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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月3日(月)☀️/☀️
187/279

15-15 片付け


 秦家の高級住宅その庭でのBBQ。


 俺は試したことの無い『魔法』を実行しようとして、『魔力切れ』と呼ばれる状態に陥った。


 『魔力切れ』は、極度の疲労感、強烈な空腹感を俺にもたらした。

 その『魔力切れ』の対価とは呼び難いが、『魔石』に俺の『魔素』を充填し金色の光を宿らすことが出来た。

 極度の疲労と空腹をもたらす『魔力切れ』からは、エルフの血を継ぐ彼女が救ってくれた。

 剛志さんの話によると、エルフの娘はそうした治療的なことが出来ると言う。


 俺が陥った『魔力切れ』の話から、『魔石』への『魔素』の充填に関わる話を剛志さんと進一さんから聞いたが、最後の最後で疑問が湧いた。

 『魔力切れ』の言葉に含まれる『魔力』の語句が、『魔石』にも『魔素』にも『魔法』にも繋がらなかった。

 その話を進一さんと剛志さんに切り出すと、二人は腕を組み押し黙って考え込んでしまった。


 そんな剛志さんと進一さんを眺める俺に、吉江さんが声を掛けてきたのだ。


「二郎さん、二人は飲みすぎて寝てるの?」

「いえ、ちょっと考えてるみたいで…」


「珍しいわね。二人がお酒を前にして黙って考えるなんて。腕組みまでしてるし?」


 俺は吉江さんと話すのに、座ったままでは失礼と思い慌てて立ち上がる。

 剛志さんと進一さんを見れば、腕を組み目をつぶり、思考を深めている感じがする。


「そうだ、二郎さん。体はもう大丈夫なの?」

「ええ、由美子さんの看病で助かりました」


「由美子が『男同士の話』って言ったけど『まだ』続けるの?」

「…」


 俺は、彼女の母親である吉江さんへの返答に詰まった。

 『男同士の話』と言って彼女を遠ざけたが、実際は『門』に関わる話をしていたのだ。

 ここで吉江さんに、『門』に関わる話をしても問題はないのだろうか?

 少しだけ探るように聞いてみるか…


「あの、自分がやらかした…」

「ああ、『魔力切れ』ね。二郎さんも気をつけてね。あれで市之助父さんも死んだぐらいだから」


「えっ?!」

「一人で『充填』はやっちゃダメよ。そうね、今後は由美子が側にいるから、由美子がいる時しかやっちゃダメよ」


「は、はい。そうですね…」

「そうだ、二郎さんのお休みって、次の日曜まででしょ?」


「はい、次の日曜まで休みですが…」

「明後日には、飛行機で大阪よね?」


「今日は月曜だから、明後日水曜に大阪に戻って、早ければ木曜には行けるわね」

「ど…どこへ、行くんでしょうか?」


「お伊勢様よ!何度も言ってるでしょ!」


 吉江さん、こ、怖いんですけど…


「行くわよね?」

「はい。行きます」


 仁王立ちで言われたら拒否できません。


「じゃあ、桂子さんに連絡しとくから」

「はい。お手数をお掛けします」


「それで、『まだ』男同士の話は続けるの?」

「ちょ、ちょっと待ってください」


 剛志さんと進一さんに、まだ話を続けられるか聞こうとして二人を見ると、いそいそと机やイスを片付けていた。


「あら。『もう』お開きにするの?パエリヤも出来たから、それを食べたら片付けね。ねっ、剛志さん」

「「はい。そのとおりです」」


 剛志さんと進一さん。見事なハモリです。


「そうだ、二郎さん」

「はい。何でしょう!」


「『二人の』片付けを手伝ってね」


 吉江さん、仁王立ちで言われ続けたら誰も逆らえません。



 テラステーブルでは、そっくりさん4人がパエリアを食べ終え、アイスか何かのデザートを楽しんでいる。

 一方の里依紗さんとママ友、そして彼女が座ってるテーブルでは、恭平君とお友達がやはりアイスのようなデザートを食べている。


 俺、剛志さん進一さんはパエリアを食べ終え、剛志さんと進一さんの3人でコンロを片付けをしようとしていた。


 プルルル プルルル

 あれ?スマホの着信音?


「はい。進一です」

 ああ、進一さんのスマホか。


 プルルル プルルル

 あれ?また呼び出し音?


「はい。剛志です」

 今度は剛志さんのスマホか。


「二郎君、すまん進一とやっててくれるか?」

「二郎くん、ごめん。父さんと…」

「大丈夫です。一人でも出来ますから」


 そう返事する間もなく、二人とも俺に片付けを任せてスマホで話しを始めている。


 一方の俺は、コンロの炭を火消し壺に入れて行く。

 火消し壺まで準備しているとは、秦家はBBQに精通しているなと思える。


 大学時代にBBQをした時に、炭の処分方法で議論していた連中を思い出す。

 土に埋めれば自然に還ると言う連中と、炭は自然に還らないと一人が反対した記憶がある。


「炭って元が木なんだから土に還るんじゃないのか?」

「いやいや、炭は自然に還らない。炭と木は違う代物だよ」

「どう違うんだ?」

「木が土に還るのは炭素以外の成分が腐るからだよ。けれども炭は炭素が主成分で腐る成分が無いんだ」

「へぇ~」

「だから自然に還らない炭を埋めることは、土の中にゴミを埋めて捨てることと同じなんだよ」

「じゃあ、どうする?」

「このBBQ場の炭の処分方法を確認しよう」

「そうだな。そうしよう」


 あの場では、最後のBBQ場の処分方法を確認しようが決め手となった。

 後で自分で調べて、やはり炭は土に埋めても自然には還らないことがわかった。

 それ以来、俺は『炭は土に還るから』と言う方々を説得する側に回った。

 また炭の火消し方法もいくつか学んだ。

 こうして火消し壺に入れて消化すれば、次回には使えることも学んだ。


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