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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月3日(月)☀️/☀️
180/279

15-8 カネの当代


 その後、深呼吸で落ち着いてくれた進一さんは、インチキな門の話を続けてくれた。


「桂子さんが彼らに連絡して事情を話したら、直ぐにSaikasから記録は消えたよ」

 『彼ら』=『国の人』だな。

 5~6年前にバーチャんが『国の人』に連絡したなら、それは眼鏡だろう。


 あれ?

 もしかして、進一さんは『国の人』の眼鏡にも面識があるのか?

 俺としては、そうしたことも気にはなった。

 だが、今の進一さんは、お酒を飲んでるわけでもないのに饒舌に話してくれる。

 俺はそれが少し嬉しくて確認はしなかった。


「他にも、変な奴らが『代替わり』と称して、やって来たよ」

 そう言って進一さんは話しを進める。


・会いに来いと要求する

・若い進一さんに上から目線

・記録=日記で学んでない

・当代になる理由が金銭目的


 そんな奴らの話を、面白おかしくしてくれた。


「進一さん、その笑える方々については、記録=日記で書いて残したんですか?」

「書いたのもあれば、書いてないのもあるよ」


 進一さん。後で楽しく読ませて貰います。



 少し饒舌な進一さんとの時間は、気が付けば終わる程に早かった。

 『楽しい時間は過ぎるのが早い』と言うが、まさにそのとおりだと思う。


 高級住宅な彼女の実家、敷地の手前、昨日の俺が呆然としていた場所で、進一さんに車から降ろされた。


「二郎くん。車を戻してくるから、先に戻ってくれるか?」

「はい。何か持って行く物はありますか?」


「いや、特にないよ」

 そう言い残して、進一さんは軽のSUVを発進させる。


 残された俺が高級住宅の敷地に入ると、高級車が駐められた車庫の反対側、テラス屋根の側で男性二人が何かをしているのに気が付いた。

 よく見れば、出掛けに平神社で作業をしていた二人のようで、一人は剛志さんだとわかったが、もう一人がわからない。

 二人はテラス屋根の下にテーブルを据えようとしている。


 俺は二人の側に寄り、剛志さんともう一人の男性に声を掛ける。


「剛志さん。戻りました」

「おお、お帰り二郎君」

「剛志さん。彼が門守さんかい?」


 俺を『門守さん』と呼ぶ男性、年の頃は剛志さんと同じぐらいだろう。

 その男性の顔を記憶の中で探すが、見たことも名前すらも出てこない。


賢次けんじは初めてだよな。彼が門守二郎君だ」

「やはり門守さんか。秦賢次はたけんじだ、よろしく」

 剛志さんに『賢次けんじ』と呼ばれた男性は、名乗りと共に俺に右手を差し出してきた。

 俺は差し出された手に合わせ、握手をする。


「淡路陵の零士さんと桂子さんの孫、一郎さんと礼子さんの息子だってな?」

「ええ…」


「しかも、由美子の未来の旦那さんとは、剛志さんの所は益々安泰だな。ガハハハ(笑」

 賢次さん。笑い声が豪快です。


「二郎君は初めてだよな。ワシの義弟で保江さんの相方の賢次さんだ」

「堅苦しいのは嫌だから、剛志さんと同じで『さん』付けで呼んでくれ」

 賢次さん。握手した手をブンブンするんですね。


 『保江さん』?

 彼女の叔母さんの一人か?

 確か吉江さん(彼女の母)が剛志さんに


〉明日は保江も美江も来るからね。


 そう、言ってたような記憶がある。


「ありがとうございます。自分も同じです。『門守』では堅苦しいので『二郎』と呼び捨てでお願いします」

「いやいや、淡路陵の次期当代を呼び捨てには出来んよ。そうだな…娘と同年代と聞いているから『門守君』で許してくれ」


 『淡路陵の次期当代』?

 賢次さんはもしかして、門に関わりのある方なのか?

 進一さんの教えにあった『門に関わりし人々=守人もりびと』の一人だろうか?


 失礼だとは思うが、変化球で探ろう。


「すいません。まだまだ自分は雛児ひよっこです。淡路陵の当代は暫くは桂子です。賢次さんは隠岐の島の…守人」

「ああ、『隠岐の門』の守人だよ。ガハハハ」

 賢次さん。そろそろ握手をほど来ませんか?


 変化球がハマり、進一さんの教えを確認することが出来た。

 けれども、なかなか握手を解く(ほどく)気配を賢次さんが見せない。

 賢次さんの顔を見れば笑顔だが、目の奥が笑っていない。


「『守人』なんて言葉を門守君に教えたのは、剛志さんか?それとも進一さんか?」

「ワシじゃないな。二郎君、守人なんて呼ばずに『カネの当代かねのとうだい』と呼んでやれ」


 『カネの当代かねのとうだい』?

 剛志さんの発したその言葉で、賢次さんが握手を解いてくれた。


「おいおい、ここでその呼び名か?門守君はそこまで知ってるのか?」

「二郎君、賢次は一部の当代から『カネの当代』と呼ばれてるんだよ。ハッハッハ」


「おにいちゃん おかえりー!」


 テラスに顔を出した恭平君が大声で俺に声を掛ける。

 突然の恭平君の登場に、剛志さんと賢次さんが慌てて振り替える。


「二郎さん。お帰りなさい。進一さんは?」

 恭平君の後ろには、親子セットで里依紗さんが控えていた。


「進一さんなら、車を置いてくるって言ってましたけど?」

「なら、直に来るだろう。門守君は進一さんと隠岐の島観光かい?」

 俺が里依紗さんに答えると、返すように賢次さんが聞いてくる。


「いえ、石拾いでした(笑」

「あぁ~石拾いね(笑」


 俺は察した。

 賢次さんの納得するような答えに、俺は賢次さんも魔石作りに関わっていると察した。


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