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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
221/279

16-23 席替え


「センパイ、席替えしませんか?」

「「「お、おう⋯」」」


 突然の彼女の掛け声で、3人で変な声を出してしまった。

 気が付けば、彼女が俺達の後ろに立ってダイニングテーブルを指差している。


「進一、二郎君。席を替えよう」

 剛志さんがダイニングテーブルをチラリと見て、彼女の席替えに同意する。

 俺もダイニングテーブルを見る。

 ダイニングテーブルには、誰もいなかった。

 女性陣と恭平君は夕食を終えて、リビングソファーでのテレビ鑑賞に向けて、家事全般を済まそうとしているのだろう。


「そうですね。進一さん剛志さん、席を変えましょう」

 俺も進一さんも、彼女と剛志さんの意見に同意して、ソファーテーブルの上の物を持ち、ダイニングテーブルへ移動した。

 ダイニングテーブルには、金属バットに入った餃子が置かれていた。


「兄さん。ご飯にするならコンロに卵スープがあります」

「おお、ありがとうな」

 彼女は進一さんに言伝てをしながら、布巾を持って、バタバタとソファーテーブルを拭き上げている。


「里依紗さんと恭平君は?」

「さっき、恭平ちゃん、ご飯を食べながら寝始めちゃったの。可愛かったぁ~」

 進一さんの、里依紗さんと恭平君を気遣う言葉に、彼女が答える。

 里依紗さんは、恭平君を寝かし付けに行ったんだと理解できる。


「京子さんと吉江さんは?」

「お風呂に行ったよ」

 進一さんに続いて、剛志さんの吉江さんと京子さんを気遣う言葉に、彼女はテレビのリモコンを操作しながら答えていた。



 ダイニングテーブルに移動を終えて、グラスに酒を満たす。


「じゃあ、飲み直しだ」


 剛志さんの音頭で、3人で改めてグラスを掲げて乾杯をする。


「さて、さっきの話の続きで良いかな?」


 剛志さんが切り出してきた。


「二郎君、『淡路陵の門』をどうしたい?」

「壊すという手段もあるよ。ククク」

「そうですね。どうしましょう。地震の都度に開いて、その都度、バーチャんに閉じさせたくないですね」


 俺が就職した直後の、淡路島での地震を思い出す。

 あの時にバーチャんには何もなく無事だったが、後から日記を読んで『門』が開いた記述が残されている。

 『門』を閉じる話しは残されていなかったが、きっと、バーチャんは勾玉まがたまを使って"門"を閉じたのだと思う。


「じゃあ、進一の言うように壊すか?」

「そうですね、地震で開かないように『門』を壊す手もありますね」

「ククク」


「二郎君は、そこで悩まないかい?」

「悩む?何を悩むんですか?」


 剛志さんの言葉に引っ掛かりを感じる。

 地震の都度に開いてしまう『門』なんて、壊すのも一つの手段だと俺は思い始めていた。


「二郎くんは、由美子との子供は欲しくないのかい?」

「!!」


 『門』から出てきた血筋の者は、『魔石』を使わないと子孫繁栄が出来ない。

 それが本当だとすれば、俺と彼女の間には子供が出来ない。

 子供を望むには、『魔石』の力を借りる必要がある。

 この隠岐の島で進一さんが作る『エルフの魔石』を使えば(詳細な使い方は不明)、女の子に恵まれる。

 俺が『魔石』に『魔素』を充填して『勇者の魔石』にすれば、男の子に恵まれる。

 だが、『門』を壊したら『魔石』が手に入らない。


 何だよこれ?!

 何かの罰ゲームか!!


 リビングソファーに目をやれば、楽しそうにテレビを見ている彼女の後ろ姿が見える。

 彼女と一緒になっても、自分達の子供は『魔石』を使わないと恵まれない。


 更に踏み込んで考えれば、例え子供が出来ても、その子供が結婚して子供を欲しがっても⋯


 『魔石』がないと子供が生まれない


 罰ゲームレベルの話ではない。

 これは、もう、呪縛じゅばくだ。

 いや、『門』の呪いだ。


「そうか⋯そもそも、自分は当代じゃないです。『門』をどうこうできる立場じゃ無いですね」

「進一、子供をどうするかは由美子と二郎君が考えることだろ?」

「父さんそうだね。二郎くん、すまん、出過ぎた話をしたね」


「いえいえ、由美子とよく話します」

「「うんうん」」


 心なしか、進一さんも剛志さんも、ニヤついてる気がする。


「さて、次を焼かないか?」

「じゃあ、二郎くん。頼むよ」

「はい」


 剛志さんの提案を受けて、俺は再びホットプレートに餃子を並べて水を入れ、蓋をすると魔法円に『魔素』を流して餃子を焼き始めた。


 蒸気穴から蒸気が出るのを見ながら、進一さんに改めて目をやる。


 金髪イケメンな進一さん、そのはだけた胸元。

 大学時代に知り合った赤メガネのBLボーイズラブな彼女に見せられた漫画を思い出す。

 赤メガネの彼女が進一さんを見つけたら、変な意味で悶えそうだと、心の中でニヤついてしまう。


 そんな進一さんの胸元に、黒い紐が見える。

 あれ?あんなの着けてたかな?


「進一さん、それって『魔石』ですか?」

「ああ、これ?」


 そう言って進一さんは胸元の紐を手繰る。

 その紐の先には黒い小さなものが⋯


「ほう、面白いデザインだな」

「里依紗がデザインした新作の一つだよ」


 進一さんが首からそれを外すと、剛志さんが手を伸ばして受けとる。

 剛志さんの手元を見ると、勾玉まがたまが乗っていた。


勾玉まがたま!」

「ククク。洒落てるだろ?」


 剛志さんが俺に渡してくる。

 それをよく見れば、黒い勾玉の中に銀色の光が見える。

 これって、『隠岐の島の門』の『鍵』である黒曜石でできた勾玉まがたまなのか?


「『鍵』ですか?」

「ハッハッハ。違うな」

 剛志さんが、あっさり否定してきた。

 そうか、剛志さんは現物を見てるんだよな⋯


「ククク。二郎くんは、『隠岐の島の門』の勾玉を見たいかい?」

「おいおい、それは⋯」

 剛志さんの否定気味な声を出す。


 まあ、『門』を開け閉めする『鍵』なのだ。

 むやみやたらと他者にお披露目するものではない。

 それでも、見れるものなら見てみたい。


「ええ、見せてください!」


 俺は、思わず乗り出して進一さんに迫ってみた。


「古いやつの写真なら良いよ」


 進一さんが了解してくれた。

 けれども、『古いやつ』って何だ?


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