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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月20日(火)☁️/☀️
17/279

2-6 農作業


 そうだ、スマホのWi-Fi接続をしておこう。


 腕を組みながらテレワーク環境の不足なども考えていると、机の上に置かれたスマホに目が行く。

 モバイル接続よりはWi-Fi接続の方が良さそうだと考え、スマホが接続できそうなWi-Fiの一覧を得てみると一つだけ出てきた。


 さすがに田舎だ。

 周辺近所のWi-Fiを拾うこともなく、使える接続が一つだけ表示されたのだ。

 これがバーチャんの使っているWi-Fiだろうと当たりを付けて接続してみると、案の定だがパスワードを要求された。


「バーチャんに聞けばわかるかな?」


 再び仏間に行くと、バーチャんはちょうど野良作業姿に着替え終えたところだった。


「バーチャん畑に行くのか?」

「おお、二郎も行くか?」


 バーチャんの言葉に少しだけ考えたが、久しぶりに土いじりも良い気がした。


「俺も行きたいが服が…」

「行くなら作業着に着替えんといけん」


 畑仕事となれば、衣服も其れなりに汚れるので作業着に着替えた方が良い。

 けれども俺には作業着なんて当ては無い。

 持ってきたズボンでも大丈夫だろうかと考えていると、


「ワシのじゃサイズが合わん。待っとれ」


 バーチャんはそう言うと押し入れを開け、奥まで四つん這いになりなながら何かを取り出してきた。

 バーチャんが手にしていたのは、紙袋に入った新品の作業着だった。


「これでどうじゃ?」


 俺は少し黄ばんで埃も着いているビニールを開け、中の作業着を取り出す。

 サイズを見てみると『LL』の表記がある。

 これなら大丈夫だろうと着てみると、案の定大きかった。


「袖や裾はまくれば良かろう。靴は長靴のLで入るか?」


 確かに袖は捲れば良かったが、畑作業ならばむしろ動きやすいかもしれない。

 けれどもさすがに、靴はサイズが合わないと不便だなと思っていると長靴ならLサイズがあると言う。

 試しに履いてみれば大丈夫そうだ。


「バーチャん。これなら大丈夫だ」

「よう似合っとる一郎そっくりだ」


 これって一郎父さんの?


 確かにお爺ちゃんのにしては、サイズが大きい気もする。

 写真でしか知らない父が着るための作業着とは驚いた。



 東京の青空とは違う。

 故郷の空の青さは違う。

 これこそが澄んだ青空というのだろう。


 景色が違う。

 東京とは色合いが違う。

 緑一色とはこの事を言うのだろ。

 視線を遮るものがない。

 東京ならば直ぐに建物が目に入る。

 青空は建物の隙間に見えるもの。


 しかしここで見える青空は、緑の絨毯の先につながるものなのだ。


 そんな景色のなかで、ショッキングピンクの軽トラは目立つ。

 めちゃくちゃ目立つ。


 そのショッキングピンクの軽トラに乗って、畑に来た俺とバーチャん。


 俺は雑草除去なら手伝えるだろうと申し出たのだが、中腰で地を這うように動き続けるのはかなり辛い。

 バーチャんは作物の様子を見ながら、時々、雑草を取ったり軽く耕したり追肥をしているようだ。


 久しぶりの農作業は、なれない姿勢で腰にくる。

 もっとも普段から運動不足な俺。

 慣れない畑仕事など無理なのだろう。

 何度も立ち上がり腰を伸ばす姿勢をする度に、バーチャんが俺を見て笑っているようだ。


「慣れないから、腰が痛むか?」

「バーチャんは毎日だろ?スゴいよな」


「最近は毎日は無理じゃ。二日に一度じゃ」

「それでもスゴいよ」


 その後も黙々と作業を続けて、指定された畑全体の草取りが終わった。


「今日はこれで終わりかな?」

「二郎が手伝ってくれたから、よう進んだわい」


「この後は?」

「買い物してしまいじゃ」


「それなら俺の作業着も欲しいから買いに行こう」

「その服じゃ気に入らんか?一郎のじゃがダメか?」


「いやいや、もう2着ぐらい欲しいし靴も欲しいんだ。それにパジャマも欲しい」

「そんなら飯くって買い物じゃな」


 そう言って片付けをし、再びショッキングピンクの軽トラに乗り込んだ。


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