば、町中華の

ようなお店の外に、既に先客が数名並んでいた。



「はい『ちゃんぽん』と『焼きめし』ね」


 そう言って、おばちゃん店員が持ってきたのは、中々のサイズの『ちゃんぽん』と『焼きめし』だった。


 注文する際にわがままを言わせて貰い、取り分ける茶碗も2つお借りした。

 するとおばちゃん店員が、『ちゃんぽん』用のレンゲと『焼きめし』用のスプーンも添えてくれた。


 彼女が『ちゃんぽん』を取り分け、俺は『焼きめし』を取り分ける。


 彼女は取り分けた方を自身の前に置き、俺にはおばちゃん店員が持ってきた方を寄越した。


「「いただきます」」


 二人で声を合わせ、食べ始める。


 まずは『ちゃんぽん』のスープを飲んでみれば、トンコツ味でしっかりとした塩分を感じる。

 面白いのは麺が一般的な『ちゃんぽん』の太めな感じではない。

 ラーメンに使われている麺と同じような太さだ。

 だが、この組み合わせが良い感じなのだ。


 『焼きめし』の方は炒飯とは違い、まさに『焼きめし』な感じだ。

 添えられた福神漬けが、これまた『焼きめし』に良い感じで合っている。


 おばちゃん店員が話しかけてくる。


「お嬢さんは、金髪さんの妹さんだよね」

「ええ、覚えててくれたんですか?」

「⋯」


「そりゃ、こんな美人忘れないよ~」

「きゃぁ、ありがとうございます」


「お兄さんが金髪さんで、妹さんが美人さんだもん。忘れないよぉ~」

「へへへ」


 なるほど。

 金髪イケメンの進一さんと、美人の彼女が一緒に店に来れば、忘れないよなと感心してしまった。


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