表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
215/279

16-17 ホットプレート


「剛志さん、お疲れ様です」

「父さん、お疲れ」

「進一に二郎君、もう出るんだろ?先にやっててくれ」

「じいじい あらってぇ~」


 剛志さんが盃を傾ける仕草をし、恭平君は両手を広げて剛志さんに甘えている。


「父さん、頼んで良い?」

「おお、任せろ!恭平、洗うぞぉ~」

「じいじい あらってぇ~」


 親子三代のやり取りを邪魔しないよう、俺はそっと風呂場を出て脱衣所で体を拭き上げる。

 彼女の準備してくれたスウェットに着替えていると、進一さんも体を拭き上げ、里依紗さんが準備したであろう作務衣に着替えている。

 やはり金髪イケメンの湯上り作務衣姿は絵になる。


 二人とも着替え終わり、リビングダイニングに向かう最中、


「やっぱり湯上がりは、ビールが良いよな」

「確かにそうですね」


 進一さんの言葉に、湯上りビールが楽しみになってきた。


 リビングダイニングに入ると、リビングエリアのソファーで広げられていたお土産は片付けられ、リビングテーブルの上に小鉢が3つ準備されていた。

 ダイニングテーブルに目をやると、白い物が見える。

 何だろうと見に行くと、彼女、里依紗さん、吉江さん、京子さんが座って何かを作っている。

 よくよく見れば、"餃子"を4人で包んでいた。


「お、今日の晩御飯は餃子か。ますますビールだな。僕はビールを持って行くから、二郎くんはグラスを頼む」


 進一さんはそう言いながら、凍ったグラスを俺に渡し、進一さんは瓶ビールの栓を抜く。


「里依紗、僕らの方は"あれ"でお願いできるかな?」

「"あれ"で良いんですか?」


 進一さんと里依紗さんが、夫婦の会話をしているなと横目に見ながら、先にリビングエリアのソファーに向かう。


 夫婦の会話で少し遅れてきた進一さんと共にソファーに座り、互いに酌をしてグラスを軽く掲げる。


「Double魔石に」「勇者の魔石に」

「ククク」「ハハハ」


 互いの乾杯の合図に、互いに少し乾いた笑いが出る。

 それでも湯上りビールを一気に喉に流し込む。


 ゴクゴク


 おお、なんだか昨日よりうまい気がする。

 勇者の魔石が作れた喜びが強いのだろうか、なんだか昨日よりビールの味がハッキリとわかる。


「センパイ。自分達で焼いてください」


 彼女が金属バットに並べられた生の餃子を持ってきてテーブルに置く。


「進一さん、こっちのホットプレートで良かったんですね?」

「ああ、こっちで良いよ」


 彼女に続いて、里依紗さんが円形のホットプレートを持ってきて、リビングテーブルに置いて行く。


 ソファーテーブルに置かれたそれらを見て、俺は少し違和感を受けた。

 ホットプレートは円形で蓋が付いたタイプなのだが、電源ケーブルが見当たらない。

 ホットプレートの周囲を見るが、何処にも電源ケーブルの差し込み口が無いのだ。


「二郎くん。ホットプレートを温めてくれるか?」

「これ?電源ケーブルが無いですよ?」


「ククク」


 進一さんがニヤついている。

 待てよ、これって何かあるな?


 俺はホットプレートに手を伸ばし、蓋を脇に置き、プレート部分を持ち上げてみる。

 外側の枠と言うか台はあるが、それにプレートが乗せられているだけ。

 プレートを温める電熱部分が見当たらない。


 あれ?

 俺は慌てて、プレート部分の裏面を見ると、そこには驚く物があった。


「進一さん、これって?!魔法円?」

「ククク。見ただけでわかるとは素晴らしい!」


 黒いプレートの裏面は白く、そこには黒で丸い二重円が描かれ、外側の円と内側の円の間には見たことの無い紋様が描かれている。

 内側の円には内接する三角形と、それに重なる四角形が描かれ、四角形のひとつの頂点に小さい丸が描かれている。


「二郎くんは、魔法円を見たことがあるのかい?」

「いえ、『米軍の門』が魔法円だと日記で読んで、ネットで"魔法円"を調べておおよその形を知ってたんです」


「ああ『米軍の門』の記録だね。確かにあの記録から、『米軍の門』が魔法円だと読み取れるからね。それでも、これを見ただけで魔法円と気付くのは素晴らしいね」

「これって『米軍の門』⋯そんなわけ無いですね⋯ハハハ」


「残念ながら『門』の魔法円じゃないね。ククク」

「どんな魔法円なんですか?」


「見てのとおり、ホットプレートだよ。ククク」


 俺は『米軍の門』の魔法円について返したつもりだが、進一さんが見事に返してきた。

 確かに目の前にあるのは、電源ケーブルは無いがホットプレートだ。


「じゃあ、二郎くん。遠慮なく温めて」


 俺の意図を見透かしたように、進一さんはホットプレートに話を引き戻す。

 仕方なく俺もホットプレートに注意を移す。


「どうやって?」

「その四角形の角の丸に『魔素』を流すんだ」


「この小さい丸ですね」

「二郎くん、少しだけで良いよ。本当に少しだけで良いんだ」


 俺は進一さんの指し示す、四角形の頂点に描かれた小さい丸に指先を当てる。

 先ほど勇者の魔石を作ったときを思い出し、自分の体の中の『魔素』に意識を巡らす。


「はい。行きます」


 掛け声と共に自分の体の中の『魔素』に意識を戻し、小さな丸に当てた指先に『魔素』が届くように意識する。

 すると指先から魔法円に『魔素』が流れて行くのがわかる。

 その途端に魔法円全体が僅かに光り、手にしたプレートが熱を帯びるのを感じた。


 止まれ


 指先からの『魔素』の流れが止まるように意識して、小さな丸に当てた指先を魔法円から離す。

 指を離しているにも関わらず、魔法円全体は僅かに光っている。


 光る魔法円の様子を見ていると、進一さんが俺の手からプレートを取り上げた。


「どれどれ、これなら大丈夫だね。じゃあ、後は二郎くんに任せるね」


 そう言って、進一さんはプレートを枠にセットした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ