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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
211/279

16-13 魔法と魔力


 俺がやったことは『魔法』なのだろうか?


 『魔石』から『魔素』を取り出すことにも、取り出しを止める事にも成功した。

 取り出した『魔素』を使って、水分子の運動を増やしたり減らして、水の温度を上げ下げする事はできた。

 これは物理的な仕組みを『魔素』で実現したに過ぎない。

 はたしてこれは『魔法』なのだろうか?


 今まで見てきた体験してきた『魔法』と思えるものを並べてみる。


・進一さんとの酔い醒まし

・進一さんの炭への着火

・彼女の『魔力切れ』した俺への癒し

・進一さんの炭の火消し

・彼女の『魔素』の移動

・俺の水の沸騰

・彼女のエロ回復

・俺の水の氷結


 こうして並べてみると、どれもが『魔法』に思えるが、俺のやった事は物理的な仕組みを使ったことだ。

 それでも彼女は『スゴイ』と称えてくれる。


「由美子が飲んでるペットボトル、その水を凍らせたのって『魔法』だと思う?」

「違うんですか?立派な『凍結魔法』だと思いますよ。スゴイことですよ。これから暑くなる時期には便利そうです」

 うんうん。

 夏場には良さそうだね。


「さっき、お風呂の水を温めたのは?」

「かなり便利な『湯沸かし魔法』ですよね。ガス代が節約できます。スゴイことですよ」

 いやいや。

 『魔石』を使った湯沸かしなんてガス代より高いと思うよ。


 ちょっと待て。

 さっきから彼女は『スゴイことですよ。』と俺を称えてくれる。

 もしかして、由美子は出来ないのか?


「さっき、進一さんがお湯を沸かしたことがあるって言ったよね?」

「ええ、兄さんが『魔石』を使って、いとも簡単にお湯を沸かしました」


「由美子は出来たの?」


 さっきは『てへぺろ』で誤魔化されたが、由美子は出来なかったんじゃないか?


「進一さんに出来て、由美子は出来なかったんだね?」

「ええ⋯無理でした。魔力切れしそうになって、兄に止められました」


「由美子も、進一さんと同じ様に『魔石』を使ったけど、『魔力切れ』を起こしそうになったんだね?」

「ええ、それが何か?」


 わかった。

 いやわかった気がする。


 『魔法』が何か。

 『魔力』が何か。

 『魔力切れ』が何か。


 これらを理解できた気がする。


 俺は、意を決した。

 多分だが『勇者の魔石』を作れそうな気がする。


「由美子は、俺の『魔素』が金色だと言ったよね?」

「ええ、もう一度見ます?」


 そう言って、彼女は胸元の『魔石』に片手を延ばす。


「いや、見ないで。『魔力切れ』しそうだから(笑」

「そうですね。あれをやると少しだけ疲れるんです。けど、今は『魔石』があるから大丈夫ですよ」


 そう言って、彼女は乙女の祈りのポーズをしようとする。

 俺は、慌てて彼女の手首を掴んで制する。


「マジでやめて。由美子の言うことは信じてるから」

「センパイ、それは愛ですね♥️」


「うん。愛だよ」

「♥️♥️♥️」

 由美子さん。♥️が三つも出てますよ。

 こらこら、抱き着こうとするんじゃない!


 抱き着こうとする彼女を制して、俺は質問を続ける。


「さっきの『魔素』を移動したのは?」

「『魔素』を移動した?」


「ほら、進一さんから貰った新しいペンダントから、古いペンダントに『魔素』を移動したやつも『疲れる』よね?」

「ああ、あれも疲れます。さっきも久しぶりにやったんで、早速、回復魔法を使いました」


 やはり俺の感じているとおりだ。

 やれそうな気がしてきた。

 ますます『勇者の魔石』を作れそうな気がしてきた。


「よし。じゃあやるよ」

「えっ❤️」


 おい。『やるよ』に反応して♥️を出すんじゃない。



「ハァハァ」

「ゼェゼェ」


「センパイ、やりすぎです!」

「大丈夫、由美子!まだイケる!」


「えぇ~ まだやるんですかぁ~」

「ああ、まだまだぁ~!」


「センパイ、休憩しましょう!」

「そ、そうだな⋯ちょっと休憩するか⋯」


 はい。

 エッチな妄想をしないでね。


「あぁ~空になってる」


 椅子に座り込んで額に汗をかきつつ、乙女の祈りポーズを解いた彼女が、ペンダントトップを見ながら呟く。


 確かに彼女の胸元で輝いていたペンダントトップ、『エルフの魔石』は既に真っ黒な黒曜石になっている。


 それに対して、テラステーブルの上には、金色に輝く『勇者の魔石』が3個と、ギラリギラリどころか全体が光輝く魔石が1個。


「使う?」


 俺はそう言って、全体が光輝く『魔石』を彼女に渡す。


「はい。使います!」


 彼女は全体が光輝く『魔石』を両手で包むように乙女の祈りポーズをする。


「ふぅ~。なんとか落ち着いたけど⋯お腹が空いて、これ以上は無理です!」


 そう叫んで、テラスから小走りに屋内へと消えていった。


 俺も空腹を感じていたが、目の前に置かれた『勇者の魔石』、これを自分自身が作れた達成感の方が勝っていた。


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