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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月4日(火)☀️/☀️
199/279

16-1 スヤ


「何を悩んでるの?」

「意図がわからない…みたいですね」


 あれ?若奥様?

 メイドさんもいる。と、言うことは…


「ホッホッホ」

「…」


 やっぱり、サンダースさんも居るんですね。

 メガネ執事さんは黙ったままですか?


「あなたがきちんと伝えないから~」

「ホッホッホ」

「どうしますか?」

「私が伝えに行きましょうか?」

 メガネ執事さん。立候補ですか?


「ホッホッホ」

「じゃあ、お願いしますね」

「私も同行しますか?」

「いや、使いとして私一人で行きましょう」

 メイドさんは同行しないんですね。


「そうね。元々、これはあなたの役目ですからね」

「ホッホッホ」

「それでは行ってきます」

「お気をつけて」


 あれ、これって夢だよな。


 あの4人が話してるのは、俺の事だよな。

 『意図がわからない』なんて、さっきまで俺が悩んでた事だよな?


「魔力切れもあったから、二郎さんはゆっくり寝てくださいね」


 若奥様の声と共に、俺は再び深い睡眠に誘われた。



「センパイ。起きてください」

 由美子、今朝も綺麗だね。


「え、今、何時?」

「8時20分です」

 しまった!

 彼女の実家で、こんな時間まで寝てるなんて失礼すぎるだろ。


「これに着替えたら降りてきてください。もう、皆、朝御飯も済ませてますよ」


 随分と寝坊してしまった。

 一緒に寝たはずの彼女が起きたのにも気がつかず、かなり熟睡してしまったようだ。


 トイレに行き顔を洗い歯を磨き、着替えを終えて階下に行く。


「おはようございます」

「「おはようございます」」

 ソファーでくつろぐ京子さんと吉江さんに挨拶する。

 寝坊した俺の挨拶に、二人はにこやかな顔で返事を返してくれた。


 ダイニングテーブルに着けば、昨日の朝と同じように、彼女が両手持ちのお盆でご飯や味噌汁を持ってくる。

 彼女が準備してくれた朝食の味噌汁は、俺の好きな玉ねぎと卵の味噌汁だ。

 そして白いご飯と生卵に漬け物。

 まるで実家の朝食を再現したようだ。


 彼女の笑顔を見ながらの朝食は、なんか嬉しい。


「剛志さんと進一さんは?」

「父は朝から仕事で、兄は正徳さんに呼ばれて出掛けました」


「里依紗さんと恭平君は?」

「里依紗先生が勉強を教えてます」


「由美子の今日の予定は?」

「センパイのお相手です(♥️」

 う~ん。キュートな笑顔が可愛いよ。


 そんな笑顔に癒されながら、俺は我儘わがままを口にしてみた。


「なら、お願いがある」

「なんですか?」


「市之助さんのお墓参りに行けるかな?」

「う~ん。ちょっと聞いてきます」


 そう言って彼女が中座し、リビングエリアの京子さんと吉江さんと会話して戻ってきた。


「祖母と母が一緒でも良いですか?」

「もちろんです。京子さんと吉江さんが良ければ一緒に行きましょう」


 どうやら、市之助さんの墓参りを許してくれたようだ。


 朝食を済ませ、2階の部屋からスマホを手にし階下に降りると、吉江さんが京子さんの手を取り、席を立とうとする所だった。


「京子さんと吉江さん、お手伝いさせてください」

「二郎さん、ありがとう。玄関まで母さんを支えてくれる?」


「はい。京子さん、お手伝いします」

「あら、二郎さん。ありがとう」

 京子さんは、にこやかな笑顔を見せてくれた。

 どこか彼女に似ている笑顔に、ドキリとする。


 俺が支える京子さんの足取りは、危ない感じはしない。

 昨日も京子さんを見ていて思ったが、一人で歩くには大丈夫そうな感じだ。

 それでも京子さんが移動する際には、常に吉江さんか里依紗さんが付き添っていた。

 この年齢の方は、小さな段差でもつまずくと危険だと聞く。

 転んで捻挫や骨折などしたら、それでこそ寝たきりに至る可能性もある。


 京子さんの手を取りながら玄関ホールまで行くと、吉江さんが車の鍵を俺に私ながら言ってきた。


「二郎さん。すいませんけど車を回してくれます?アルファードでお願い」


 俺は玄関から小走りに車庫へ行く。

 渡された鍵を見れば、スマートエントリーだった。

 試しに使ってみれば、例のキュンキュンの音がアルファードからしてくる。

 アルファードの運転席に乗り込んで、この車のグレードが、かなり上位クラスだとわかる。


 彼女も加わり、親子孫の3世代が待つ玄関アプローチに車を寄せる。


 吉江さんと彼女が手伝い、京子さんの後部座席への乗車を助ける。

 吉江さんはそのまま後部座席に乗り込み、手伝いを終えた彼女が助手席に入ってきた。


「シートベルトは大丈夫ですか?」


 俺が皆に声をかけると吉江さんが答える


「はい、大丈夫です。それじゃあ由美子、最初に花屋に案内して」

「センパイ、安全運転でお願いします」


 彼女の道案内で花屋へと向かう。

 もちろん安全運転でだ。



 彼女の案内で花屋に寄り仏花を購入したら、再び彼女の案内で隠岐の島の共同墓地へと向かう。


 共同墓地の駐車場に車を駐め、彼女の案内で共同墓地の中を4人で進む。


 共同墓地の所々には、小さなほこらが見受けられる。


「あの小さなほこらみたいなのは?」

「『スヤ』と呼ばれるものです。墓石を立てる迄は、スヤを建てて故人を祀るんです」


 彼女に聞くと丁寧に教えてくれた。


 なるほど、土地によりそうした風習があるんだなと考えながら、『スヤ』の造りを観察させていただく。

 見るからに神様をまつるようなほこらの造りになっている。


「ここがそうです」


 彼女の言葉の先を見れば、そこには見掛けない型の墓があった。


 墓の周囲は石で造られた柵のような物で囲われており、墓の敷地の中央には、身の丈はある石造りの納骨堂が備えられている。

 納骨堂の入口は両脇に柱を配置し庇のような屋根を備え、中央には石で作られた扉が備えられている。

 これで納骨堂に続く参道に鳥居があれば、神社のミニチュアにも見えてしまいそうな造りをしている。

 墓の敷地の中には、膝の高さぐらいの植木が、1、2、3…全部で7本植えられていた。

 敷地内には雑草もなく、目立つゴミもなく綺麗に整備されている。


 日本的な墓石ではない。

 淡路島の零士お爺ちゃんや、一郎父さんと礼子母さんが眠る、日本的な墓を考えていたので少し面食らってしまった。

 よくよく周囲を見ると、同じ様な造形の墓は見当たらない。

 むしろ周囲の墓に雑草が多く、秦家の墓の綺麗に整備された様子と比較してしまう。


 俺は秦家の墓が綺麗に整備されている様子から、思わず口にしてしまった。


「普段から綺麗にしてるんですね」

「剛志さん、賢次さん、正徳さん、そして進一の4人が交代で月に一度は掃除してるんです」


 墓に上がろうとする京子さんの手をとりながら、吉江さんが答えてくれた。


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