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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
202/279

16-4 ペンダント


 『魔力』って…な・ん・で・す・か?


 市之助さんの記録=日記を読んで、『魔力』の言葉で躓いてしまった。


 昨日も躓いた『魔力』なる言葉。

 その意味を知りたくて、進一さんに声を描けようとするが、進一さんは里依紗さんと会話中だ。


「進一さん。じゃあ恭平と出掛けて来ますね」

「パパいってきます(✌️」

「恭平、仲良く遊ぶんだよ」


 里依紗さんと恭平君は、お出掛けするようだ。

 そんな恭平君に、戻ってきた彼女が声をかける。


「恭平ちゃん。結菜ゆいなちゃんによろしくね」

「うん(✌️」

 彼女の問い掛けに恭平君はにこやかに答え、玄関へとダッシュで向かう。

 そんな恭平君を追いかける里依紗さんも小走りだ。


「結菜ちゃん?」

「昨日、遊びに来た結菜ゆいなちゃんのお母さんから、誘われたらしいの」

 ペンダントらしき物を片手に、戻ってきた彼女が答える。


「由美子、持ってきた?」

「うん。一ヶ月ぐらい前に空になったみたいで…」


 彼女はペンダントを進一さんに渡す。

 進一さんは、渡されたペンダントを手に取り、ペンダントトップの黒く丸い石をじっくりと見ている。


 端から見ると、只の黒く丸い石だ。

 きっと、『エルフの魔石』なのだろう。


「これって、空になってるけど…年末に送ったやつだよね?」

「うん、このところ疲れが取れなくて、随分とお世話になりました」

 なるほど。

 『エルフの魔石』は子孫繁栄だけではなく、疲労回復にも使えるのかと彼女の言葉から伺える。


「由美子、かなり仕事が辛かったんだね」

「それもこれも、センパイがいじめるからなんですぅ~シクシク」

 そう言いながら、彼女は俺の隣に座り、腕を絡ませてくる。

 ほらほら、進一さんが見てるから。


「じゃあ、新しいのを持ってこよう」

 ニヤニヤ顔を俺に見せながら、進一さんが席を立った。


 俺は進一さんがダイニングテーブルに置いていったペンダントに手を伸ばし、進一さんの様にペンダントトップをじっくりと観察する。


 昨日見た『魔石』とは違い、只の丸い黒曜石を細かい白銀の爪で止めているデザインだ。

 丸いペンダントトップの黒曜石は、外からの光を受けて俺の顔を鈍く写すだけ。


「これって黒曜石?」

「『エルフの魔石』です。疲れてる時に使ってたんです。かなり効果があるんですよ」

 彼女の言葉で確信した。

 やはり『エルフの魔石』をペンダントトップにあしらったものだ。


「進一さんは、半年前にとか言ってたけど?」

「ええ、いつもは1年ぐらいは持つんですが、これは半年で完全に黒くなって…」


「由美子は昔から使ってるの?」

「ギクッ」

 俺の言葉に彼女の動きが一瞬止まる。


「大学入試でも使ったとか?(笑」

「ギクギクッ」

 おいおい。本当に使ったんですか?


「そういえば、由美子の卒論はかなり優秀だったよね?」

「ギクギクギクッ」

 少しおどおどする彼女が面白い。


「会社でも使ってたの?」

「てへぺろ(✌️」

 『てへぺろ』って何ですか?

 まあ、かわいいから許すけど(笑


「疲労回復は効果絶大ですよ。一度使うと、きっとセンパイも欲しくなります」

「おいおい、そんなに効果があるの?」


「一番は、軽い風邪とかですね。これがあれば微熱も治まるんです。後は筋肉痛にも効果があるんです」

「へぇ~」

 彼女の『筋肉痛』の言葉で、淡路島でバーチャんの農作業を手伝い、筋肉痛に襲われたのを思い出す。


 そんなに効果があるのならば、使ってみたい気もしてくる。


 学業にも効果あり。

 疲労回復にも使える。

 筋肉痛にも効く。

 軽い風邪なら治療できる。

 更には俺の経験した酔い醒まし。


 なんか、危ない薬みたいだ。


「これって…その、危ない薬みたいな…」

「センパイも使いたいですか?」

 少しニヤついた顔で言うな。

 俺の『危ない薬』に反応して、からかってるのだろ。


 彼女はからかい気味に、俺ににじり寄る。


「す~ごく効くんですよ。眠気や疲労感がなくなり、頭が冴えるんです」

 はいはい。ますます危ない薬のうたい文句ですね。


 秦の家では、みんなやってますよ~

 栄養剤と同じだから大丈夫

 かんたんにやせられるよ~

 イライラがとれるし~

 集中力がつきますよ~

 最高に楽しくなれるよ~

 肌がきれいになるよ~

 成績が上がるよ~

 1回だけなら関係ないよ~

 いつでもやめられるよ~

 お金はいらないよ~

 ますます、彼女が俺ににじり寄る。


「とりあえず、試してみましょう。ねっ、センパイ」


「テイッ」


 にじりよる彼女の頭頂部を、後ろから進一さんが銀色のケースで叩く。


「痛ッ!!」

「由美子。お前は、いつから危ない薬の売人になったんだ?ククク」


 俺ににじり寄る彼女を、戻ってきた進一さんが止めてくれた。


「ほれ、新しいのだ。大切に使えよ」


 そう言って進一さんは、先程、彼女の頭を叩いた長細い銀色のケースを渡した。


「お兄ちゃん。いつもありがとう」

「二郎くんは、魔石の怖さを知ってるから、乱用はしないよな?」

 進一さん、それって益々、危ない薬です。


「さて、二郎くんは読み終わった?」

「読んだけど理解できません…『魔力で包む』と書いてありますけど、そもそも昨日も話した『魔力』がわかりません」

 進一さんに教えられた市之助さんの記録=日記を読んで、『魔力』で躓いたと正直に答える。


「ククク。無理もないか。由美子、新しいのを二郎くんに見せて」


 彼女は既にケースから新しいネックレス?

 いや、先端に魔石をあしらっているからペンダントだな。

 それを手に取りじっくりと見定めていた。


 脇から彼女の手元を覗き見ると、先程、彼女が持ってきたのとはデザインが違っていた。

 進一さんが持ってきた銀色のケースに納められている方は、ペンダントトップの魔石の周囲を爪の無い白銀が覆っている。

 言わば、かなり装飾を削ったデザインとなっている。


 その白銀に覆われた黒く磨き上げられた魔石が、内部から銀色の光を放つ。

 外側の白銀と合間って、ペンダントトップがなんとも言えない美しさを見せているのだ。


「お兄ちゃん。これって新作?」

「わかるかい?里依紗がデザインしたんだ」


「やっぱり、義姉さんのデザインかぁ~。センスあるなぁ~」

「由美子、見せてくれる?」

 俺が彼女に言うと、渋々ながら彼女は新しい方を俺に渡してくれた。


 すると、進一さんが古い方を渡してくる。


 俺は両方を手にして、ペンダントトップの魔石を比較してみる。

 古い方は黒曜石だが、新しい方は内部に銀色の光を持つ、明らかに『魔石』とわかるものだ。


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