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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月3日(月)☀️/☀️
176/279

15-4 守人


 バーチャんとの電話の後、『勘違いしていた許してくれ』との言葉で、進一さんは話を始めた。


 進一さんとしては、俺が『淡路陵の門』を『継ぐ覚悟をして』『由美子との結婚話』の挨拶に来たと思い込んでいたそうだ。


 進一さんが勘違いしていたがために、『試練』と言う言葉で『継ぐ為の必須事項』を確認していたそうだ。

 そして進一さんが言った、『継ぐための必須事項』を聞いて、俺は驚きが隠せなかった。


 門を『継ぐ』者は


 ・門から出てきた者の血筋を持つこと

 ・門に関わる全てを学ぶこと

 ・継ぐ覚悟をしていること

 ・自ら継ぐと宣言し意思を示すこと


 これらを達成して『継ぐ』資格を得ると言うのだ。


 俺は『全てを学ぶ』なんてしていないし、『継ぐ覚悟』も『宣言』もしていない。

 唯一達成しているのは『血筋』だけだろうが、これも自分から望んだことではない。


 そして進一さんは、俺を悩ませる言葉を続けた。


 『継ぐ』者は、


 ・門から出てきた者の血筋を引く男で

 ・婚姻相手を連れて

 ・伊勢神宮に行き

 ・継げるか否かの判定を貰う


 と言うのだ。


 なるほど、門に関わる者が伊勢神宮=お伊勢様へ行く背景が理解できてきた。

 彼女の母親が『早くお伊勢様に行け』は、こうした背景が含まれているのだろう。


 そして最後に聞きなれぬ言葉を進一さんは告げた。


 『守人もりびと


 門に関わりし人々を『守人』と呼ぶそうだ。

 現時点で守人の筆頭と言うか、代表者になる『継いだ』者が『当代とうだい』と呼ばれるそうだ。



「意味不明ですね。俺には理解出来ない話ですね」

「ククク。二郎くんにしてみればそうだろうね」


「進一さんは、この全てを達成したんですか?」

「最終的に、里依紗を連れてお伊勢様に行って判定を貰って達成したよ」


「じゃあ、それまでは当代じゃないんですか?」

「いや、僕の場合は18歳で自分から『当代』を宣言して、お伊勢様に認めさせた」


「里依紗さんと結婚する前ですよね。未婚でも、その、お伊勢様は認めるんですか?」

「僕の場合は、先代の市之助さんが亡くなっただろ。だから18で当代を宣言した時に、結婚していないことから、お伊勢様の中でも揉めたらしいが、結果的に認めたよ」


「じゃあ、里依紗さんと伊勢神宮に行ったのは?」

「ククク。『里依紗と結婚する。これで文句はないな!』そう啖呵を切りに行ったんだよ」


 この話をしている時の進一さんは、愉快そうだった。

 特に伊勢神宮に行って、啖呵を切った付近は嬉しそうだった。


「進一さん。教えてくれて、ありがとうございます」

「いやぁ、これは桂子さんへのお礼も兼ねてるよ」


「バーチャんへのお礼?どう言うことですか?」

「僕は、桂子さんに弟子入りしてるんだ」


「弟子入り?」

「父も弟子入りしてるよ」


「えっ?剛志さんも?」

「やっぱり二郎くんは、それすらも知らないんだね」


「全く知りません」

「ククク。詳しく知りたいかい?」


「… いや、待ってください」

「何だい?」


「長くなりそうですか?」

「ククク。長くなるね(笑」


「それなら先に用事を済ませませんか?」

「おお、そうだな。よし、行こう!」


 そう言って進一さんはエンジンに火を入れ、再び運転に戻ってくれた。



「弟子入りの話は、剛志さんも含めて聞いた方が良いですね」

「そうだね。二郎くんは何も知らないんだから、父もいた方が良いね」


 進一さんが話そうとした『長くなる』話よりは、俺は別の話を聞きたかった。


 進一さんが勘違いしていた頃の言動を根に持つわけではないが、俺としては先に聞きたいことがあった。


 『門に関わる全て』と『試練』


 この言葉の意味だ。


「進一さん、『門に関わる全て』って具体的に何ですか?」

「う~ん。最低限で言えば、守人…いや先代で良いかな、先代が書いた記録を全て読んで、『門』とは何かを知ることだよ」


「ちょ、ちょっと待ってください。それを言ったら、進一さんは市之助さんの書いた記録…これって日記ですよね?を全部読んだんですか?」

「父も読んだし、僕も読んだよ」


「まじで?」

「うん。全部読んだ。市之助さんが亡くなってから、中学と高校は勉強そっちのけで読み続けたよ」


「凄い量だったんじゃ…」

「日本語で書かれてる分だけね(笑」


「日本語だけ?市之助さんは英語で書いたとか?」

「いや、英語だけじゃないね。市之助さんが書いた古い記録は、エルフ語で書いてるんだよ」


「エルフ語?」

「ククク。二郎くんのところは、零士さんと桂子さんの王国語、そうだ一郎さんの書いた王国語もある。それに礼子さんの英語もあるから大変だろ?」


「英語は翻訳された分を読めるけど、王国語は知らない言葉だから…」

「僕も英語やエルフ語は知らないよ。だから日本語に翻訳された分だけだね」


 一時、気が遠くなりそうだっだが、この機会を逃さないために質問を続ける。


「それと『試練』って何ですか?」

「正にさっきの記録だよ」


「記録?」

「そう各門について先代が記録する。門に関わることを記録する。それを全て読んでるか否かが最初の試練だよ」


「最初の試練?」

「さっきも言ったけど、記録は大量だよね。全てを読んでいれば自分が関わっている門について、他者には質問しないだろ?」


「それって、学んでいるか否かって事ですか?」

「そうだね。自分が関わっている門については自分で記録を読んで学ぶから、他者に聞くのは変なことになる」


「じゃあ自分の門について、他者に質問するのは…」

「私は『門に関わる全てを学んでいません。』って公言するのと同じだよ」


「試練ってそれだけですか?昨日はやたらと理由を求めてましたけど…」

「ああ、あれね。門を継ぐ者、当代になろうとする者に、『継ぐ覚悟』と学びを呼び戻す訓練だよ」


「『継ぐ覚悟』を呼び戻す?」

「『門の全てを』学びました。『継ぐ覚悟』をしました。そこで立ち戻りなさい。継ぐ覚悟をした理由は?」


「??」

「『継ぐ』と言うことは、常にそうしたことを意識させられるんだよ。その為に常日頃から、他者が納得出来る理由を述べれるかを試すんだよ」


 そうしたことを話していると、車はトンネルに入った。

 トンネルを抜けると両脇が山な感じで、もう一つトンネルを抜けると田園風景に戻る。


 バーチャんに電話した時に車は停めたが、それ以外では停まらずに走ってきた。

 信号に掛かることもなく、ここまで順調に来たのだが、少し渋滞した感じだ。


「しまった。二郎くん、今日は5月3日か!」

「急にどうしたんですか?」


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