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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
213/279

16-15 マリオCAP


 メガネ執事さんは進一さんのお茶への誘いを断り、ロードバイクに股がり去って行った。


 俺は進一さんとメガネ執事さんのやり取りに割り込めず、盗聴器の礼も言えなかった。


 それでもメガネ執事さんの去り際に、


「いろいろと、ありがとうございます」


 そう投げた俺の言葉に、サングラスの下の口許が微笑んでくれたので、俺の気持ちが伝わったと思いたい。


 進一さんと並んでメガネ執事さんを見送り、その姿が見えなくなったときに、進一さんが座るように誘ってきた。


「二郎くん、いいかな?」


 進一さんと二人でテラステーブルの椅子に座る。


「二郎くんは、明日の飛行機だよね?」

「ええ、その予定です」


 進一さんがピンクのバケツを手元に引き寄せる。


「この『魔石』、暫く借りれないか?」

「ええ、問題ないです」


「よし。正徳さんに伝えるよ」

「ええ、どうぞどうぞ」


 俺の返事に応えて、直ぐに進一さんがスマホで通話を始めた。

 名が出た『正徳さん』に電話しているのだろう。

 時折、ピンクのバケツの中を覗き込んでいる。

 その様子から、俺が作った『勇者の魔石』について話をしているのがわかる。


 しばし話した進一さんが通話を切った。


「賢次さんと正徳さんが取りに来るそうだ。安心して長くは借りないし、使わないから。ククク」

「進一さん、それは心配してないです。それより少し聞いて良いですか?」


 俺は『魔石』よりも進一さんに聞きたいことがあった。


「ああ、良いよ」

「あの、今の男性って⋯」


「ククク。アマツカさんだよね?」

「よく来るんですか?」


「待った。質問はそれだけかい?」

「えっ?」


 俺は進一さんの切り返しに固まる。


「ククク。よく来るんですか?いつから来てるんですか?何をしに来るんですか?ククク」

「あっ、そ、その⋯」


「この後、二郎くんは何個の質問を重ねるんだろう?どこまで質問を重ねるんだろう?」

「⋯」


 進一さんの言葉に何も返せない。


「二郎くんは、アマツカさんの正体を調べたいのかな?ククク」

「ハハハ」


 俺は乾いた笑いしか返せなかった。

 そんな俺に、進一さんが話題を変えてきた。


「それにしても『勇者の魔石』が3個とは驚きだよ」

「ええ、由美子には随分と助けられました(笑」


 俺は、先程のメガネ執事さんに関わる質問を誤魔化すように、冗談を交えて返してしまう。


「ククク。あまり無理させないでくれよ」

「すいません。なんか、こう、もう少しで感じが掴めそうだったんっで、つい⋯」


「ククク。覚えたてはそうかもな(笑」

 進一さん。

 似たようなことを里依紗さんも言いましたよ。


ガラリ


 テラスに続くガラス戸が開き、恭平君が姿を見せた。


「パパにあう?」

 恭平君。マリオCAPが似合うぞ!


「おお~似合うぞ~。どうしたんだこれ?」

「おねえちゃんのおみやげ~(✌️」


 ポーズを決めた恭平君は再び屋内に引っ込んだ。

 確かに似合っていた。


 ガラス戸越しに屋内を見れば、段ボールを開いてお土産を囲む皆が見える。


 進一さんとの話を続けようと椅子に座り直すと、庭の向こうから男性二人が走ってくるのが見えた。


「おーい」


 よく見れば、賢次さんと正徳さんだ。

 二人はそのまま、進一さんと並んで座るテラステーブルに向かってくる。


ハアハア

ゼエゼエ


 二人は息を切らしながら、テラステーブルに手を着き話し掛けてくる。


「ぜ、全部で、さ、3個ですか⋯ハアハア」

「まさ、正徳、そ、そんなに慌てるな⋯ゼエゼエ」


 そんな二人に、進一さんが空いてるテラスベンチに座るように勧める。


「まあまあ、座ってください」

「正徳が3個と言って駆け出して、思わず追いかけてしまったよ⋯ゼエゼエ」

「いやいや、3個も見れるなんて滅多にないことだろ⋯ハアハア」


 正徳さんと賢次さんの乱れた息が落ち着くのを待ち、進一さんがピンクのバケツを二人の前に差し出した。


「これです」


 俺も差し出されたピンクのバケツを覗き込むと、『勇者の魔石』は入っているが、全てが光輝く『魔石』が見当たらない。

 あれ?どこにあるんだ?


「みごとな物だな」

 賢次さんが『魔石』を一つ取り出し、自分の手に乗せて見入っている。


「進一さん⋯いや門守くん、これは素晴らしい!」

 正徳さんも同じ様に『魔石』を手に乗せて見入っている。


「門守くん、これ、借りれるんだよね?」

 正徳さんが『勇者の魔石』を片手に迫ってくる。


「ええ、どうぞ調べてください」

「ああ、じっくり調べるさ!」

 正徳さん、顔が近いです。


「門守君、今度は売るんだろ?」

 正徳さんと入れ替わりで、賢次さんも『勇者の魔石』を片手に迫ってくる。


「それは、今のところないです」

 賢次さん、残念そうな顔をしないで。


 入れ替わり迫る二人に、進一さんが声を掛ける。


「さて、もう一つ面白いのがあるんだ」


 そう言って進一さんが手を開くと、全てが光輝く『魔石』が現れた。


「進一さん、これって⋯」

「こ、これは⋯もしかして?!」


 正徳さんと賢次さん、二人の視線は進一さんの手にする全てが光輝く『魔石』に釘付けだ。


「門守くん、こ、これも貸してくれ!」

「は、はい。良いですよ」

 俺は、正徳さんへ快く答える。


「門守君、こ、これはとんでもないものだ!やったな!よくやった!」

 賢次さん。

 バシバシ肩を叩かないで。痛いから。


「悪いが、これは僕が暫く預かろうと思う。いいね二郎くん」


 そう言って進一さんは、全てが光輝く『魔石』を直ぐにポケットにしまった。


「「あ、あぁ⋯」」

 賢次さんと正徳さんが進一さんのポケットを見詰めながら嘆く。


「まあ、仕方ないな⋯」

「賢次さん後でじっくり見せて貰おう」

 賢次さんが諦め、正徳さんは後に期待する言葉を残す。


「じゃあ、門守くんと進一さん。こっちは借りるね」

 そう言うが早いか、正徳さんはピンクのバケツに『勇者の魔石』を入れながら立ち上がる。


「待て、俺も行く!」

 そう言った賢次さんもピンクのバケツに『勇者の魔石』を放り込む。


 二人はテラスベンチから立ち上がって、庭の外に向かって何かを話ながら歩いて行く。


 賢次さんと正徳さんが去ったテラスには、静けさが戻る。

 そんなテラステーブルに、俺と進一さんの二人が残された。


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