2-8 同級生2
実家近隣のファッションセンターで中学時代の同級生に再会した。
ということは、この後の晩御飯用の食材購入で向かう場所でも同様なケースが想定できる。
少し身構えながらバーチャんに付き添って買い物を進めたが、案の定、3名の同級生に再会した。
さながらプチ同窓会な感じだ。
再会した同窓生の全てが女性なのは、この時間では男たちは仕事中だからだろう。
1名はレジを担当する店員だが、2名の同級生が子供連れで買い物中かつ談話中。
3名共にバーチャんを見つけて挨拶してから、俺に気づくのだ。
「二郎と同級生で子持ちか。」
「あの娘は二人も連れとった。」
はいはい。
バーチャんの曾孫欲しいアピールが少し鬱陶しい。
更には見合いの話まで再燃させようとしたのは勘弁して欲しかった。
同級生に再会して気になったのは、バーチャんの顔の広さだ。
あのショッキングピンクの軽トラ効果もあるのだろう。
農業協同組合繋がりもあるのだろ。
それでも俺の同級生3名共に、バーチャんに繋がりがあるのはどうなんだろう。
地方に長く住めば、そうした繋がりが出来ることは理解できる。
ましてや親子共に暮らせば親同士の繋がりが子にまで進む。
そして今日のように親子同士の繋がりは孫にも及ぶ。
それが地方で長く暮らすということだと学んだ気がする。
但し、そうした地方で長く暮らすことと、地元で見合いをすることは別だと思いたい。
思っても良いよね。
地元で見合いをしたら逃げ道は絶たれるだろう。
悪いが俺は長期有給休暇で帰省しているだけだ。
ましてや見合いをするために帰省したのではない。
そう思っても良いよね。
◆
買い物を終えて実家に戻った。
帰り道にスマホを確認したが、着信は一件も無かった。
LINEにも着信は無い。
お爺ちゃんが使っていた部屋で、ノートパソコンを開いて社内メールを確認したが、15件程度の新規メールはあるが情報共有を目的としたものばかりだ。
名指しをされているメールはないので、特に急いで俺が対応する案件は皆無といえた。
わずか一日だが、有給休暇中の体であることを実感した。
そうだ、Wi-Fiのパスワードをバーチャんに教えてもらわないと。
仏間を覗くと、畳に座り机の上でPadを操作するバーチャんがいた。
「バーチャん。Wi-Fi使いたいからパスワード教えて。」
「Wi-Fiのパスワード?スマホで鑑賞か?」
バーチャん。そろそろ鑑賞に拘るのはやめようね。
そう言いながらもバーチャんはPadを少し操作してから、Padの画面を見せてくれた。
『○✕△99△○✕□567』
バーチャんのPadに映されているWi-Fiのパスワードをスマホに入力すると、無事にWi-Fi接続がなされた。
これで実家でのテレワーク環境が完成したといえる。