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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
208/279

16-10 元気ハツラツ


 彼女が持ってきた水の入ったペットボトル2本の内、まずは1本をテラステーブルに置く。


 何かトラブルが起きるのが怖いので、彼女を椅子からから立たせ、何時でも逃げれるように注意を促す。


 彼女がテラステーブルから離れたのを確認して、俺はピンクのバケツから『魔石』を一つ取り出し、左手に握り込む。

 続けて右手でペットボトルを掴む。


 そして心の中で意識する。


「ペットボトルの中の水の分子を激しく振動させる」


 その考えに集中して、左手の中の『魔石』に気をやると、『魔石』が熱を持った感じがした。

 その途端に、左手の中の『魔石』から、ペットボトルを掴む右のてのひらに向かって、体の中を何かが通って行くのを感じた。

 腕の中を、体の中を通る何かが、右のてのひらからペットボトルに移動した途端、右手で掴むペットボトルが熱を持ったのがわかった。


 『もっと激しく』と心の中で意識した途端に、右手のペットボトルが一気に熱を持った。


「熱っ!!」


 俺は慌ててペットボトルを放すとともに、左手に握り込んでいた『魔石』をピンクのバケツに放り込んだ。


 ガラン バシュッ


 ピンクのバケツに放り込まれた魔石が音を立て、続いてペットボトルから音がする。

 咄嗟にペットボトルを叩き、広い庭に向けて放り出す。


 一連の音と、俺の声と行動に、彼女が慌てて後ろに下がった。


「由美子、大丈夫か?!」

「ええ、大丈夫です」


 彼女に何も影響が無いことに一安心だ。


「センパイ、今のって⋯」

「ああ、ペットボトルの水が沸騰したんだよ。こんなに急に起こるなんて想像してなかった」


 俺は庭に転がるペットボトルに近寄る。

 ボトルキャップ付近の水滴に触れると、指先にお湯を掛けられた感じがする。


「うん。確かに熱くなってる」


 後を着けてきた彼女が、同じ様にペットボトルの水に指先を触れる。


「本当だ!センパイ、出来ましたね!」


 彼女が振り返り、感激と驚きが混ざった顔を向けてくる。


「ありがとう。全て由美子のおかげだよ。本当にありがとう」

「やっぱり、センパイはスゴいです!」

 おいおい、抱きつかないで。


「ゴメン、ちょっと次も試したいんだ。良いかな?」

「はい!それよりセンパイ、『魔力切れ』してませんか?」

 彼女が晴れやかな顔で、俺の体の心配をして来る。


「いや、してない。大丈夫だよ」

「辛くなったり、お腹が空いたら直ぐに言ってくださいね」


「大丈夫、大丈夫だよ」

「そうだ!念のために回復しときましょう!」

 そう言って、彼女がようやく抱擁を解いてくれた。


 抱擁を解いた彼女は、胸元のペンダントに両手をやり、目を瞑り乙女が祈るような仕草をする。

 おもむろに瞳を開いた彼女が右掌てのひらを俺の胸に当てる。

 彼女と見つめ合った瞬間、彼女の右掌てのひらから俺の体の中に何かが入ってくるのがわかった。

 その何かは、先程、俺の左手から右手に向かって移動したのに似ている感じがする。

 だが、今度の何かは、どこかに移動して行くのではなく、俺の全身に染み渡って行くようだ。


「ありがとう。これって由美子の愛かな?」

「はい。私の愛です♥️」


 俺の言葉に反応した彼女が、再び抱きついてくる。


 う~ん。実に抱き心地が良い。

 あれ?なんかやばい⋯


 抱きつく彼女に、俺の息子が応え始める。

 何か、一気に元気になって行くのがわかる。


「元気になりました?」

「は、はい。元気です」

 もう。ビンビンです。


 元気な息子を、彼女に気づかれないよう、抱き着く彼女から思わず腰を放してしまう。


 それでも彼女が強く抱き着いてくる。

 更には俺の元気な息子を確かめるように、俺の下半身に彼女の腰が押し付けられる。


「センパイ。元気になりました?」

 おい。下半身をグリグリ押し付けるな!

 おい。俺の腰を両手で持って引き付けるな!


 そんな彼女の顔を見れば、どこか潤んだ瞳をして、俺の元気な息子を確かめるようにグリグリを続ける。


「待て!由美子、待て!」

 グリグリ。


 俺は彼女から逃げようとして後ずさるが、足が縺れて後ろ向きに倒れてしまった。

 咄嗟に、彼女がケガをしないように抱き締める。


 倒れた俺に、彼女は馬乗りに成って、元気な息子に自分の下半身をグリグリ押し付けてくる。


 ああ、由美子さん。

 そんなに刺激しないで⋯


 お願い、やめてぇ~

 ズボンの上から確かめるように触らないでぇ~


 はっ!


 こ、こいつ!

 疲労回復だけじゃなく、別の事も意識したな!





 シャー つ、冷たい!

 えっ、これって、水?!


 突然、俺と、俺に馬乗りな彼女に水が浴びせられる。

 浴びせられた水の元を見れば、テラステーブルの脇に、ホースを持った吉江さんが立っていた。


 ちょ、ちょっと、水を止めてください!


 情け容赦なく、吉江さんがこっちに向かって歩きながら、バシャバシャと水を掛けてくる。


 ちょ、ちょっと、水を止めてください!


 だが、その水のおかげか、彼女も俺の上でグリグリを止めてくれた。



「二人とも!昼間っから何してるの!」

 吉江さん。すいません。

 あなたの娘さんが⋯


「そう言うのは、昼間からやらないの!」

 はい。おっしゃるとおりです。


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