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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月3日(月)☀️/☀️
188/279

15-16 火消し壺


 コンロの炭を全て火消し壺に入れ、温度の下がったコンロを片付けたところで、恭平君とお友達がやってきた。


 皆でアイスを食べ終わり、大人のやってることに興味を持ったのだろう。


 俺は子供達に、火消し壺は熱くて火傷するかもしれないから、近付かないように説明した。


「わかった みんな これに さわらない」

「うん さわらない」

「さわらない」


 よし!

 子供達全員に、火消し壺に触らないように約束を取り付けた。


 子供達の興味を、少しでも火消し壺から遠ざけたく思い、この後の予定を聞いてみる。


「恭平君は、まだお友達と遊ぶよね?」

「おうちで おねえちゃんに ほんをよんでもらう(✌️」

「おねえちゃんに ほんをよんでもらう」

「ほんをよんでもらう」


 この後の予定を恭平君に聞くと、✌️サイン付きで元気に答えてくれた。


 家の中で本を読むなら、火消し壺には近寄らないだろう。

 子供達が興味を持って近寄るのが一番怖いので、子供達の安全を第一に考え念のために里依紗さんにも伝えておく。


「里依紗さん。ちょっと良いですか?」


 子供達を見張りながら、里依紗さんに声を掛けると彼女と共にやってきた。


「この火消し壺まだ熱いから、恭平君とお友達を近寄らせないで。火傷するかもしれないから」

「それなら進一さんにも、お願いしときます」

「そうね、お兄さんにお願いしましょう」


 里依紗さんと彼女が、進一さんに頼むと言う。


 俺は子供達と火消し壺への見張りが増えるなら、それで良いだろうと考えていると、里依紗さんが通話を終えた進一さんを連れてきた。

 一方の彼女は、子供達と里依紗さんのママ友さんを連れ立って、屋内へと入るために玄関へと向かって行く。


 これでひとまず安心だなと思い、進一さんと里依紗さんを見ると、何やら話して頷き合っている。

 里依紗さんから進一さんに話してくれたんだなと思っていると、進一さんがコンロの炭に火を着けた時のような姿勢をした。

 左手を胸に当て、右手を開いて突き出す姿勢だ。

 その開いて突きだした右手は、さっきは炭を入れたコンロだったが、今度は火消し壺だ。


 おいおい、まさか!


 また魔法で何かをするのかと進一さんをよく見ると、進一さんの後ろに里依紗さんが同じ様な姿勢で、進一さんの肩に右手を置いているのが見えた。


 フンッ

 シュー


 進一さんの掛け声と共に、空気が抜けるような音がする。

 音の源を探すように見れば、進一さんが差し出した右手の先にある火消し壺からだ。


 進一さんと里依紗さんが体制を解き、進一さんが火消し壺の蓋を開けて確認している。


「消えてる?」

「うん。大丈夫だ。里依紗、ありがとう」


 ちょっと待て。

 お前ら何をしたんだと思い二人に声を掛ける。


「進一さんと里依紗さん!今のは何を!」

「ククク」「フフフ」


 お二人さん。笑い声が意味深です。


「二郎くん、由美子に聞いてごらん」

「そうね。由美子さんなら二郎さんと一緒に出来る筈だから」


 そう言って二人は屋内に入るため、玄関へと向かって行った。


 俺は進一さんと同じ様に、火消し壺を覗き込む。

 火消し壺の口に手を翳すが、何も熱気を感じない。

 これは、中に入れた炭の全ての火が消えているのだ。


 その様子に驚いていると、通話を終えた剛志さんから声を掛けられた。


「二郎君。賢次と正徳が戻ってくる。緊急会議をするから君も参加してくれ」

「???」


 剛志さん、何を言ってるの?


「ああ、そうか。残りのイスとテーブルを片付けるのが先だな。吉江にどやされる」

「…」


 訳のわからない俺は、思考が止まってしまった。


「ほら、二郎君。片付けるぞ」

「…」


「二郎君!」

「は、はい」


 剛志さんに肩を叩かれ、名前を呼ばれ、俺は慌ててイスとテーブルを片付け始めた。



 片付けの終わった高級住宅の庭を見回す。


 どこにも忘れ物が無いこと、俺が足を踏み入れた時と違いがないこと、これらを確認する。

 違いは里依紗さんのママ友の軽自動車が、車庫前に2台駐まっているぐらい。


 これで大丈夫だろうと、同じ様に庭を見回す剛志さんに声を掛ける。


「剛志さん、片付けはこれで良いですか?」

「ああ、大丈夫だろう。じゃあ家に入ろう」


 剛志さんに続いて、再び高級住宅の玄関へ向かうと、剛志さんが全身を手ではたいている。

 俺もそれを見習い全身をはたく。


 全身をはたき終えて、剛志さんと共に玄関に入り、靴を脱ぐと剛志さんから話し掛けられた。


「二郎君。あんな娘だが頼むぞ」

「えっ、ええ。大切にします」


 そこで剛志さんから、満面の笑みを見せられた。


───


※火消しひけしつぼ

火消し壺とは、使用後の炭を素早く消火できる品です。

フタで密閉し、酸素の供給を止めることで簡単に消火が可能です。

次回にも炭を使うのに役立ちます。

バーベキューや焚き火などが終わって炭を使わなくなっても、火が完全に消えるまでには時間がかかります。

また、消えたように見えても火が残っている場合があるので、放置したりゴミ袋に入れたりするのは危険です。

安全に炭を処理するためにも、火消し壺を使用しましょう。


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