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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
207/279

16-9 仕組み


 ツボを押され笑い転げる彼女を放置し、左手の中の『魔石』をピンクのバケツに入れる。


 空いた両掌てのひらをじっと見て、少し考えてみる。


 メガネ執事さんは、俺に言った。


〉二郎さん、まずは信じる事です


 俺は今まで『信じて』いなかったのだろうか?


 ことの始まりは、この有給休暇取得から始まった。

 いや、正確には有給休暇を取得する前だ。

 『お爺さんの勾玉』が宅配便で届いた時から始まったんだ。

 あれ?有給休暇を取得して、アパートに戻って宅配便を受け取ったから、有給休暇を取得してからか?

 けど、バーチャんは俺の有給休暇取得前に、宅配便を発送している筈だから有給休暇の取得前か⋯


 俺は何を考えてるんだ。

 有給休暇取得の、前か後か何て、どうでも良いじゃないか。


 俺は『門』に関わる話を、信じていないのだろうか?

 今まで幾多の方々から、幾多の話を聞いてきた。

 今まで幾多の事を学んで来た筈だ。

 それらの話を、信じていなかったのだろうか?


「センパイ。大丈夫ですか?」


 笑いのツボを抜け出した彼女が、心配そうに声を掛けてきた。 

 てのひらをじっと見ていたら、心配されるのも当たり前だな。


「由美子こそ大丈夫?セバスチャンとかメガネ執事から抜け出した?(笑」

「プププ⋯多分、大丈夫です。プププ」

 それ、大丈夫じゃないだろ。


 俺の知識では、女性の口にする『多分、大丈夫です』=「かなり厳しいです」だ。


「笑ってても良いけど、俺が『魔力切れ』で倒れないようにサポートを頼むね」

「はい、任せてください!」


「さて、何からやるか?由美子は何から始めるのが良いと思う?」

「そうですね⋯まずは、火を着けてみます?」


 彼女はそう言って、空き缶の上に乗せられた炭を指差す。


「そうだね、この『魔石』を使って、炭に火を着けてみよう」

「センパイ、まずは自分にも出来ると信じましょう。私もそれが最初でしたから」


「なるほど。由美子の言うとおりだね。進一さんが出来たんだ。俺にも出来ると信じよう」

「はい。センパイを全力で応援します♥️」


「メガネ執事のセバスチャン」

「プププ(笑」


 やはり、彼女は笑いのツボからは、完全に抜けていないようだ。



 ピンクのバケツから『魔石』を一つ取り出す。

 『魔石』の様子を確かめれば、相変わらずギラリギラリと俺を睨んでくる。

 そんな『魔石』を左手に握りしめ、右手は空き缶の上の炭にかざす。


 心の中で強く意識する。


 『魔石』から『魔素』を取り出し『魔法』に変えて炭に火を着ける。


 深呼吸をしながらもう一度。

 すぅ~ はぁ~

 『魔石』から『魔素』を取り出し『魔法』に変えて炭に火を着ける。


 気合いを込めて息を止め強く念じる。

 気合いを込めて息を止め、やりたいことを強く意識する。


 そんなことを繰り返すこと数回。

 やはり、空き缶の上の炭に火は着かない。


 試しに右手と左手を入れ替えて試してみたが、結局、炭に火は着かない。


 変化が見られない炭に、試しに手をかざしてみるが、熱くなっている様子もない。

 試しに炭を持ち上げてみると、指先が汚れるだけだ。


 テラステーブルに戻り、『魔石』をピンクのバケツに戻し、椅子に座って待機する彼女に声を掛ける。


「ダメだね。火は着かない。何がダメなんだろう」

「センパイ、何を意識してやってます?」


 彼女から、確認のような問いかけを返されてしまった。


「『魔石』から『魔素』を取り出し『魔法』に変えて炭に火を着ける。かな?」

「センスが無い⋯」

 はいはい。俺にセンスを求めないでください。


 彼女に断言されたので、思わず切り返してしまう。


「センスが無い⋯セバスチャンじゃない?(笑」

「プププ。も、もっと真面目に考えてください!」


「ゴメンごめん。何が足りないのかな?」

「そう言えば兄さんが言ってたのは⋯もっと仕組みを考えろだったかな?」


「仕組み?」

「ええ、前に兄さんが水からお湯を沸かしたことがあって、なぜお湯が沸くのか仕組みを考えれば、由美子にも出来るって言われました」


「由美子は出来たの?」

「てへぺろ」

 笑顔がかわいいけど、『てへぺろ』って何ですか?


「お湯を沸かす仕組みか⋯」

「センパイ、わかります?」


 その時、俺はある考えが閃いた。


「ゴメン、由美子。水を頼んで良い?」

「はい。持ってきます!」


 彼女は言葉と共に、椅子から立ち上がりテラスから屋内へと入って行った。


 俺は持ってきたスマホを駆使して、お湯が沸く仕組み、そして沸騰の原理を調べる。


 炭に火が着く仕組みは⋯詳しく知らない。


 けれども水の温度が上がる仕組みは、水の分子が活発に運動すると水の温度が上がると、理科の授業で学んだ。

 その詳細を調べて仕組みを学び、そのとおりに成るように、『魔石』を使って強く願えば良い。


「はい、センパイ。お水です」

「おお、ありがとう」


 彼女が両手で渡してきたのは、昨夜、寝る前に貰ったのと同じ、500mlのペットボトルが2本だった。


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