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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月3日(月)☀️/☀️
174/279

15-2 平神社


「この車で行くから。二郎くんは助手席だね」


 進一さんに言われ助手席に乗り込む。

 シートベルトを忘れずにと言われ再確認すると、進一さんが車を発進させた。


 秦家の高級住宅の敷地を出て右に曲がり、暫くすると道の右側に石造りの鳥居が見えた。


「ここが平神社たいらじんじゃだよ」

 進一さんが車の速度を緩めてくれたので、進一さんと同じ様な作業着を着た方が2名見えた。

 1名は箒を手に掃き掃除、もう1名はしゃがみ込んで草むしりだろうか。

 掃き掃除をしている方の後ろ姿が、何処と無く剛志さんに思える。


平神社たいらじんじゃ?」

「そう。やしろの奥が平神社古墳たいらじんじゃこふんなんだよ」


 古墳?

 進一さんの言葉に引っ掛かりを感じた。


「ちょ、古墳って?まさか『門』があるんですか?」


 進一さんの口元がニヤリとした。


 その進一さんが運転する車は、神社の前を通り過ぎようとする。

 振り返るように見れば、鳥居から奥の社殿らしき建物に続く参道、脇にオレンジ色の瓦屋根の平屋。

 淡路陵のような石造りの柵が在るわけではない。

 むしろ開けていて、誰でも自由に参道を歩いて社へと参拝できる。

 そんな、ご近所の神社のような造りをしている。


「『門』?市之助さんの出てきた『門』のことかな?」

「そうです。進一さん、あんな開けた感じの所に、『隠岐の島の門』が在るんですか?大丈夫なんですか?」


「ククク。淡路陵とはちょっと違うよね」

「ええ、淡路陵は一般人は立ち入り禁止です。ここは誰でも入れるんですか?」


 市之助さんが出てきた『門』が、こんなに開けた場所に在るなんて思いもよらなかった。

 あの様相だと、誰でも『門』に触れられるのではと気になるが、見てみたい気もする。


「二郎くん。古墳が気になるなら、後で行ってみると良いよ」


 行きます。行くに決まってます。


 俺は今まで『門』の実物に出会ったことがない。

 日記から得た乏しい知識で、『米軍の門』は『魔法円』な形なのは知っている。

 『淡路陵の門』は淡路陵の中にあって、一般人の俺では立ち入って見学することは困難だ。

 『米軍の門』も『淡路陵の門』も、その実物の形を想像するだけだ。

 実際に見れるのならば、この目で『門』を見てみたい。

 確かめてみたい。


 そんなことを考えていると車は変則十字路を右に曲がり、正面に広大な畑が見えるT字路に出た。

 そのT字路を右に曲がると、俺が座る助手席の左側は広大な畑。

 進一さんが運転する右側には、日本の田舎で見掛ける大きな家屋が2軒見えてくる。


「この2軒に叔母夫婦が住んでるんだ」

 あらまあ随分とご近所なんですね。

 彼女が午後に来るとか言っていた叔母さん達だな。


 その家屋の先に、町工場のような建物が見える。

 町工場の建物の上部には、出発地の秦家の高級住宅の屋根が見える。

 敷地を出て右に曲がって、変則十字路を右に曲がって、T字路を右に曲がったら戻ってるよな?

 そう思っていると、昨日、タクシーで入ってきたと思わしき道に出た。

 ここで右に曲がったら、秦家の高級住宅だよなと思っていると車は左に曲がった。

 少し走ると、タクシーで来た際の2車線の道路に出た。

 2車線の道路を少し進み、『八尾川やびがわ』と書かれた看板を見ながら橋を渡った頃に、進一さんが驚くことを言ってきた。


「この川向こうで見てきた畑。あれらを叔母夫婦が面倒見てるんだよ」

 そう言われて、改めて川向こうの畑を見るとバーチャんの畑が何十面入るんだろうと思える広さだ。

 店長や整備工場のオヤジさんの畑よりも広い。

 隠岐の島の青い空が似合う広大な畑だ。


「この大きさを夫婦二人ですか?」

 淡路島のバーチャんの畑を思い出しながら、夫婦二人では難しいだろうと要らぬ心配を告げる。


「ククク。夫婦二人じゃ無理だよ。僕や父も駆り出されるよ」

「ですよねぇ~。ハハハ」


「ところで、二郎くんは古墳が好きなのかい?興味があるようだったが?」

「いえ、『門』の方です。あっ!」

 会話をしながら、運転をする進一さんを見れば、ニヤニヤしていた。


 違う。あの神社に、あの古墳に『隠岐の島の門』は無いんだ。

 進一さんは、あそこに『門』が在るとは一言も言っていない。

 きっと別の場所に在るんだ。


「ククク。市之助さんが出てきた場所は平神社古墳だが、今は移転済みだよ。桂子さんの『淡路陵の門』と同じで、今は彼らが守ってるよ」

「そうですよね。あんな開けた場所に『門』があるわけが無いですよね」


「どうして、そう思うんだい?」


 進一さんが返してきた言葉に、驚くと共に詰まってしまった。


 だが、この言葉は返せる。


「進一さん、その質問は『試練』の一つですか?」

「おっと、その付近は鋭くなったね」


 そう言った進一さんは言葉を続けた。


「『試練』の根幹は学ぶことだ。そして自分で考えて答えを見つけることに在るんだ。二郎くんに、少し厳しいことを言うよ」

「……」


「今の二郎くんは、知識が乏しいから、答が知りたくて他者に聞いてしまう」


「けれども、答を知りたがる理由を持っていない。そして答が聞けるとそれを信じてしまう」


 その通りだ。バーチャんの言葉を思い出した。

 サンダースさん=神様ご一行と会った翌日に朝から淡路陵に行き、


〉俺が自分で学んで考える。

〉俺が自分で考えて学ぶ。


 そう心に決めたのに、バーチャんに、お爺ちゃんの勾玉を女神様から貰ったのかと聞いて、急にバーチャんが黙ってしまったんだ。


〉ワシから聞きたいんか?

〉二郎はワシから聞いてどうするんじゃ?

〉どうするんじゃ?


 そうだよ。自分で何も考えてないし、自分で考えて学んでいない。


「更に厳しく言えば、知らないことには疑心暗鬼になる」


 進一さん。

 厳しすぎます。何も言えないです。


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