16-22 『門』を開く方法
「勾玉を使って『門』を閉じるんですね!!」
「正解だぞ。二郎くん。ククク」
「よし、二郎君の正解を祝して乾杯だ!!」
剛志さんがパチパチと音をたて始めたホットプレートのフタを開ける。
目の前の餃子は、俺の正解を祝うように見事な焼け具合だ。
「さて、進一。ワシは『門』を閉じる話しを二郎君にしたぞ」
「じゃあ、僕が二郎くんに『門』を開く方法を話すよ」
それから進一さんは、『門』を開く方法を語ってくれた。
■『門』を開く方法
基本的に、『門』から出てきた者の『血筋』を受け継ぐものが術者となり、『鍵』に含まれた『魔素』を用いて『魔法』を使い、『門』を開くことが出来ると言う。
『血筋』
『隠岐の島の門』であれば、市之助さんの血筋である吉江さん、保江さん、美江さん、進一さん、彼女(由美子)、そして恭平君。
『淡路陵の門』であれば、バーチャん、一郎父さん、そして俺。
『米軍の門』であれば、零士お爺ちゃん、礼子母さん、そして俺。
『鍵』
『淡路陵の門』であれば翡翠の『勾玉』=お爺ちゃんの勾玉だ。
『隠岐の島の門』には黒曜石で作られた『勾玉』があるという。
『米軍の門』は不明。
『魔素』
『門』を開く『魔法』には『鍵』に充填された『魔素』を使う。
『魔法』
術者の強い願いにより実現する。
術者には『魔力』が求められる。
「二郎くん、『血筋』『鍵』『魔素』『魔法』この4つが揃えば『門』を開く事が出来るんだよ」
進一さんの説明に剛志さんも頷いている。
「じゃあ、剛志さんは『門』を開けないんですね?」
「いや、開ける。と言うか、一度、挑戦して開いたよ。黒曜石の勾玉=『鍵』と大量の『魔石』を使って市之助さんの助けを借りて『魔法』を発動させ、僅かだが『門』を開くことが出来た」
剛志さんが、苦い思い出を語るように説明してくれる。
話しづらいことなのだろうか?
「『門』を開けたなら⋯」
「僅かに開いたらしいんだが、俺は気を失って開いたのを見てないんだ」
「気を失った?剛志さん、もしかしてその時に⋯」
「ああ、『魔力切れ』を起こして死にかけたよ。目が覚めたら病院のベッドの上」
「危険です!どうして、『門』を開こうとしたんですか?」
「市之助さんに言われたんだ。『剛志君、吉江と一緒になるなら『門』を開いて当代を継いでみろ!』そんな感じだね」
「ククク」
「つ、剛志さん、それって市之助さんに試されたって事ですか?」
「吉江に惚れた弱みだよ。ハッハッハ」
「良い話だよ父さん。ククク」
剛志さん、笑い事じゃないです。
進一さんも笑っちゃダメです。
「二郎くん。挑戦してみるかい?」
「挑戦?」
突然、進一さんに問われた。
「ああ、『隠岐の島の門』を開くのに挑戦して開いてみるかい?ククク」
「⋯」
「開くことが出来たら、僕の後を継いで当代だ。ククク」
「おお、良いな二郎君、挑戦してくれ!」
「待て待て、『魔力切れ』で殺す気ですか?冗談がきついですよ」
「さて、二郎くん。『門』の開き方はわかったね」
「ええ。先程の剛志さんの説明で、閉じ方もわかりました」
そこまで自分で返事をして、俺は重要なことに気がついてしまった。
お爺ちゃんが、零士お爺ちゃんが死んだのは、地震で開いた『淡路陵の門』を閉じようとしたからだ。
どうして、零士お爺ちゃんが閉じようとしたんだ?
バーチャんは、その時に何をしてたんだ。
バーチャんなら、『淡路陵の門』から出てきたバーチャんなら、『血筋』も備えているから門を閉じれたのでは?
どうして、バーチャんじゃなく、零士お爺ちゃんが勾玉を手にして亡くなっていたんだ?
『門』を開くためには、『血筋』『鍵』『魔素』『魔法』の4つが必要だ。
同じように、『門』を閉じるためには、『血筋』『鍵』『魔素』『魔法』の4つが必要なんだ。
4つのどれかが欠けていたら、『魔力切れ』を起こして、一つ間違うと死ぬんじゃないのか?
「気がついたね、二郎くん」
進一さんの声で、俺は自分を取り戻した。
「ええ、零士お爺ちゃんが亡くなったのは、『魔力切れ』だったんですね⋯」
「二郎君は桂子さんに聞くかい?」
剛志さんの言葉に悩んでしまった。
零士お爺ちゃんが亡くなった時に、『血筋』を持っているバーチャんは、何かの理由で『門』を閉じれなかったのかもしれない。
『血筋』の無い零士お爺ちゃんが『門』を閉じるために『魔力切れ』で亡くなって、一番、悔やんでいるのはバーチャんじゃないのか?
だとしたら、バーちゃんには聞けない。
なぜ、零士お爺ちゃんが勾玉を持って、『門』を閉じようとしたかは聞けない。
「剛志さん⋯」
「何だい?」
「変な質問をしても良いですか?」
「ま、まあ、ワシで答えられるなら⋯」
「進一さんが不在の時に、『門』が開いたらどうします?」
「その質問か⋯ワシは閉じるよ」
「ククク」
「二郎くん、僕が聞いても良いかな?」
「何ですか?」
「桂子さんが不在の時に、『淡路陵の門』が開いたら、君は『門』を閉じるかい?」
「⋯」
俺は、進一さんの問いに再び固まってしまった。