2-9 鯖の塩焼き
「うまい。これスッゴク美味しい。」
「そうか。そうか。」
「鯖の塩焼きなんて久しぶり。」
「よかよか。」
「この脂の具合が美味しすぎる。」
「確かに脂がのっとるのぉ。」
あれ、バーチャんの年齢ではこの脂はきつかったか?
「バーチャん。脂がきつくない?」
「年より扱いするな。大丈夫じゃ。」
「きつかったら俺が食べる。」
「ダメじゃ。これはワシのじゃ。」
俺のリクエストもあって、無事に晩御飯は『鯖の塩焼き』になりました。
「二郎の希望で焼いたんじゃ。グリルを洗うのは二郎じゃぞ。」
「まかせて!」
スーパーで魚を選ぶときに、シシャモも考えたが鯖の魅力に負けてしまった。
シシャモとか鯖の塩焼きぐらいならば、東京のアパートでも魚焼きロースターを買えば楽しめそうだが後の洗い物が煩わしい。
一人で魚を焼いて一人で洗い物をする。
それも楽しみ方のひとつだろう。
だが休日出勤&連日の終電帰りでは困難だ。
ちなみにシシャモも購入した。
これで明日の晩御飯は、シシャモに決定である。
バーチャんに味噌汁を作ってもらい、鯖は俺が焼いた。
明日のシシャモも俺が焼こうと思う。
ちなみに帰宅してからスマホや社内メールを確認したが、着信もなくメールも俺を指定するものは無かった。
そうした様子から、俺が連日終電帰りをしていた必要性を疑いたくなってきた。
会社に出てパワハラ課長と顔を会わせるから、無駄に仕事が振られて残業が発生しているのではと考えてしまう。
とにかく丸一日だが、仕事を離れると言うのは良いものだと実感できた。
仕事に追われない一日。
畑仕事をして買い物に行き、旨い晩御飯を食べる。
ストレスを感じない一日を過ごしたことで、俺は心にゆとりが出来たのだと思う。
これならば『お爺ちゃんの勾玉』の話を、バーチャんから聞いても受けとめられると思う。
そう考えて、思いきって話題にあげてみた。
「バーチャん。『お爺ちゃんの勾玉』の話を聞かせてくれ。」
「おお、約束だから話しちゃる。」
バーチャんはいつもの調子で答えてくれた。
「しかと聞けよ。」
「はい。聞いてます。」
「ワシもお爺さんも日本人じゃないんじゃ。」
「……」
「二郎の父の一郎も、母の礼子も日本人じゃないんじゃ。」
「………」
「そして二郎とワシは血の繋がりは無いんじゃ。」
「…………」
バーチャん。
ここでジョークですか?
『お爺ちゃんの勾玉』の話ですよね?