2-10 Do you speak English?
「淡路陵はわかるな?」
「わかるよ。あの森の古墳だろ?」
「あの森の全体が古墳なんじゃ。」
「入ったことは無いけど…」
「そこに『門』があるんじゃ。」
「『門』?」
あれ?
その話を俺は知っている気がする。
「その門を閉めるには『勾玉』を使うんじゃ。」
「…」
どこかで聞いた気がする。
どこで聞いたんだ?
「バーチャん。『門』を閉める?」
「そうじゃ閉めるんじゃ。」
あれ?
閉めるだっけ?
「『門』を守るのには…」
「じ、二郎…」
そうだ。『閉める』じゃなくて『守る』と言われた気がする。
「バーチャん。『守る』だと思うんだけど…」
「二郎!誰に言われた!」
突然、バーチャんが声を荒げたので驚いた。
俺も、自分で口にした言葉に驚いた。
「誰に言われたんじゃ!」
「ちょっと待って。思い出すから。」
誰に言われたんだろう。
思い出せ。
誰に言われたんだ?誰だ?
昨日の夜に見た夢だ。
誰に言われたんだ?思い出せ。
「バーチャん。夢を見たんだ。」
「夢?」
「そう。昨日の夜。お爺ちゃんと…」
「お爺さんと?」
「父さんと母さんの夢だ。バーチャんも出てきた…」
「一郎と礼子か…」
「その夢の中で、誰かが言ったんだ。『門を守るにはこれを使う』って…」
「…」
「誰が言ったんだろう?」
「…」
「ごめん。夢の中なので思い出せない。」
「一郎じゃ。」
一郎?一郎父さんだったの?
「『門を守る』の言い方は一郎じゃ。」
「バーチャん。一郎って父さんだよね?」
俺は、バーチャんに自分の見た夢の話をしていることに気がついた。
「バーチャん。夢の中の話だよ。」
「…」
それよりも、さっきのバーチャんの言葉が気になる。
日本人じゃない。
血の繋がりがない。
俺としては、バーチャんのジョークとしか思えないのだ。
「『守る』とか『閉める』も気になるけど、日本人じゃないってジョークでしょ?」
「…」
バーチャんの顔が笑っていない。
「ジョークだよね?」
「I am a human being from a kingdom of another world.」
えっ?
突然、バーチャんが英語を喋り始めた。
「Do you speak English, Jiro?」
「So little.」
バーチャんからの突然な英語に驚き、『少しだけ』の意味で俺も英語で答えてしまった。
「少しなら喋れるんか?」
「えええ?」
なんでバーチャんが英語を喋れるの?