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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
229/279

16-31 派閥争い


 その後、進一さんから『伊勢の門』での守人同士による派閥争いの様相を聞かされた。


 大きく分けて2つの派閥があるそうだ。

・『伊勢の門』は『伊勢神宮』の一部

・『伊勢の門』と『伊勢神宮』は別物


 所謂いわゆる、むやみやたらと相手を管理したがる派閥と、純粋に『門』の成り立ちと神社神宮は別だという派閥だ。

 里依紗さんは、後者の派閥に属する守人の家系出身だという。


 これだけなら2派閥で済むのだが、里依紗さんの派閥の中には、他の門を配下に納めたがる派閥があるという。


 『伊勢の門』と『伊勢神宮』は別の存在だと唱えながら、『伊勢の門』は日本最古の門だから他の門は従うべきという考えだ。


 自分達が『伊勢神宮』の配下ではないと声を上げるが、他の門は配下だという思想で接してくるため混沌とした様相らしい。


 ここまでの話を進一さんから聞き、俺は伊勢神宮に行くのが嫌になってきた。


 それにしても進一さんには感心した。

 里依紗さんと結婚して、派閥争いの当事者でもある里依紗さんを連れて、よくぞそんな混沌とした伊勢神宮に行ったものだと感心してしまった。


「進一さん、そんな連中の居る伊勢神宮に、よくぞ出向きましたね」

「ククク。あの頃は尖ってたからね。怖いもの知らずだよ(笑」


「ハハハ」「ククク」

 二人で乾いた笑いしかでない。


「そういえば、進一さんが伊勢に行った際に門が開いたと言いましたよね?」

「ああ、その話ね。彼らの案内で内宮にお詣りに行った際に彼らが急にバタバタしてね⋯」


「彼ら?」

「ああ、二郎くんの呼び名で『国の人』だよ」


「えっ?一緒にお詣りしたんですか?」

「ああ、二郎くんは⋯あれ?二郎くんは当代を名乗ってないから、どうなるんだ?」


 進一さんの言葉に、『国の人』の眼鏡スーツの顔が浮かんだ。

 彼に連絡して、彼女と一緒に伊勢詣りをするのかと考えると、益々、気が重くなる。


「その『国の人』⋯彼らは『伊勢の門』での派閥争いに影響は無いんですか?」

「無いね。基本的に守人の管理監督は、当代の責任だからね」


「それなら、当代が不在の『伊勢の門』が派閥争いに至るのも理解できます(笑」

「もしかして由美子の会社、二郎くんの勤める会社でも派閥争いがあるのかな?」


「う~ん。どうなんでしょう。悪い上司や元課長の佐々木さんのような良い上司は居ますが⋯」

「そうだ!佐々木さんに連絡しないと!すっかり忘れてたよ」


 そう言った進一さんは、スマホに手を伸ばした。


「進一さん、多分、佐々木さんは出ないですよ」

「ん?どうしてだい?」


「佐々木さんは休日はNGで、平日の09:15~17:15だけしか連絡を受けないと言ってましたよ」

「ククク。佐々木さんらしいな(笑」


「明日は5月5日で休みか、じゃあ佐々木さんと話せるのは、早くて明後日だな」


 進一さんがスマホを操作しながら返事をする。


「多分ですけど、佐々木さんは由美子に無理難題は言わないと思います」

「そうか⋯だが、今の彼はアスカラ・セグレ社側だろ?」


「言われてみればそうですね⋯けど、佐々木さんから何か言われたら、自分に相談が来ると思います」

「二郎くん。頼もしい言葉だ!」


 進一さんが俺を称える言葉と共に、海草焼酎を俺のグラスに注ぐ仕草をする。

 それに応えて、俺はグラスに残った海草焼酎を一気に飲み干した。



 剛志さんの持ってきた四合瓶の海草焼酎を飲み干し、進一さんとの宴は御開きにして寝ることにした。


 使ったグラスを洗い終え、喉が渇くだろうと日中も手にしたのと同じ500mlのペットボトルを進一さんから受けとる。


 ペットボトルを片手に進一さんとソファーエリアに行けば、彼女と吉江さん、それに京子さんがテレビドラマな人々になっていた。


「じゃあ、先に寝ます」

「先に寝るね」


 進一さんと共に声をかけたが、テレビドラマな方々からの返事はなかった。


 進一さんと共に階上に上がり、寝泊まりしている部屋の前で別れる。


「二郎くんと次に合えるのは⋯」

「さっき剛志さんにも言いましたが、結納の時だと思います(笑」


「ククク。そうだな。楽しみにしてるよ」

「ええ、自分も楽しみです」


「それじゃあ!」

「ええ、おやすみなさい」


 就寝の挨拶を済ませ、寝泊まりしている部屋に入りノートパソコンを立ち上げる。


 俺は隠岐の島に来てから、テレワークをしていないのを思い出した。


 5月2日の10:00から24時間のメンテナンスのはずだから、既に使えるはずだ。

 社内ネットにログインし、未読メールを確認すると画面が真っ赤に染まった。


 社内メールは未読状態だと、赤色の文字で表示される。

 その未読メールの件数が30件を越えているのを確認して、ノートパソコンの前で腕を組んで考える。


 彼女と一緒に見た方が良いのだろうか?

 この有給休暇中に、このメールに目を通す時間があるのだろうか?


 ノートパソコン専用バッグからメモ帳とボールペンを取り出し、今後の予定を思案しながら書き留めて行く。


 明日の5月5日(水)は、飛行機で本土に戻り淡路島に向かうから終日移動になるだろう。

 明後日の5月6日(木)は⋯午後には伊勢神宮へ移動になるのか?

 伊勢神宮周辺で一泊して、5月7日(金)は10時に伊勢神宮だよな⋯

 伊勢神宮をお詣りしたら、一旦、淡路島に戻るのか?

 当日に戻れたとして、翌日の5月8日(土)は休日だな。

 有給休暇最終日の5月9日(日)は、淡路島から東京への戻りか⋯


━━


5月5日(水) 隠岐の島→大阪伊丹空港→淡路島の実家

5月6日(木) 淡路島の実家→伊勢神宮

5月7日(金) 伊勢神宮→淡路島の実家

5月8日(土) 休日

5月9日(日) 淡路島の実家→東京のアパート


 書き終えたメモを見て、ますます、伊勢神宮へ行くのを止めたい気分になってしまった。


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