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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月3日(月)☀️/☀️
184/279

15-12 串肉


 朝から進一さんに連れられ、海岸で黒曜石拾いを体験した。

 その黒曜石を拾いに行く途中で、進一さんから『継ぐ』意味を学んだ。

 『守人』の言葉を知り『当代』の意味も理解できてきた。


 彼女の実家に戻ると、広い庭を活かしてBBQをする準備が進められていた、

 そのBBQを始めるに際して、進一さんが魔石を使った魔法で炭に火を着けた。

 その様子に驚いていたら、進一さんと同じ様に魔法で炭に火を着けるのに挑戦しろと皆が言う。


 皆が注目する中、不可能だと思いながらも、魔法の訓練だと心に言い聞かせ続けること小一時間。

 結果として、多大な疲労に襲われただけで、進一さんから渡された魔石が手汗にまみれただけだった。

 疲労でグッタリしていると、彼女の御親族、秦家の方々との挨拶と質問に襲われた。

 挨拶を重ねるなかで、秦家が『門』との関わりを研鑽けんさんしていることも学べた。


 それにしてもダルさが増してきた。


 体が多大な疲労に襲われている感じがする。

 睡眠不足に襲われているような、何やら思考も纏まらない感じがする。

 朝から石拾いで体を駆使し、多数を学び頭脳を駆使し、幾多の方々と挨拶を交わしたからだろうか?


 ダメだ。


 保江さんと美江さんの会話が、何も入ってこない。

 彼女の御親族の言葉を聞いてはいるが、理解することを、二人からの問いへの答えを返すことを頭が拒み始めた。


 立ち話は無理だ。


「保江さん、美江さん。すいません。ちょっと座らさせてください」

「あら、二郎さん顔色が悪いわ。どうしたの?!」

「美江、由美子呼んできて!」

「二郎君、どうした!」

「あ~ やっぱりそうなるかぁ~」


 進一さん、何がそうなるんですか?

 剛志さんが心配そうに聞いてくる。

 保江さんが妹の美江さんに彼女を呼んで来いと言う。

 美江さんが俺の顔色を心配する。


 大丈夫だ。皆が何をしているかはわかる。


 意識が無くなるとまでは行かないが、立っていることが辛く、イスに座り込んでしまった。


「進一、恭平やお友達も居るから酒は片付けるぞ」

「そうだね。お願いして良い?僕は二郎くんの面倒を見るから」


 剛志さんが、ガタガタとお酒の席を片付けている。

 そうだよな、俺が体調不良で倒れたりする姿は、子供達には見せられない。

 大人用でお酒を準備しているテーブルで具合が悪いとなれば、お酒の飲み過ぎに思われる。

 そんな大人の姿を、恭平君や彼のお友達には見せられない。


 それにしても、このダルさは何だろう。

 睡眠不足に近い感じもするが、何処か違う気がする。

 酒を飲み過ぎて酔っている感じでもない、そもそもビールを一杯しか飲んでいない。

 その程度では酔わない自負はある。


 空腹なのか?

 確かに空腹かも知れない。



「センパイ、大丈夫ですか?飲み過ぎました?」


 彼女が心配そうに俺を覗き込む。

 どうやらイスに座り込んで、少し寝てしまったようだ。


 周囲を見渡せば、そっくり三姉妹は京子さんの居るテラステーブルに戻っている。

 恭平君やお友達は芝生の庭に座り込んで、『おままごと』だろうか楽しそうな声を出している。

 里依紗さんはママ友さんとBBQコンロ前で談笑中。

 剛志さんと進一さんは、移動して新たに準備した大人用の飲酒席でビールジョッキ片手に何の話をしているのだろうか。


「センパイ、何か食べます?」

「ごめん、俺、寝てた?」


「ええ、少し寝てましたね」

「どのくらい寝てた?」


「少しです。さっきより短いですよ」

「さっきより?」


「炭に火を着けようと頑張ってた時です(ニッコリ」


 そこで笑顔ですか?

 どうやら15分ぐらい意識が飛んでいたようだ。


「美江姉さんに呼ばれた時は、ビックリしましたよ」

「すまない。なんかこう体に力が入らなくて…」


「兄も言ってたけど、魔力切れしたんですね。私も経験あります。ダルくて眠くて、お腹が空くんです」

「魔力切れ?経験した?」


「そうです。どうですか?今の気分は?」

「大分楽になったけど…」


「お腹が空いてますよね。私もそうだったから。はい」


 彼女は俺に、これぞBBQと言える串に差した肉を突き出してきた。

 それを見た途端に、自分が空腹なのに気が付いた。


 俺は体を起こそうとして、自分の左手が温く、彼女と手を繋いでいることがわかった。

 彼女が俺の左手と掌を合わせる形で、指を絡ませているのだ。

 慌てて解こうとしたが、逆に彼女が指に力を入れてきた。


「まだダメです。はい、あ~んして」


 そう言って彼女はBBQな串肉を突き出してくる。


「食べにくいんですけど…」

「じゃあ、横にして。はい、どうぞ」


 秦さん。どうして手を繋いで串肉を食べるか教えてください。


 彼女に串肉を持たせたままで食べていると、恭平君がお友達二人とやって来た。


「あ~ なかよしさんだぁ~」

「わたしたちも なかよしだよ」

「なかよしだよ」


 恭平君。両手に華状態ですね。

 恭平君の右手にも左手にも、幼い女の子が手を繋いでいる。


「ゆみこねえちゃん ぼくは かのじょたちと けっこんする」

 恭平君、日本では重婚は犯罪です。


「恭平ちゃん。お姉ちゃんと結婚しないの?」

「えぇ~ おねえちゃんとも けっこんするぅ~」


「ざんねん。由美子お姉ちゃんは、二郎さんと結婚するの♥️」

「じゃあ ゆみこねえちゃんは おにいちゃんに あげる おにいちゃん だいじにしてね」

「きょうへいくん ママに けっこんほうこくしよ」

「けっこんほうこくしよ」


 そう言って、恭平君と女の子二人は、里依紗さんとママ友の元に走って行った。


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