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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月5日(水)☀️/☁️
232/279

17-3 伊勢講


 恭平君は新型Padに✌️サインを出しては、大型液晶テレビに写る自分の姿に興奮してキャッキャッと声を上げる。


「由美子さん、ちょっと恭平をお願いして良い?」


 里依紗さんが彼女に声をかける。


「恭平ちゃん、お姉ちゃんと麦茶飲もう!」

「うん!」


 彼女が恭平君に声を掛けると、恭平君は元気に返事をしてダッシュでキッチンへと向かった。

 彼女は立ち上がり、小走りに恭平君を追いかける。


「それで、何のお話ですか?」

「アマツカさんの件です」


 俺から新型Padを受け取った進一さんは、眼鏡さんと会話を始めた。

 眼鏡さんが口にしたのは『アマツカ』の言葉だった。


「ククク。『魔石』の件じゃないんだ?」

「ええ、それは憲次さんとさせていただきます」


 なるほど。

 『魔石』の件は、やはり憲次さんが窓口になってるんだと伺い知れる会話だ。


 そんな様子を見ていると、吉江さんと京子さんから声を掛けられた。


「二郎さん、桂子さんの担当って眼鏡さんなの?」

「眼鏡さんは、桂子さんのとこなのかい?」

「えぇ、『淡路陵』の担当らしいです。お二人は面識がある⋯んですよね?」


 吉江さんと京子さんの問に応えつつ、彼女が東京に出て来た時にお世話になった話を思い出す。


「何年前だろうねぇ⋯」

「ほら、由美子が大学に行く時よ」


 そうです。彼女も言ってました。

 彼女はその後も別件で会っているようですが⋯


「あの時は、お世話になったねぇ」

「おかげで、由美子は安心て大学に行けたし」


「眼鏡さん。フフフ。懐かしいわね」


 京子さんと吉江さんの昔を懐かしむ会話に、里依紗さんが割り込んできた。


「あれ?里依紗の実家は眼鏡さんが担当だったの?」

「いえ、直接の担当じゃなかったけど、随分とお客さんを連れて来ることが多かったのを覚えてます(笑」

「???」


 吉江さんが里依紗さんの実家の話をする。

 それに応える里依紗さんは、眼鏡さんがお客さんを連れて来ていたという。

 何の話だ?


「あのぉ~里依紗さん⋯」

「なに?二郎さん?」


「里依紗さんの御実家は、何か商売をされてるんですか?」

「あれ?二郎さんに言ってなかった?」


「ええ、聞いてませんが⋯」

「あら、ごめんなさいね。小さい旅館をやってたの」

「あら里依紗、随分と控目ね(笑」


 吉江さんがニヤリとしながら、里依紗さんに切り返す。


「小さいですよ~ 母が手離してから随分と手が入って、今ではかなり大きくなったみたいですけど。やっぱり大手は違いますね」

「今はお母様は何もしてらっしゃらないの?」


 里依紗さんが答え、吉江さんがさらに問いかける。

 その掛け合いは、既に俺の疑問を離れて嫁と姑な感じがする。

 これは、俺が関わらない方が良い感じだ。


「ええ、母はすっかり身を引いたつもりですが、度々、例の伯父が煩いらしいです(笑」

「あら?まだあの人は何かしてくるの?お母様もゆっくりできないわねぇ(笑」


 『例の伯父』?

 里依紗さんの伯父さんのことだよな?


「さっき、眼鏡さんが伊勢で宿を取るって言ってたけど、又、伯父が騒ぎそう」

「あら、由美子の件でお母様に迷惑は掛けられないわ」


 そう述べた吉江さんが行動に出た。


「進一、ちょっと眼鏡さんに話があるの代わって」

「いえ、お義母さん。私が話します」


 吉江さんが進一さんに声をかけると、里依紗さんが進一さんの隣に座り直した。


「眼鏡さん、里依紗です」

「これはこれは、ご無沙汰しています」


「さっき、二郎さんや由美子さんのために伊勢に宿を取るって言ってたけど、大丈夫ですか?」

「⋯」


 里依紗さんの問い掛けに、眼鏡さんの反応が一瞬止まった。


「里依紗さん、お母様は二郎さんと由美子さんがお伊勢様へ行かれるのはご存知ですか?」

「一応、伝えてますけど、今日は無理みたいですよ。金曜と言われましたけど、眼鏡さんから確認して貰えます?」


「はい。私からも二郎さんと由美子さんの件としてお伝えして、再確認します」

「それと伯父に気を付けてくださいね(笑」


「ええ、そこは里依紗さんのお母様も含めて、十分に配慮します」

「実家の件で迷惑掛けてごめんなさいね」


「いえいえ、今の私は『淡路陵』の担当ですので、皆様にはご迷惑を掛けぬように行動します」


 大型液晶テレビから聞こえる眼鏡さんの言葉に、吉江さんが『うんうん』と頷く。

 そんな吉江さんに聞いてみた。


「吉江さん、里依紗さんの御実家は宿を営んでたんですか?」

「以前にね。私達でお伊勢様に行った時にお世話になったの」

「そうだねえ~ 懐かしいわね~」


 吉江さんへの問い掛けのはずが、京子さんが懐かしむ話を出してきた。


「じゃあ、京子さんもご存知なんですか?」

「はいはい、知ってますよ」

「ほら、二郎さん。写真をみたでしょ?」


 京子さんへ確認を込めて問うと、吉江さんから写真の話をふられた。


 写真って⋯あの集合写真か?!


「あの写真って⋯」

「そう、市之助さんに連れられてお伊勢様に行って、里依紗さんの御実家にお世話になったの。その後に桂子さんのところで撮ったのがあの写真なの」


 俺は衝撃の事実を知った。


 市之助さんが秦家の皆を連れて伊勢神宮に出向き、その際に泊まった宿が里依紗さんの御実家だというのだ。

 しかもその後に淡路島に来て、バーチャんや零士お爺ちゃん、一郎父さんや礼子母さんたちと集合写真まで撮ってるなんて⋯


「二郎さんは知ってるかしら?」


 固まりかけた俺に京子さんが声をかけてくる。


「二郎さんは『いせこう』って知ってるかしら?」

「『いせこう』?」


 『いせこう』?全く知らない言葉だ。


「お伊勢様の『伊勢』に講談の『講』と書いて、『伊勢講いせこう』と読むの」


 吉江さんが『いせこう』の漢字表現を語ってくるが、俺は全く知らない言葉だ。


「『おかげまいり』なら二郎さんはわかります?」

「二郎さんは『お伊勢様のお蔭』って聞いたことあるかしら?」


 京子さん&吉江さん。

 無知な俺を叱ってください。

 どれも俺は知らない言葉です。


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