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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月3日(月)☀️/☀️
192/279

15-20 子孫繁栄


 バーチャんとの通話を切った俺は、リビングエリアのソファーの後ろでウロウロする四人に声を掛けた。


「通話は切りました。会議を続けましょう」


 ソファーに座る女性陣は、ウロウロする四人に反応もせず、俺の声にも反応しなかった。

 それぞれのパートナーが無反応なので、行き場のない四人を無事にダイニングテーブルに連れ戻せた。


「剛志さんと進一さんが、バーチャんから逃げた理由は察しがつきます。淡路島でバーチャんに弟子入りした際に何かあったんですよね?」

「はい。「そのとおりです」」


「それでも自分は、賢次さんと正徳さんのお二人の態度が理解できません。自分の認識では、お二人は『隠岐の島の門』の守人であって、当代になろうとしてバーチャんに弟子入りとかしてないですよね?」

「「……」」


 俺の問いに賢次さんと正徳さんは沈黙する。

 それでも逃げた四人は素直に俺の話を聞いてくれる。


「言えませんか?言えないならバーチャんに聞くだけです」

「二郎君、賢次と正徳は、元々が国から来たんだ。言わば今の『彼ら』の元上司だよ」


「えっ?!」

「桂子さんと零士さんには淡路陵でお世話になりました」

「私も零士さんと桂子さんにはイロイロと…」


 驚いた。

 どこまでバーチャんは関わり続けるんだ。


「賢次さんも正徳さんも、バーチャんと面識があるんですか?」

「ええ、あります。幼い頃の二郎さんとも遊んだ記憶があります」

「零士さんの葬儀には参加させていただきました」


 正徳さんも賢次さんも、マジですか?!

 ごめんなさい、俺には記憶がないです。


「そ、そうなんですか…すいません、何か生意気な態度で接してしまって」

「いえ、二人とも桂子さんには頭が上がりません。返しきれない借りがあるんですが…その正直に言えば苦手で…」

「苦手と言うか不得手でして…」


「そうなんですか…桂子が迷惑をかけてすいません」

「いえいえ「むしろ「お気になさらず」」


 正徳さんと賢次さん。

 不思議なハモリ方です。


「ウホン。二郎君。そろそろ『勇者の魔石』に話を戻して良いかな?」

「ええ、『勇者の魔石』がどんな代物か理解できました。すいませんが、自分は『勇者の魔石』の所有権を主張します」


 剛志さんから言われ、出生の秘密を知った俺は、『勇者の魔石』の所有権を主張した。


 『魔素』が何かは深く理解していないが、自分の体から出た何かが宿った代物しろものだ。

 それを使って他所の誰かが子孫繁栄をするなんて、背中が痒くなってくる。


「二郎君。少し聞いても良いかな?」

「何でしょう?」


「その…使うつもりなのか?」

「使う?何をですか?」


「決まってるだろ!『勇者の魔石』だよ。由美子と一緒になったら使うんだろ?」


 剛志さん。ニヤニヤしないでください。

 賢次さんも正徳さんも。ニヤニヤしないでください。


「(ククク。)」


 進一さん、笑い声がこぼれてます。



「じゃあ、『勇者の魔石』は門守二郎くんの所有で良いですね」

「ワシは異論はないぞ。むしろ二郎君と由美子に使って欲しいぐらいだ(ニヤニヤ」

「楽しみだな(ククク」

「う~ん。かなり高値で売れるんだが(ニヤニヤ」


 進一さんと剛志さんの意見は放置して、賢次さんの言葉に耳を向ける。


「賢次さん。そんなに価値があるものなんですか?」

「そりゃそうさ。他の門の連中が黙ってないよ。確実に跡継ぎが生まれてくるんだよ。理解できるだろ?」


 他の門が黙ってない?

 理解できない言葉なんだが?


「『勇者の魔石』は御懐妊を促すだけじゃないんですか?」

「それなら『エルフの魔石』でも可能だよ。『勇者の魔石』は確実に男の子が生まれるんだよ」


「えっ?!」

「なんだ、門守君はそこまで考えなかったのか?」

「ククク。二郎くんはわかってるようでわかってないね(ニヤニヤ」

「由美子の息子か(ニヤニヤ」

「う~ん(ニヤニヤ」


 俺は皆のニヤニヤ顔に心が折れそうです。


「門守君以外はわかってると思いますが、『エルフの魔石』は懐妊を促すが女子の出生率が高い」


 賢次さんの言葉には驚くしかなかった。

 『魔石』は門を開く以外に、そんな用途があるのかと驚くしかなかった。

 それでもどこか納得できる部分がある。

 市之助さんと京子さんの間には、娘さんが3人(吉江さん、保江さん、美江さん)いるのだ。

 市之助さんは、別世界でのハーフエルフだ。

 それが門を通じて現代に来て、京子さんと結ばれ『エルフの魔石』で子孫繁栄を果たしたのだろう。


「対して『勇者の魔石』では、進一さんと門守君のように男子の出生率が高い」


 賢次さんが説明するが、わずかに2名だろと思うが口には出さない。


「その全てが『門』に関わる当代…門守君は次期当代だと言うことだ」


 俺は何と言えば良いのか思案する。

 だが、知りたいこともある。


「その、聞いて良いですか?」

「何だい、門守君?」


「その…他の門では、そんなに跡継ぎの子供が生まれないのですか?」

「『人種適合』だよ。本当に別世界から来た血筋の場合、こちらの世界では子孫に恵まれないんだよ」


 正徳さんが『勇者の魔石』の分析結果を交えて説明してくれた。


「正徳さんの言うとおりだ、本当の門では、どこも跡継ぎで悩んでるんだ。だからこそ『エルフの魔石』を、まずは欲しがるんだ」


 賢次さんが正徳さんをフォローする。


「その…本当の門と言いましたが、偽の門だと…。なんか上手く言えないんですが…」

「二郎くん、偽の門は脇に置いておこう。本当の門=『本物の門』が魔石を欲しがる理由はわかってくれるかな?」


「ええ、それは理解できました」

「そこで最後に二郎くんに聞きたい」


 進一さんが真顔で聞いてきた。


「Saikasに記録するかい?」

「いえ、しません」


 俺は即答で否定した。

 Saikasに『勇者の魔石』を記録したら、他の門からどんな話が舞い込んでくるかわからない。


「そうだな…二郎君はしたくないよな…」

「大きな取引になりそうだが諦めるか…」


 剛志さんも賢次さんも諦めてくれた。


「門守さん、引き続き計測調査はさせて貰えますか?」

 正徳さんが『勇者の魔石』の継続して調べたいと申し出た。


 だが、俺には気になることがあった。


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