16-28 日本の神様
「じゃあ、二郎さん。ここまでの話を整理しますね。天皇の継承では、三種の神器が引き継がれるのは解って貰えるかしら?」
「はい。理解しています。大丈夫です」
里依紗さんからの話は、再び、三種の神器が天皇の継承に用いられる話となった。
「二郎さんは、天皇の継承では『剣』と『勾玉』が贈られたニュースを知ってると言ったわよね?」
「ええ、ニュースで見た記憶があります」
「実はそれ、皇位継承の儀式の一つなの」
「はぁ?」
「『剣璽等承継の儀』と言って、三種の神器のうち『剣』と『勾玉』の2つを新しい天皇が受け取る儀式なの」
「⋯」
「『剣』と『勾玉』を受け取った後、新しい天皇は宮中の『賢所』に置かれた『鏡』に挨拶に行き、そこで『鏡』も引き継ぐのよ」
「⋯」
「『賢所』の『鏡』は御神体なので動かせないから、さっきの『剣』や『勾玉』のように儀式で贈らずに、新しい天皇が挨拶に行く手順になってるの」
「なるほど。『鏡』が御神体で伊勢神宮にあるからと言うのは、それとなく近い答えでしたね(笑」
「ククク」
里依紗さんの話を聞き、少し安心してしまった(笑
『剣』と『勾玉』だけではなく、『鏡』も引き継いでいると聞いて、きちんと三種の神器が引き継がれているのを理解した。
「さて、次の話に行くわよ」
「はい。お願いします」
「先ほど名前の出てきた伊勢神宮だけど、主祭神はわかるかしら?」
「『主祭神』う~ん⋯」
「ククク」
『主祭神』の言葉で躓いた。
言葉からすれば、『主』となる『祭神』で、どんな神様を祀っているかの意味だとは思うが、皆目見当がつかない。
進一さんには笑われるし⋯
「その付近になると無理かぁ~(笑」
「勉強不足でスンマセン」
「いやいや、二郎さんは悪くないわよ。知らないのも無理がないと思うの」
「そうだね。二郎くんは悪くないね。僕もその付近を学んだのは、当代を意識した頃だから」
「はぁ⋯」
里依紗さんから半ば諦めの言葉が出た。
進一さんからは、自身に置き換えた例えが出てきた。
つくづく、自分の無知が思い知らされる。
「そうだな⋯二郎くんは、日本の神様をどのくらい知ってるかな?」
「日本の神様ですか?」
進一さんから、ますます辛い質問が出てきた。
「二郎さんは、イザナギとイザナミなら聞いたことがあるかしら?」
「イザナギ?イザナミ?⋯何となく聞いたことがある程度です」
里依紗さんから、問われた神様の名前は聞いたことがある。
イザナギ=伊弉諾尊と、イザナミ=伊弉冉尊は、何かで聞いたことがある。
「じゃあ、アマテラスオオミカミとかスサノオはどうかしら?」
「スサノオは聞いたぐらいです。アマテラスは⋯天岩戸でしたっけ?」
「あら、天岩戸の神話を知ってるの?」
「乱暴者の神様に嘆いた女神様が、洞穴に引っ込んだ話ですよね?」
「ククク。随分と大雑把な理解だが致し方ないね(笑」
「進一さん、どんな感じで進めれば二郎さんに理解して貰えるかしら?」
「スンマセン⋯本当に知らな過ぎですね」
進一さんと里依紗さんから、匙を投げられた感じがする。
それにしても、どうして俺は、『伊弉諾尊』と『伊弉冉尊』の名を知っているのだろう?
「二郎くんは淡路島出身だから、イザナギとイザナミの神話で『国生み(くにうみ)』は知ってるんじゃないか?」
「あっ!!思い出しました。小学校か中学校の遠足で行きました」
小学校か中学校、義務教育の遠足だか社会見学だかで行った記憶がある。
確か、『伊弉諾神宮』に行った記憶がある。
「『伊弉諾神宮』に行った記憶があります。そうだ、思い出してきました」
「「うんうん」」
進一さんと里依紗さんから、頷きを貰えた。
「伊弉諾尊と伊弉冉尊で、日本を造ったとか教えられました」
「ククク。淡路島を最初に造った話だろ?」
「そうです、そうです。淡路島や佐渡島、それにこの隠岐の島、最後に本州を造った話です」
「国生み(くにうみ)の神話だね。その神話には続きがあるんだ」
◆
進一さんは、イザナギ=伊弉諾尊とイザナミ=伊弉冉尊の神話を語ってくれた。
俺の知っている、淡路島を最初に造った『国生み』に続けて、多数の神々が生まれた『神生み』の話が続く。
その『神生み』の後半で、イザナミ=伊弉冉尊が亡くなってしまう話に至った。
愛する妻、イザナミ=伊弉冉尊を亡くした夫のイザナギ=伊弉諾尊は、妻に逢いたい一心から死者の国=黄泉国を訪れたと言う。
「進一さん。その話は聞いたことがあります」
「そうか、二郎くんも日本人だな。それなりに知っているようで安心したよ(笑」
「うんうん」
俺の言葉に進一さんと里依紗さんが安堵を示す。
そして、里依紗さんからは、まだ話が続く言葉を聞かされた。
「二郎さん。ここからが、アマテラスオオミカミ=天照大御神やスサノオ=須佐之男命の話に繋がるのよ」
里依紗さん&進一さん、かなり長い話になりそうですね⋯