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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
209/279

16-11 湯口


 ゴシゴシ ゴシゴシ ゴシゴシ


 現在、彼女と二人で、お風呂掃除中です。


 俺は、彼女の実家の高級住宅の庭で、『魔石』を使ってペットボトルの水を沸騰させるのに成功した。

 その成功を祝うかのように、彼女から『エルフの魔石』を使った回復を受けた。

 彼女が何を意識して回復をしたかは明確には知らないが、イロエロと元気になった。

 そんな俺と彼女が戯れる様子を見て、彼女の母親の吉江さんに、水を浴びせられた。

 吉江さん、盛った犬じゃないんだからね。


「着替えなさい!ついでに風呂掃除しなさい!」


 吉江さんに言われ、今ここでデッキブラシを握っています。


 俺はトランクスにTシャツ姿で、湯船以外の洗い場全体をデッキブラシで擦って行く。

 一方の彼女は、短パンにTシャツ姿で広い湯船の中をデッキブラシで擦っている。

 一通り、互いの持ち場を洗い終えたので、先程の吉江さんのようにホースから水を出しながら全体を流して行く。


 後は湯船に湯をためれば、直ぐにでも入れる状態になるだろう。


「これって、お湯をためて良いのかな?」

「はい。そこの湯口からお湯が出ます。後ろにレバーがありますよ」


 彼女が指差す先を見れば、湯船に向かう木製の湯口があった。

 その湯口の後ろに回ると、2本のパイプに、それぞれ赤いレバーと青いレバーが付けられていた。


 試しに赤いレバーを動かすと、湯口からお湯が出てきた。

 一旦、赤いレバーを戻し、続けて青いレバーを動かすと今度は水が出てくる。


 そこで俺は、少し考えた。


「由美子、まだ『魔石』はあるよね?」

「は~ん。センパイ、またやってみたいんですか?」


「ああ、やってみたい。さっき感じた『魔素』の動きを、もう一度、確かめたいんだ」

「わかりました。持ってきます」


 そう言って、彼女はダッシュで風呂場から出て行く。

 俺は、残されたデッキブラシなどを片付けていると、彼女が再びダッシュで戻ってきた。


「ハァハァ。センパイ、これですよね」

 そんなに慌てなくても大丈夫だよ。


 息を荒げ、走って来たであろう彼女の手には、『魔石』が入ったピンクのバケツが握られていた。


 俺はピンクのバケツを受け取り、中を覗き込む。

 相変わらず、中の『魔石』はギラリギラリと光ながら俺を睨んでくる。

 一番、俺を睨んでくる『魔石』を選び出し左手に握り込む。


 空いた右手で湯口の後ろの青いレバーを動かし、湯口から水が出てくるのを確認する。

 左手で『魔石』を握り、右手を湯口から流れ出る水に浸す。


「右手に触れる水の分子を激しく振動させる」


 その考えに集中して、左手の中の『魔石』に気をやると、『魔石』が熱を持った感じがした。

 その途端に、左手の中の『魔石』から、右のてのひらに向かって、体の中を何かが通って行くのを再び実感した。


 この俺の体の中を移動しているのが『魔素』だ。


 そう実感していると、右手の上を流れる水が温かくなるのを感じる。


「うん。出来てる」


 右掌てのひらを流れる水は温かくなっている。

 流れる水ならば、沸騰することは無いだろう。


 試しに『魔石』を握り込んだ左手を緩める。

 体の中を流れる『魔素』が、左手から入ってくるのが止まる。

 もう一度、左手で『魔石』を握り込むと、再び『魔石』から流入する『魔素』が体の中を通り、右手へと向かうのがわかる。


「止まれ」


 そう意識すると、左手の中の『魔石』から『魔素』の流入が止まる。


「センパイ。どうですか?」

 そう言いながら、彼女が少したまり始めた湯船に手を入れる。


「少し温かいですね」


「もっと熱い方が良いかな?」

「ええ、出来ます?」


「任せて!」


 俺はそう言って左手を開き、『魔石』の状態を確認する。

 『魔石』はいまだに、ギラリギラリと俺を睨んでくる。

 まだ『魔石』の輝きが強いことを確認したので、その『魔石』を握り込む。


 右手は湯船の中に入れ、湯を混ぜるように動かしつつ意識を高める。


「右手に触れる水の分子を激しく振動させる」


 そう意識すると、再び俺の体の中を『魔素』が通って行き、右手の周囲が温かくなる。

 湯の温度が高くなったなと感じたら、かき混ぜるように右手を動かす。


 その都度、左手の中の『魔石』に集中すると、体の中を『魔素』が通り続けるのを実感する。


 だいぶ湯温が上がってきたところで、彼女が声を掛けてきた。


「センパイ!完璧です(グッ」

「ああ、『魔素』が体の中を移動するのが、ハッキリとわかったよ」


「どうします?」

「どうします?何が?」


「このまま、混浴しちゃいます?」

「しない」


「えぇ~センパイ。混浴しましょうよぉ~」


 残念そうに言う彼女を残して、ピンクのバケツを片手に風呂場から出る。


 脱衣所のバスマットで濡れた足を拭いていると、吉江さんが脱衣所の外から俺を見ていた。


 トランクスにTシャツ姿で、片手には『魔石』のっ入ったピンクのバケツ。

 少し恥ずかしい姿だ。


「吉江さん、洗い終わりました」

「一緒に入らないの?」


 えっ?


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