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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月2日(日)☀️/☀️
166/279

14-17 試練


 先程の疑問を、もう一度振り返ってみたが『魔石』の件がどうしても気になる。

 正直に言えば、『魔石』について目の前の進一さんと剛志さんに、色々と聞きたい。


 俺の知る『魔石』の知識は、かなり乏しい。

 『米軍の門』で魔石を入手したこと、核実験で何らかの方法で魔石を輝く状態にしたこと、魔石を使って門を開いたこと、魔石の複製に成功したことぐらいだ。


 二人に『魔石』について、どう聞けば良いのだろうか?

 いや、そもそも俺は『魔石』の何が知りたいんだ?

 どうしてして俺は『魔石』について知りたいんだ?


 あ~もう、考えるのが面倒になってきた。

 彼女と結ばれて、彼女と付き合う覚悟をして、彼女の両親に会って、一緒にお酒を飲んで、それで良いじゃないか。

 自分の興味本意で『魔石』が何かを知ってどうする?


 目の前にある美味しい食事を堪能して、手元のグラスを満たすお酒を飲んで、楽しい会話をすれば良いじゃないか。

 自分の興味に押されて、知識を増やすことにどんな意味があるんだ?


 なんか、どうでも良い気分になってきた。

 きっと、今の俺は酔ってるんだと思う。


「二郎くん。魔石について知りたいけど、今は聞けない感じかな?」

 ギクッ。

 何だ、どうして進一さんは俺の気持ちがわかるんだ?

 しかも進一さんはニヤニヤしてる。

 あれ?剛志さんもニヤニヤしてる。


「進一、桂子さんを思い出すだろ」

「やっぱり父さんも経験あるんだ?」


 な、何の話をしてるんだ?

 桂子さん=バーチャんだよな?


「お二人は、何を思い出してるんですか?」

「いやいや、二郎君。悪かった」

「悪気はないんだ。二郎くん、どうか許してくれ」

 二人に謝られてしまった。

 謝られても俺には何もわからない。


「どうして謝るんですか?お二人は何もしてないですよね?」


 俺がそう尋ねると、剛志さんが進一さんに目配せする。

 進一さんは頷くと口を開いた。


「二郎くん。これは継ぐことを志す者への一種の試練なんだよ」

「試練?」


「進一は乗り越えて継いだんだよな?」

「僕の場合は当代になるしか道が無かったからね。言わば退路の無い道だよ」


「すまんな進一。ワシが継げないばかりに辛い思いをさせて」

「いや、父さんの方が辛いよ。試練を越えても努力をしても、結果的に継げないんだから」


「あのぉ~ 聞いても良いですか?」


 俺は勇気を振り絞って、親子の対話に割り込んでみた。


「継ぐ継がないは、進一さんが教えてくれる話ですよね?」

「そうだね。明日か明後日にでも話すよ」

 進一さんは優しく答えてくれた。


「それで、由美子さんのお父さんが継げな…」

「待った」

 剛志さんに話を遮られた。


「呼びにくかったら『剛志さん』で良いよ」

 アッ!気付いてたんだ。


「世間では、『~のお父さん』と呼ぶのが普通なんだろうが、どうもワシは苦手なんだ」

「そうなんですか?」


「里依紗の時に、『進一さんのお父さん』『進一さんのお母さん』を連呼されて、吉江と話し合ったんだ」

「ハハハ」


「考えてみれば、ワシも市之助さんを『吉江さんのお父さん』と呼んだし京子さんを『吉江さんのお母さん』と呼んでたよ」

「ハハハ」

 だめだ、そうした微妙な話題には愛想笑いしか出来ない。


「里依紗や進一のように、お父さんでも良いぞ(笑」

「ありがとうございます。今日は『剛志さん』で勘弁してください」


「ハッハッハ。すまん、話が逸れたな。それで何が聞きたいんだ?」

「剛志さんが『継げなかった』理由です。今、話していた『試練』が理由じゃないですよね?」


「それが理由じゃないね。父さんは『継ぐ』意思を持ってたんだ。全ての試練を越えたけれど『継げなかった』んだよ」

 剛志さんに代わって進一さんが答えた。


「待て待て、進一。継ぐ継がないの話はお前に任せるが、『継げない』話はワシの領分だぞ」

「おっと、そうだった。父さんゴメン」


 その時、背後に人の気配を感じた。


「あなた達、いつまで飲んでるの!」

 吉江さんが怒りのこもった声を掛けてきた。


「みんな、ご飯食べ終わったわよ。片付けたいから早く食べて!」


 吉江さんに睨まれながら、男3人でスゴスゴと誰もいなくなったダイニングテーブルに向かった。



「桂子お婆ちゃん、見てないドラマの話はやめて!」

「そうじゃな。すまんすまん。録画はしてあるから後で見て良いぞ」


 目の前では風呂上がりの彼女が、Padに写るバーチャんとドラマ談義をしている。


 彼女の手元のPadを覗き見れば、バーチャんは湯上がりビールを楽しんでいるようだ。

 彼女も片手にロックグラスを持ち、海草焼酎を楽しんでいる。


 一方の俺と剛志さんと進一さんは、吉江さんの準備してくれたお茶漬けをいただいている。


「剛志さん聞いても良いですか?」

「おお良いぞ。ワシは二郎君に過酷な試練を与える気はないから、何でも聞いてくれ」

「クックック」

 進一さん、笑い方がちょっと不気味です。


「どうして、継げなかったんですか?」

「血筋だよ」


「血筋?」

「ワシは入り婿なんだ。市之助さんの血が全く無いんだよ」


「どういうことですか?」

「後継者、いわゆる『継ぐ』者になるには、門を出入りした者の血筋が必要なんだよ」

 剛志さん、酔ってます?

 何を言ってるか理解できないんですけど?

 いや、酔ってるのは俺かな?


「進一さん、剛志さんが言ってるのは本当ですか?」

「本当らしいよ。それより先に食べないか?」


「え、えぇ。そうですね」


 ズルズル スルスル ズルズル

 3人でお茶漬けを啜る音に混ざって、時折、バーチャんの声が聞こえる。


 血筋


 確かバーチャんがそんな話をしていた記憶がある。

 先週?その前か?『国の人』が交代の挨拶で来た時だったかな?


 思い出してきたぞ。

 『国の人』が交代の挨拶に来て、俺がマクドでメスライオンに骨までしゃぶられた時だ。


 俺には

 ・『門』についての知識が無い

 ・『門』についての経験が無い

 ・英語ができない


 だから、バーチャんのやっている翻訳の監修を『継ぐ』ことは出来ないと会話した記憶がある。


 その時にバーチャんが


〉じゃが、血筋は両方を持っとる


 剛志さんの言った、『門を出入りした者の血筋』で考えたら俺はどうなんだ?


 礼子母さんは『米軍の門』から出てきた、しかも向こうの世界では勇者の娘。

 一郎父さんは『淡路陵の門』から出てきた、向こうの世界では勇者見習い。


 俺は門から出てきた二人の子供。


 なんか、メチャメチャに『継ぐ』為の血筋が濃い気がしてきた。


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