表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月3日(月)☀️/☀️
189/279

15-17 テレビドラマ鑑賞会


 剛志さんと共に玄関ホールからリビングダイニングに入ると、ダイニングテーブルには進一さんが一人で座って、Padを操作していた。


 その進一さんが、俺と剛志さんに気付いて声を掛けてきた。


「父さん、それに二郎くん。急で悪いね」

「正徳と賢次から聞いたよ。二人とも直ぐに来るらしい」

「剛志さんと進一さん、緊急会議って何ですか?」


 剛志さんから聞いた『緊急会議』が何かわからず、俺は二人に思いきって聞いてみた。


「聞いてないの?」

「話してないのか?」


 剛志さんと進一さんは顔を見合わせ、互いの言い分を口にする。


「自分は何も聞いてません。何の緊急会議ですか?」

「魔石だよ。二郎くんが充填した魔石だよ」


 進一さんの『魔石』の答えに『魔力切れ』で味わった疲労感と空腹感を思い出す。


「あの魔石を正徳さんが調べて…」

「進一、賢次と正徳が来てからにしよう」


 進一さんの言葉を剛志さんが制した。

 制された進一さんが間を置いて答える。


「…そうだね。二郎くん、スマホとPadを忘れずに持ってきて、是非とも参加して欲しい」

「あの魔石、何かあったんですか?」


「二郎君。さっきも言ったが二人が来てからだ。Padとスマホを取りに行こう」


 今度は俺が剛志さんに制されてしまった。


 俺を制した剛志さんに促され、Padとスマホを取りに行こうとして、リビングエリアのソファーに目が行った。


 ソファーには、そっくりさんが4人と里依紗さんのママ友が2人。

 里依紗さん自身は、お盆に乗せたお茶をみんなに配っていた。

 大型液晶テレビには、録画リストが写っている。

 多分、女性陣で集まってテレビドラマ鑑賞会だろう。


 昨夜寝泊まりした部屋に行こうと2階に上がると、子供達の声が聞こえてくる。

 声の元をたどろうかとも思ったが、彼女が一緒にいる筈だから大丈夫だろうと考え、放置することにした。


 部屋に入り、今朝より整理整頓されていることに気が付いた。

 今朝は軽く畳んだスウェットが、ベッドの上に綺麗に畳まれている。

 きっと、彼女が世話してくれたんだろう。ありがたいことだ。

 そんなことを考えながら、Padを充電器から外しポケットのスマホを確認する。

 

 ((ピンポーン))


 階下から、玄関の呼び鈴が押された音がする。

 賢次さんと正徳さん、剛志さんの話声がするので、二人の到着を知ることが出来た。


 昇って来た階段の手前で立ち止まり、深呼吸をする。


 すぅ~。はぁ~。


 この階段を降りれば、『門』に関わる先輩が4人(剛志さん、進一さん、賢次さん、正徳さん)も居る『緊急会議』とやらに参加するのだ。

 しかも先ほど俺が『魔力切れ』を起こした『魔石』が話の中心だと言う。


 深呼吸で心を落ち着かせ、淡路陵で心に抱いた言葉を思い出す。


〉俺は何なのか。

〉俺が自分で学んで考える。

〉俺が自分で考えて学ぶ。


 もう、皆の話に驚くこと無く、学びを深めよう。


 そう決心して、俺は階段を降りて行った。



「まずは、例の魔石を調べた結果です。現段階でSaikasに載せるのは躊躇われたので紙で準備しました」


 そう言って、正徳さんが自身の分は手元に置いて、A4版の紙をダイニングテーブルに座る4人(俺、剛志さん、進一さん、賢次さん)全員に配った。

 配られた紙を見て、俺は絶句した。

 英語で書かれているのだ。


「すいません。これって日本語版はありますか」


 俺は、配られた紙で話が進むと、直ぐに着いて行けないと判断して、咄嗟に声を上げた。


「二郎君、申し訳ない。正徳、翻訳したのがあるか?」

「いえ、準備してません。門守くん、不明な部分は私から説明するから、これで我慢して欲しい」

「ククク。二郎くん、僕からも説明するから」

「ガハハハ。正徳さん、かなり慌てたんだな」


 皆が英文が当たり前で、俺一人が着いて行けない気がして、少し居心地が悪くなったが、正徳さんと進一さんに頼ることにした。


「細かい数字を説明するより、結論を伝えます。あの魔石は『勇者の魔石』です」

「ククク」

「やったな、門守君」

「さすがは由美子が選んだ男だ!」

「???」


 『勇者の魔石』

 何のことだか、俺はさっぱりわからない。

 『勇者』と言えば、ゲームソフトのドラゴンクエストに出てくるのは知っている。

 そう言えばバーチャんはドラクエよりFFファイナルファンタジーとか言ってたな。

 それに礼子母さんが勇者の娘とか、一郎父さんが勇者見習いとかの記憶がある。


「『勇者の魔石』?何ですかそれは?」

「「「………」」」


 俺の言葉に全員(剛志さん、賢次さん、正徳さん)の動きが止まった。


「ククク。二郎くんは知らないんだね?」

「知りません。Padで調べて良いですか?」


 唯一、動きを止めなかった進一さんへ問う。

 俺は『勇者の魔石』なんて言葉は、始めて聞いた言葉だ。


「門守君は、本当に知らないのか?!」

「門守くん、ちょっと待って!」

「二郎君、ちょっと待って欲しい」


 賢次さんからは再度驚かれ、正徳さんと剛志さんからは、Padでの検索を止められた。


「…良いよ」


 しばらく間を置いて、進一さんは調べても良いと返事をした。


「調べます」


 進一さんの返事に動かされ、俺はPadを起動する。


 Padを操作するのは何日ぶりだろう?

 起動するとユーザーIDとパスワードの入力を求められる。

 確か大阪へ行く前に、アスカラ・セグレ社へ彼女と同行訪問する理由を知った時だ。

 バーチャんから『隠岐の島の門』を教えられ、それを検索したのが最後の筈だ。

 ユーザーIDとパスワードを入力するといつものPad画面が表示される。

 Saikasを起動し、『勇者の魔石』で検索を実行してみる。

 画面中央に『グルグル』が表示される。


「すいません。今、検索中です」

「いいのか?進一…」

「進一さん、大丈夫ですか?」

「「……」」


 剛志さんが進一さんに確認し、正徳さんは心配そうに問いかける。

 進一さんと賢次さんは黙ったままだ。


『グルグル(進捗インジケータ)』が消えて、画面には検索結果0件が表示された。


「あれ?出てきませんが?」

「ああ、そうか…」

「「……」」

「ククク」


 検索結果が0件なのを皆に伝えると、剛志さんは「そうか」と納得し、賢次さんと正徳さんは黙って顔を見合わせる。


 進一さんは、ニヤニヤ顔を俺に見せきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ