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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月2日(日)☀️/☀️
168/279

14-19 何に使う?


「進一さん、今のをもう一度、見せてください」

「ダメ」


 えっ??

 俺のお願いの仕方が悪かったのか?


「進一さん、もう一度、魔石を見せて貰えますか?」

「ダメ」

 やっぱり断るんですね。


「どうしてダメなんですか?」

「ほら、それだよ」


 えっ!あっ!そうか!

 理解できた気がする。

 アスカラ・セグレ社がエリックさんが、魔石を欲しがったのと俺がやってるのは同じじゃないか。


 ニヤニヤする進一さんに一本取られた感じだ。

 少し癪だが、逆の立場で考えたら見せる理由もないし、渡す理由もない。

 ましてや、どうしてだと問われても答えられない。


「進一さん、やられた気分ですが理解が深まりました」

「酔ったままだと、理解を深めれないと思ってね」


 それにしても魔石とは凄いものだ。

 魔石でこんなことも出来るなんて、俺は思いもよらなかった。


「今のは、本の一例だよ。実際に見せた方が『魔石』の持つ魅力がわかると思ったんだ」

「ええ、わかってきました。魔石でこんな事が出来るなんて驚きです」


「他に魔石で何が出来ると思う?」

「え、えっ?」


「進一くんは魔石で何が出来るか、どれだけの知識があるんだろうね?」

「知ってるのは、『米軍の門』を開くのに使ったぐらいで、他には知らないんです」


「じゃあ、この魔石を手に入れたら、二郎くんは何に使うんだい?」

「何に使う?」


 そこまで進一さんに言われて、思考を深めてみた。

 酔いが抜けた頭は、色々なことを考え始める。


・魔石を使って門を開いてみる。

 ⇒門を持ってないから出来ない。

 ⇒そもそも何のために門を開くんだ?


・魔石を使って二日酔いを防ぐ。

 ⇒いや、そもそも飲まなければ良い。

 ⇒深酒しなければ二日酔いは防げる。


 他に魔石を使って出来ることは何だ?

 そうだ、他に何が出来るか色々と調べたい。

 ⇒何のために調べるんだ?


「そうだよ、何のために調べるんだ…」


「二郎く~ん」

「え、は、はい。何ですか進一さん?」


 進一さんの俺を呼ぶ声で我に返った。


「二郎くんは、魔石を手に入れたら何に使うんだい?」

「何に使えるか調べたいですが…」


「調べたいですが?」

「何を、どう、何のために調べるかは、まだ決められないです」


「門は開かないのかい?」

「いえ、門は持ってないですから…」


「門を持ってたら?」

「持ってたら…開くでしょうね」


「何のために開くんだい?」

「えっ、何のために?」


「魔石はどうやって作れるかは、知ってるよね?」

「ええ、『米軍の門』では実験で魔石を作ったと学びました」


「じゃあ、話を戻そう。二郎くんが門を持ってるとして、魔石がなかったらどうする?」

「……進一さんに、魔石をくださいって頼みますね」

 俺は出来る限りの笑顔を作り、進一さんの質問に答えてみた。


「スマイルは0円だよね」

「あれ?隠岐の島には無いですよね?」


 思わず進一さんと顔を見合わせ、ニヤニヤしてしまった。


「進一さん、話を戻しますね」

「うん良いよ」


「自分が門を持ってたら魔石が欲しいと進一さんに頼み込みますね。そして門を開いて魔石を作ります。魔石を作るために門を開きます」

「それで自分で作った魔石で何をするんだい?」


「魔石が何に使えるかを調べます」

「何のために?」


「何のために?それはまだ決めてません」

「おしい、もう少しだったね」


 そう言って進一さんは酒の満たされたグラスを軽く持ち上げた。

 俺もそれに合わせてグラスを持ち上げる。

 互いにグラスの半分ほどを飲むが、最初に飲んだ時ほどの旨さを感じない。

 何かアルコール臭が強く感じる。

 いかにも『お酒』な感じがして、もう一杯とかもう一口という気分になれない。

 おかしいなと思いながらも、もう一口飲んでみるが同じ、いや、もっとお酒が飲めないものに感じる。

 あれ?何でだろうと思いながら、もう一口を飲もうとして進一さんと目があった。


 進一さんはニヤニヤしている。

 あっ、これは何かあるなと思い進一さんに聞いてみる。


「これ、お酒が変わりました?」

「いや、変えてないよ。どうかしたかい?」

 そう言いながらも、進一さんはニヤニヤしている。


「同じお酒ですよね?」

「同じだよ。違うのは二郎くんが魔石で酔いを覚ましたぐらいだね」


「そうですよね?副作用ですか?」

「何の副作用だと思う?」


「魔石で酔いを覚ました副作用じゃないんですか?」

「さぁ~どうかなぁ~」


「じゃあ、何だろう」


 俺は諦めずに、もう一度と酒を口にする。

 無理だ。酷く不味いものに感じる。

 口に入れるのに酷く抵抗を感じる。


「二郎くんは、『もうお酒は飲まないから』って言ったよね?」

「ちょ、ちょっと待ってください。それは進一さんに教えられて言っただけです」


「いやいや、それでも言葉を口にしたのは二郎くんだし、心の中で願ったのは二郎くんだよ」

「それはそうですけど、進一さんを信用して…」


 俺はそこまで口にして、気がついた。

 この魔石を使っての酔い醒ましは危険だ。

 と言うか、魔石を使って何かを願い、それを実現するのは危険だ。

 迂闊に余分なことを意識すると、それが実現してしまう。


 俺は確認のために、もう一度、酒を飲めるか試そうとしてグラスに手を伸ばそうとしたが、酒の入ったグラスすら触りたくない気持ちになる。


「進一さん、これは危険すぎます」

「二郎くんもそう思うだろ?」


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