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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月3日(月)☀️/☀️
197/279

15-25 里依紗さん


「じゃあ、後は二人でお願いします」


 3人の食事の後片付けを済ませた彼女はそう言い残して、リビングエリアに小走りに向かう。

 よっぽど見たいテレビがあるのだろう。


 俺と進一さんは、昨夜と同じ様にダイニングテーブルで差し向かいで飲むことになった。


「二郎くんは、まだ聞きたいことがあるんだろ?」

「進一さんはお見通しですね。遠慮無く質問させていただきます。ちょっと持ってきて良いですか?」


 俺は進一さんに断りを入れて、寝泊まりしている部屋に行く。

 昨夜、疑問点を書き残したノートパソコンとPadを持って、進一さんの待つダイニングテーブルに急いで戻る。

 すると進一さんは、昨日見せてくれた新型のPadを操作していた。


 ああ、進一さんは勘が良いな。

 俺がPadを取りに行ったのに合わせて、進一さんも自分用のPadを持ってきてくれたんだ。

 そう感じていると、進一さんは俺が持ってきたノートパソコンを見て呟いた。


「おいおい、ノートパソコンに記録してるのか?」

「ええ、『門』に関しては自分の知ってることを越えてるんで、メモしないと頭が追い付かないんです(笑」

 俺は本音で答えつつ、ノートパソコンで昨夜のメモを開く。


「ククク。二郎くんも苦労してるねぇ」

「それでも進一さんと話せて、随分と疑問は消えました。ええと…まずは、恭平君の事です」


「恭平のこと?」

「昨日の恭平君の言葉を覚えていますか?」


「昨日の恭平の言葉?」

「実は昨日、初対面の恭平君に『金色のお兄ちゃん』と言われたんです」


「ククク。『おじちゃん』じゃないんだ?(笑」


 はい。恭平君は良い子です。

 そうじゃなくて、金色の意味が知りたいんです。


「『金色』って何ですかね?」

「恭平は『魔素』の色が見えるらしいんだ」


「えっ?『魔素』の色?」

「恭平が言葉を覚え始めて、色を覚え始めて、その人が持つ『魔素』の色を口にするようになった時は大変だったよ」

 進一さん、大変だったと思いますが『魔素』の色って何ですか?


「それって…恭平君は、俺の『魔素』の色を見て『金色』ですか?」

「うん。どうも恭平は、初対面の人を観察する時に、その人の持つ『魔素』の色を見るようなんだ」


 なるほど。

 確かに子供はそうした所がある。

 子供は初対面の大人には警戒して、どんな大人か観察するだろう。

 恭平君も、初対面の俺がどんな大人か観察したんだな。

 『魔素』の色を恭平君が見えるなら、観察する視点が他の子供と違うのも頷ける。


「じゃあ、恭平君に言わせれば、自分の『魔素』の色合いが金色なんだ…」

「そう。それで僕も二郎くんに興味を持ったんだよ。ククク」


「進一さんも見えるんですか?」

「見えるよ。但し『魔石』の力を借りてだけどね」

 おいおい、進一さん。

 凄いことを言ってるのを理解してます?


「変なことを聞いても良いですか?」

「なんだい?」


「由美子も見えるんですか?」

「ククク。それは由美子に聞いてごらん」


「ですよね…」


 もしかして、彼女も俺が金色に見えるのだろうか?後で聞いてみよう。


「他には?まだあるんだろ?」

「あります。Saikasの件です」

 進一さんから、次の質問に移るように言われたので、Padの件に話題を移す。


「『勇者の魔石』が検索で出なかった件です」

「ああ、それね。二郎くんが勉強不足な証拠だよね(笑」


「勉強不足?」

「二郎くんが自分で学べることだから、ヒントにとどめるよ。Padで市之助さんの記録を読んでごらん。『勇者の魔石』について書いたのがあるから」


 進一さんの、『自分で学べる』にこそヒントがある気がした。


 以前に俺は『隠岐の島の門』で検索して、大量の検索結果を得ているが中身は見ていない。

 『勇者の魔石』は、市之助さん一行が淡路島を訪れた時に作られている。

 淡路島を訪れた以降の記録=日記を読んで学べば、きっとなにかが得られるのだろう。


「まだあるのかい?」

 そう言って進一さんは俺のノートパソコンをクルリと回した。


「ククク。『尻を触る』って何だよこれ(笑。さすがにこれは僕も知らないなあククク」

「本人に聞きたくても聞けないから、謎のままですね(笑」

 しまった。進一さんに見られた。


「出てきた背景か、この付近はエルフ語なんだよ。だけど市之助さんが書いた記録で確か…」

 そう言って進一さんはPadを操作する。

 俺は慌ててノートパソコンを戻した。


「あった、これだよ。『魔術師』だったらしいね」


 進一さんがPadで見せてくれたのは、英文?

 いや、アルファベットが違う気がする。

 それでも翻訳された文章が付いている。


Es biju burvis citā pasaulē.

"私は向こうの世界では魔術師だった。"


Viņš arī uzņēmās izaicinājumu kopā ar varoņiem un svētajiem sakaut dēmonu karali.

"勇者や聖女と共に魔王討伐にも挑んだ。"


 『魔術師』『勇者』『聖女』『魔王』?


「進一さん、これってドラクエの世界ですか?(笑」

「ククク。市之助さんはドラクエよりFFが好きだったらしいよ(笑」


「ハハハ」「ククク」

 思わず進一さんと顔を見合わせて笑ってしまった。


「待てよ。市之助さんが『魔術師』なら『魔法』が使えたんですね?」

「そうだね。向こうの世界で使えた『魔法』を、こっちの世界で試して行く記録もあるよ」

 そうか!

 進一さんはその記録を読んで『魔法』の使い方を学んだんだ。


「もしかして進一さんは、市之助さんの記録で『魔法』を学んだんですか?」

「ククク。それ以外に『魔法』を教えてくれるのがあるかい?」


「けど、それなら剛志さんや賢次さんや正徳さんも『魔法』が…」

「残念。そこに血筋が絡んでるらしいんだ」


 ああ、なるほど。理解できる。

 けれども変だな?

 里依紗さんが進一さんの肩に手を当てて、何かをしていた気がする。


「進一さん、里依紗さんも…」

「私に興味あるの?」


 えっ!

 里依紗さんの声に慌てて振り替える。

 そこにはニヤニヤした里依紗さんが立っていた。


「二郎さん、私は人妻で子持ちよ。それに由美子さんはどうするの?(笑」

「ククク。二郎くん、里依紗への疑問は又の機会だね(笑」


 からかい混じりの言葉を口にする二人を見て、俺はお似合いの夫婦だと痛感した。


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