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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月3日(月)☀️/☀️
196/279

15-24 酒宴の終わり


「二郎くん、門から出てきたのが初代で当代なら、『伊勢の門』を『継いだ』今の当代は誰だと思う?」

「えっ?」

「ハッハッハ。進一、その説明じゃわからんだろ」


「剛志さんも進一さんも、ちょっと待ってください。『伊勢の門』についてはPadで学べますか?それなら自分で学べると思いますが?」

「待て待て、二郎くんは『伊勢神宮』の全てを学ぶ気か?ククク」

「二郎君、『伊勢神宮』の全てを学んでる奴が居ると思うか?ハッハッハ」


 二人の話を聞いて、何となく自分の発言が笑えることに気が付いた。


 伊勢神宮は歴史ある場所だ。

 それでこそ日本の成り立ち、日本創生の神話から始まる場所だ。

 日本創生の神話としての歴史、伊勢神宮の記録、その量を考えたら膨大な量だろう。

 当代を『継ぐ』為には、全ての記録=日記を学ぶことが条件の一つだ。

 そんな膨大な量の記録=日記に挑み、成し遂げた人物が存在するとは思えない。


 『門』の当代を『継ぐ』には、

〉・門から出てきた者の血筋を持つこと

〉・門に関わる全てを学ぶこと

〉・継ぐ覚悟をしていること

〉・自ら継ぐと宣言し意思を示すこと


 これらを達成して『継ぐ』資格を得ると言うのならば、『伊勢の門』=『神の門』には当代を『継いだ』者はいないと考えるのが妥当だろう。


 だとすれば、今の『伊勢の門』に居るのは、門に関わりし人々、『守人』だけだろう。


 そうなると…


 続けて違和感を抱いたのは、進一さんが言っていた言葉、


〉『継ぐ』者は

〉・門から出てきた者の血筋を引く男で

〉・婚姻相手を連れて

〉・伊勢神宮に行き

〉・継げるか否かの判定を貰う


 ここまで思い出して、『伊勢の門』=『神の門』の在り方に違和感を越えた、強い不信感を覚えた。


 この後付けのような条件は、『伊勢の門』の『当代』が示したものでは無く『守人もりびと』が勝手に付けたものでは?


「そうか!わかって来ました!」

 俺は、思わず大きな声を出してしまった。


「ど、どうしたんだ。二郎君!大丈夫か?!」

「おいおい。二郎くんは、もう出来上がったか?」


「だ、大丈夫です。『伊勢の門』の『守人もりびと』の在り方がわかって来ました!」

「ククク。今朝の話かい?」


「そうです。進一さん!今朝の進一さんの話です。進一さんが伊勢神宮に行った話の意味がわかりました」

「ククク」

「あぁ~。進一が伊勢に行った時の話を二郎君にしたのか?」


「うん。二郎くんに話したよ」

「なるほど。それで二郎君は気が付いたんだな?」


「ええ、気付きました。バッチリ気付きました」


「ククククククククク」

「ハッハッハハッハッハ!」

「ホッホッホ」


 二人の笑いに合わせて、俺はサンダースさんを真似て笑ってしまった。



 それからの酒宴は、『伊勢の門』の『守人もりびと』を肴に盛り上がってしまった。


 『伊勢の門』の『守人』は、『伊勢の守人』と呼ばれているそうだ。

 『伊勢の門』=『神の門』であることから、一部の『伊勢の守人』は自ら『神の守人』などと名乗っていると言う。


「自分から『神の守人』と呼ぶなんて、随分と勘違いしてますね(笑」

 俺は、半分呆れ半分冗談で口にした。


「そうそう、自分で『私は神の守人だ』なんて言ってくるんだよ。笑えるだろ。ククク」

「酷いのになると『神の守人として告げる』とか言って来たのもいたぞ」

 進一さんと剛志さんの言葉に、俺は呆れるばかりだ。


「二郎君が由美子と伊勢に詣でると、そうした勘違いしてる奴らが、一人や二人は出てくると思うぞ(笑」

「ククク。僕の時には何人いたかな…いち、にい…さん…」

 進一さん、そんなに居たんですか?


 そんな話で盛り上がっていると、こちらを伺う視線に気が付いた。

 剛志さんも進一さんも気が付いたようだ。


「さて、吉江が時計を気にし出した。そろそろ席を開けないと小言を言われそうだぞ」


 剛志さんの言葉に視線の元のダイニングテーブルを見れば、彼女と吉江さんが会話をしながらも、時計とこちらを交互に見ている。

 京子さんも里依紗さんと恭平君も、既に食事を終えたのか、ダイニングテーブルには見当たらない。


 時計を見れば、7時を回っていた。

 そろそろ酒宴を終わらせて食事を済ませ、世話をしてくれる女性陣を解放する時間だろう。

 リビングソファー席を空けて、大型液晶テレビを女性陣に明け渡すべき時間だろう。


「吉江、そっちで食事して良いか?」

 剛志さんが立ち上がり、吉江さんに声を掛ける。


「ええ、お茶漬けを準備してますよ」

「おお、進一、二郎君。それで十分だよな?」

「「はい。十分です」」


 剛志さん、俺と進一さんに丸投げですか?



 ダイニングテーブルに席を移し、お茶漬けを3人でいただく。

 吉江さんは京子さんを連れて風呂に行き、食事の世話は彼女がしてくれた。


「この後も、進一は二郎君と飲むんだろ?悪いがワシはここまでだ」

「父さん、終わりにするの?今日は早いね?」


「明日は仕事に来いと言われてるんだ。運転手が足りないらしい。二郎君すまんな」

 

 そう言って剛志さんは席を外した。

 考えてみれば今はGWだ。

 隠岐の島に来た観光客の数も多いだろう。

 剛志さんはタクシー会社のお偉いさんと言っていたが、稼ぎ時には自らハンドルを握るんだと納得する。


「二郎くんは、まだ飲むだろ?」

「えぇ、進一さんは大丈夫ですか?」


「これもあるから、大丈夫だよ」


 そう言って、進一さんは胸元を左手で触れる。

 ああ、そこに魔石を下げてるんですね。


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