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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
228/279

16-30 『YES』or『NO』


 進一さんと里依紗さんが語る日本神話の中から、衝撃的と言うか考えさせられる話が出てきた。


 代表的な日本神話の『天岩戸あまのいわと』で、岩戸を開く際に『勾玉まがたま』が使われたと言うのだ。


 この有給休暇中に『門』に関わってきた日々、そして『継ぐ』とは何かを学びに来た隠岐の島での経験。


 これらからすれば、今聞かされた日本神話の『天岩戸あまのいわと』は、『勾玉まがたま』を使って『門』を開くのと同じだ。


「進一さん里依紗さん、『伊勢の門』の『鍵』は『八尺瓊勾玉やさかにのまがたま』なんですか?」


 俺は思いきって二人に問いかけた。


「その問いへの答えは『YES』ね」

「うんうん」

 里依紗さんが答え、進一さんが頷く。


 ここで俺は当初の話を思い出した。

 そもそもは、里依紗さんと交わした⋯


〉里依紗さんのご実家は『守人』

〉母が『伊勢の門』の守人の一人

〉お母様は伊勢神宮にお勤めですか?

〉ちょと違うわね


 『伊勢神宮』と『伊勢の門』の関係が理解し難い。


 待てよ。確か進一さんは⋯


〉実は伊勢神宮にも『門』があるんだ

〉『伊勢の門』と呼ばれて、別名が『神の門』と呼ぶらしい


 どうも理解ができない。

 進一さんは伊勢神宮に『伊勢の門』があると言う。

 そして里依紗さんの母親は『伊勢の門』の守人だが、『伊勢神宮』には勤めていなと言う。


「進一さんと里依紗さん。YESかNOで答えてください」

「急にどうしたの二郎さん?」

「いや、里依紗。二郎くんの質問を聞こう」

 進一さん、ありがとう。

 俺の無礼な願いを受けてくれてありがたい。


「進一さん、伊勢神宮に『伊勢の門』はありますか?」

「その質問への答えは『YES』だね」

「あら?!」


 進一さんは『YES』と答えた。

 その答えに里依紗さんは首を傾げた。


「里依紗さん、同じ質問です。伊勢神宮に『伊勢の門』はありますか?」

「答えは『NO』よ」

「ククク」


 里依紗さんは、ハッキリと『NO』と答えた。

 どういうことだ?

 二人の答えが違っている。


「二人の答えが違うんですが⋯」

「二郎さん。これだけは覚えてね。『伊勢神宮』と『伊勢の門』は別のものよ」

「ククク。外から見れば同じなんだけどね(笑」


 ガタン!


「進一さん!まだそんなことを言ってるの!」


 急に里依紗さんが立ち上がり、進一さんに怒りを表す。


「里依紗、落ち着いて⋯」

「里依紗さん落ち着いてください」


 俺も進一さんも、慌てて里依紗さんをなだめる。


「進一さん、別のものだと結婚前に言ったはずです!まさか未だに同じだと思ってるんですか!」

「いや、だから⋯周囲からはそうした見方もあると言う話で⋯」


 里依紗さんの怒りが治まらない。

 進一さんが弁明を始めてしまった。


「あ~ショックだわぁ~」

「いや、だからそれは見方の話であって⋯」


「じゃあ、聞くけど同じだと思ってるの!」

「いや、それは⋯」


「さっき、二郎さんの質問には『YES』って言ったじゃない!」

「いや、それはそれで⋯」


 おいおい、里依紗さん。

 俺を巻き込まないで。


「進一さんが、あんな連中と同じ考えだなんて!」

「いや、だから里依紗⋯周囲からの見方の話であって⋯」


 里依紗さんが立ったまま進一さんを問い詰める。

 金髪イケメンの進一さんがオロオロするのが少し笑える。


「じゃあ、聞きます。『伊勢の門』は『伊勢神宮』の一部ですか?」

「いえ、違います。『伊勢の門』と『伊勢神宮』は別の物です」


 あっ、進一さんが折れた。


「よろしい!今後、気を付けるように!」

「はい。気を付けます!」


「じゃあ、私はお風呂に行ってきます」

「はい」


 里依紗さんは仁王立ちでグラスの海草焼酎を一気に飲み干し、踵を返すようにリビングテーブルを離れた。


 あんな飲み方をして風呂に入って、大丈夫だろうかと要らぬ心配をしてしまう。


「ふぅ~ 二郎くん。この手の質問は⋯里依紗の前では禁句なんだ。特にお酒が入ってる時には⋯」

「なんかスンマセン(笑」


 思わず愛想笑いを交えて謝ってしまった。

 具体的に、何が里依紗さんの琴線に触れたかが俺には解らない。

 それでも『伊勢の門』の守人には、派閥のようなものがあるようには感じる。


「進一さん。その⋯『伊勢の門』には派閥のようなものがあるんですか?」

「派閥?まあ、そんな感じだね」


「何か変な感じですね」

「あそこは当代が不在だろ。だから取り纏めが効かなくて、守人同士で考えが合わずに争ってしまうんだよ」


「へぇ~」

「厄介なのは、伊勢神宮からも守人が来てて、代々の守人と覇権争いまでするし⋯」


「なんか拗れてますね⋯」

「もっと嫌らしいのは、他の門を、そう例えばこの『隠岐の島の門』は『伊勢の門』に属するとか言う奴も居るんだよ」


「プッ 何ですかそれ?!」

「笑えるだろ。自分達の門の位置付けすら出来ずに、他の門に手を出してこようとするなんて、僕からすれば頭がおかしいと感じるよ」


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