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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
227/279

16-29 天岩戸


 里依紗さんと進一さんから、日本の神様の話を聞き続ける。

 天皇の継承に関わる『三種の神器』の話や、俺の故郷の淡路島に関わる話などを交えた話が続く。


「死者の国=黄泉の国で変わり果てた妻と別れたイザナギ=伊弉諾尊いざなぎのみことは、黄泉の国での穢れを落とすんだ」

「その穢れを落とす際に生まれた3つの神様が、『三貴子さんきし』と呼ばれてるの」


 イザナギ=伊弉諾尊いざなぎのみことさん。

 随分と沢山の神様を生んでますね。


「『三貴子さんきし』は別名『三貴神さんきしん』とも呼ばれている」

「イザナギ=伊弉諾尊いざなぎのみことが、自らの生んだ諸神の中で最も貴いとしたところから、この名で呼ばれるのよ」


「その神様って⋯もしかして⋯」

「アマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみ、ツクヨミノミコト=月読命つくよみのみこと、スサノオ=須佐之男命すさのおのみことの三神が生み出されたの」


 里依紗さんの口から、ようやく俺の記憶にある『アマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみ』が登場した。

 そして『スサノオ=須佐之男命すさのおのみこと』も登場した。

 『ツクヨミノミコト=月読命つくよみのみこと』は記憶に無い神様だ。


「里依紗さんと進一さん、ようやく、アマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみとスサノオ=須佐之男命すさのおのみことが登場して安心しました(笑」

「ククク」「フフフ」

「ハハハ」


 俺の言葉に進一さんと里依紗さんが乾いた笑いをする。

 釣られた俺も乾いた笑いだ。


「進一さん、そろそろアマノイワト=天岩戸あまのいわとの話で良いかしら?」

「うん。アマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみもスサノオ=須佐之男命すさのおのみことも出てきたから、良いと思うよ?二郎くんは大丈夫かい?」

「ええ、アマノイワト=天岩戸あまのいわとの話に関わる神様が揃った感じですね(笑」


 俺が軽口を叩くと、進一さんがニヤリと笑いながらグラスの海草焼酎を飲み干した。

 それを見た里依紗さんが席を立ち、新たにグラスを持ってきた。

 俺もグラスの焼酎を飲み干す。


 3人で改めてグラスを満たし、軽く乾杯の仕草をする。


「さて、二郎くんも知ってると思うが、アマノイワト=天岩戸あまのいわとの話は、スサノオ=須佐之男命すさのおのみことが悪さをして、これに怒ったアマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみがアマノイワト=天岩戸あまのいわとに籠ることから始まるんだ」

「アマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみは、世の中を照らす神様だから、アマノイワト=天岩戸あまのいわとに籠ったことで世の中が真っ暗になるの」


 うんうん。この話は知っている。


「世の中が暗くなって、困った神様が集まって相談するの」

「鶏を鳴かしたりして、アマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみの気を引いて少しだけ岩戸を開けさせる」


 これも俺の知っている話だ。


「二郎さんは、その話の中で登場するのが、ヤタノカガミ=八咫鏡やたのかがみと、ヤサカニノマガタマ=八尺瓊勾玉やさかにのまがたまなのはご存知かしら?」


 この話は、俺は知らない。

 それでも進一さんは話を続ける。


「外の喧騒が気になったアマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみは、少しだけ岩戸を開けると⋯」

「スサノオ=須佐之男命すさのおのみことが岩戸を抉じ開けるんですよね?」


 俺は自分の記憶を頼りに割り込んだ。


「「⋯⋯」」


 進一さんと里依紗さんを見れば固まっている。

 あれ?違ったかな?


「ち、違うみたいですね⋯割り込んでスンマセン⋯」

 的外れな割り込みで恥ずかしい。


「二郎くん、気にしなくて良いよ。日本の神話教育の弊害だから」

「そうね。あなたもそんな間違いをしてましたからね(笑」

 里依紗さんが進一さんをからかう。


「岩戸を少し開いたアマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみに、別の神様が『あなたより貴い神が現れた』と言って、ヤタノカガミ=八咫鏡やたのかがみを見せるの」

「「⋯⋯」」


 里依紗さんが神話の続きを語る。


「ヤタノカガミ=八咫鏡やたのかがみに写った自分の姿をもっとよくみようとアマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみが岩戸をさらに開けると、隠れていた他の神様がその手を取って岩戸の外へ引きずり出したの」

「⋯」


 そこまでの里依紗さんの話を聞いて、自分が間違った神話の知識を持っていると痛感した。

 俺の知識は小学生時代に読んだ、漫画で描かれた神話の記憶だと思う。

 その漫画だけが悪いのではない。

 きっと記憶の中で、他の海外の神話と混ざっているのだと思う。


「さて、二郎くん。三種の神器でヤタノカガミ=八咫鏡やたのかがみは登場したね」

「ええ、アマテラスオオミカミ=天照大御神あまてらすおおみかみに見せたのが、ヤタノカガミ=八咫鏡やたのかがみですよね」


「さっきも言ったけれど、この話で三種の神器のヤサカニノマガタマ=八尺瓊勾玉やさかにのまがたまも登場するの」

「そうだ!!勾玉まがたまの話が出ていない!」


 里依紗さんに告げられ気が付いた。

 ヤサカニノマガタマ=八尺瓊勾玉やさかにのまがたまはどうなったんだ?


「ヤサカニノマガタマ=八尺瓊勾玉やさかにのまがたまの出処には諸説あるんだが、いずれの説でも天岩戸あまのいわとを開ける際に、捧げられてるんだよ」


 そう告げた進一さんがニヤリと笑う。

 その隣で里依紗さんが口角を上げる。


「それって⋯『門』を開くのと同じ⋯」


 俺は自分で口にした言葉に、自分で驚いてしまった。


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