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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月2日(日)☀️/☀️
171/279

14-22 客間


 進一さんと連れ立ってリビングエリアに行くと、ソファーで彼女と吉江さんが寛いでいた。

 大型液晶テレビには録画リストが表示されている。

 これは声を掛けるにはタイミングが良さそうだ。


「母さん、里依紗が先にお風呂に入るって言ってたよ」

「あら、二郎さん。それに進一も。里依紗さんが何だって?」


「里依紗が先にお風呂を貰います。って言ってたよ。それに二郎くんの部屋を…」

「由美子!勝手に再生しないで。進一、二郎さんの部屋は美江の部屋にって、由美子、待って待って!」


 吉江さんが制するが、大型液晶テレビではテレビドラマの再生が始まる。


「美江叔母さんの部屋で良いんだね?」

 進一さん。

 確認の声を掛けても反応は無いと思うよ。


「美江叔母さんの部屋で良いんだね?」

「「…」」


「里依紗が先にお風呂に入ってるよ」

「「…」」


 やはり反応が無い。

 既に二人とも、再生が始まったテレビドラマな人になったようだ。


「二郎くん行こう。案内するよ」

「はい。お願いします」


 進一さんに続いて、準備してくれた客間に行こうとして、彼女の脇に置かれたウエストポーチに目が行った。

 どうやらダイニングテーブルに移動した際に、俺が置き忘れたのを彼女が預かってくれていたようだ。


「由美子さん。ウエストポーチを取ってくれる?」

 ダメ元で声を掛けると、彼女は俺のウエストポーチを差し出しては来るが、顔は大型液晶テレビに向いたままだ。

 彼女が差し出すウエストポーチを受け取るが、彼女の顔は動かない。


「ありがとう。それとおやすみなさい」

 お礼と就寝の挨拶を述べて、進一さんに続いて2階へと階段を上がって行く。


「あの状態でも聞こえてるんだな」

「ええ、そうみたいですね」


 階段の途中で呟く進一さんに、俺は同意してしまった。



「この部屋を使って。廊下の突き当たりがトイレと洗面台だから」

「ありがとうございます」


 進一さんがドアを開け壁のスイッチを操作すると、6畳間サイズの部屋全体に明かりが灯る。


 部屋を見渡せば、フローリングの床に柔らかな色合いの壁紙。

 モフモフっぽいカーペット、ベッドと羽毛布団、机と椅子に洋タンス、そして俺のキャリーバッグとノートパソコン専用バッグが置かれていた。

 窓にかかるカーテンも含めた室内の感じは、いかにも女性の部屋な感じだ。


「この部屋は全て自由に使って良いよ。そうだ、喉が乾くと困るだろう。水で良いね?ちょっと取ってくる」

「すいません。お手数を掛けます」


 進一さんが部屋を出て行ったので、俺はノートパソコンとPadを取り出し机の上に置いた。

 ノートパソコンの電源を取ろうとしてコンセントを探すと、AC電源、TV端子、電話端子、LAN端子が一体になたコンセントを見つけた。

 ビジネスホテルに備えられているような設備に驚きつつも、遠慮無く使わせて貰う。

 ノートパソコンを開き、確かLANケーブルの短いのがあったはずだとノートパソコン専用バッグの中を探していると、ドアをノックする音が聞こえる。


「二郎くん、水だ」

 ドアを開け新型Padを持った進一さんが、500mlのペットボトルを渡してきた。

 それを受け取ると、進一さんの目線は机の上に置かれたPadに向かった。


「このPadは、二郎くんのかい?」

「ええ、お古です」


「なるほど、桂子さんのお古か(笑」

「進一さんのは新型ですよね?」


「そうだ。Wi-Fi接続のパスワードを教えとくよ」

「ありがとうございます」


 そう言って進一さんは手元の新型Padを操作する。

 俺は急いでウエストポーチからスマホを取り出し、Wi-Fiの一覧を得てみると2つ出てきた。


「あれ?進一さん、近場に接続があります」

「ああ、Wで始まる方を使って」


 そう言った進一さんは新型Padの画面を見せてくれた。

 進一さんの新型Padに映されているWi-Fiのパスワードをスマホに入力すると、無事にWi-Fi接続がなされた。


 だが、淡路島での白い増設コンセントでの盗聴を思い出し、進一さんに盗聴の危険性を考慮して聞いてみた。


「進一さん、もう一つのって大丈夫なんですか?」

「ああ、それは…もしかして、二郎くんは盗聴とかを心配してる?」


 図星だ。もしかして進一さんは盗聴とかをされた経験があるのか?


「それなら大丈夫だよ。確かにもうひとつのWi-Fiは彼らのだけど、悪さをしたら取引停止だから」

「彼らの?それって『国の人』ですか?それに取引停止?」


「『国の人』?なるほど、二郎くんの呼び名はそれか。確かに『国の人』だね(笑」

「隠岐の島では、そうした危険性は無いんですか?」


「無いね。神が来る事もないから。二郎くんの言う『国の人』も興味がないんだよ(笑」


 進一さんがニヤリと笑う。

 その笑いには幾多の意味が含まれている気がしたが、もうひとつの『取引停止』が気になる。


 思いきって直球を投げてみる。


「進一さんの言う『取引停止』は、魔石の事ですね」

「正解。二郎くん、だんだん鋭くなってきたね」


 今の進一さんの言葉で俺は確信した。

 進一さんは本当に魔石を製造して、それを『国の人』に販売して利益を得ているんだ。


「二郎くん。盗聴の心配も無いから、これで今夜は安心して寝れるだろ」

「ええ、盗聴はともかく、かなり疑問が消えて行きそうです」


「じゃあ、おやすみ」


 進一さんからの就寝の言葉に、俺は今日一日の教えに礼を伝えるべきだと心から思った。

 

「進一さん。今日はありがとうございます」


「おいおい、まだ礼は早いよ。島を離れる時まで取っといてくれ(笑」

「そ、そうですね。まだ本題が残ってました」


「良かった。まだ本題に挑む気持ちが残ってるんだね」

「ええ、まだ挑みます」


「わかった、わかった。じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい」


 就寝の言葉を交わした進一さんは、静かにドアを閉めた。


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