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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月2日(日)☀️/☀️
162/279

14-13 新型Pad


 恭平君、進一さんとの入浴を済ませ、彼女が準備した衣服に着替える。


 肌着類は俺が東京のアパートでキャリーバッグに詰めたものだが、準備されていたスウェットは某アパレルショップで購入したものだった。


 新品のスウェットを着てみる。

 脱衣所の鏡に何度か写して雰囲気を確かめていると、同じように着替え終わった進一さんが話し掛けてくる。


「なかなか良いスウェットじゃないか。もしかして由美子のチョイスか?」

「ええ、ダメ出しされて衣替えしました(笑」


「里依紗が来るまでは、僕も由美子の着せかえ人形だったよ」


 なるほど。

 金髪イケメンの兄だったら、着せ替え人形にしたくなるのも頷ける。

 その着せ替え人形も、今では義姉の里依紗さんに譲ってるんだよな…

 そして今度は俺が着せ替え人形になるんだな…

 ふと、進一さんを見ると、入浴前に着ていた作務衣の柄違いだった。


 進一さんと彼女や里依紗さんの服選びのセンスについて話ながらリビングダイニングに戻ると、女性陣と男性陣で席が入れ替わっていた。

 リビングソファーに居た女性陣がダイニングテーブルに座っており、恭平くんも子供用の椅子に座っていた。

 一方、酒を交わしながらアルバムを見ていた剛志さんは、リビングのソファーに座り俺と進一さんを手招きしている。


「先にいただきました。良い風呂ですね」

「広いだろ。市之助さんの要望で広目に作ったんだよ」

 そう言う剛志さんを見れば、先程のカジュアルな感じからスウェットに着替えていた。

 これで男性陣は、全てラフな格好になっている。


 リビングソファーテーブルには、風呂に入る前に剛志さんが持ってきた日本酒と焼酎が置かれている。

 勿論、『しいしび』も新しく炙られて皿に盛られていた。

 更には、刺身のお造りまで準備されている。


 これは、今夜はとことん飲まされそうだと目線を動かすと、俺のウエストポーチがソファーに置かれていた。

 それを剛志さんが手に取り、話しかけてきた。


「二郎君。桂子さんにこっちに着いたことを連絡したか?」

「おっと、まだでした」


「由美子が桂子さんのことを気にして持ってきたよ。桂子さんに電話してやれ」

「はい。ちょっと失礼します」


 俺はそう言ってスマホを取り出し、バーチャんに電話をした。


「もしもし。バーチャん?二郎です」

「おお、二郎か。今どこじゃ?」

 バーチャんの声が元気そうだ。


 その時、進一さんが席を外しつつ、俺に何かのジェスチャーをした。

 俺は進一さんのジェスチャーがわからず首を傾げたが、構うこと無く進一さんはリビングダイニングから姿を消した。


「どうしたんじゃ?二郎?」

「ああ、ゴメン。無事に隠岐の島に着いたよ」


「そうかそうか。みんな元気か?」

 バーチャんが、秦家の皆の様子を知りたそうだ。

 目の前では剛志さんが手を差し出し、電話を代われの仕草をしている。


「バーチャん。剛志さんと代わるね」

 そう言って剛志さんにスマホを渡す。


「桂子さんか?二郎君は預かった」

 剛志さん。誘拐犯の仲間入りですか?


 剛志さんがバーチャんと電話をしているのに気がついた吉江さんが乱入してきて、剛志さんからスマホを取り上げる。


「吉江です。二郎さんを返して欲しい?」

 おいおい、それは本格的な誘拐犯だぞ。


 吉江さんの声に気がついた彼女まで乱入してきて、誘拐犯親子が俺のスマホを取り合っている。


 そんな様子を眺めていたら、進一さんがPadとケーブルを持って戻ってきた。

 進一さんは、持ってきたケーブルを使って大型液晶テレビとPadを繋ぐ。

 そして、慣れた手付きでPadの操作を始めた。


 進一さんの操作するPadを見れば、バーチャんが使っているのと同じ新型のようだ。


「やっぱり進一さんもPadを使ってるんですね」

「おお、二郎くんも使ってるんだろ?二郎くんの初日記も読んだよ」


「えっ?」

「随分と真面目に書いてたよね(笑」


「…」

「由美子、桂子さんとの電話を代わってくれるか?」


「桂子お婆ちゃん。進一兄さんが話があるって。代わるね」

 そう言って、彼女は不承不承な感じで俺のスマホを進一さんに渡す。


「もしもし。隠岐の島の当代の進一です。お久しぶりです」


 なるほど、進一さんもバーチャんと面識があるんだな。

 バーチャんと吉江さんは、淡路島でも実に親しげに話していた。

 そして剛志さんとも、親しそうに話している。


 多分と言うか、きっとだと思うが、『門』に関わっての関係なのだろう。

 どんな関係なのかは、今の俺が持っている『門』に関わる知識では、直ぐに理解することは困難な気がする。


「…ええ、わかりますか?それです…」

「はい。その画面で私の名前を…」

「はい。見えてますね。こちらも見えてます」


 そこまで言った進一さんが大型液晶テレビのリモコンを操作すると、画面にバーチャんの顔と進一さんの顔が写し出された。


「じゃあ、電話の方は一旦切りますね」

 進一さんがそう言ってスマホの通話を切り、俺にスマホを戻してくれた。


 誘拐犯親子は、大型液晶テレビに写るバーチャんを驚いた顔で見ていた。



「桂子さん元気そうで」

「おお、京子さんも元気そうだのぉ」


 大型液晶テレビの前に置かれたPadに、京子さんが話しかけている。


 俺や剛志さんに進一さん、吉江さんや彼女は、京子さんとバーチャんが会話する様子が写される大型液晶テレビを眺めている。


「進一さん。あのPadはこんなことも出来るんですね」

「あれは新型Padの機能らしいんだ。昨日、新型のPadが届いて今日が初実験だよ」


「昨日届いたんですか?」

「以前にノートパソコンとSkypeで桂子さんと繋いだけど、桂子さんがノートパソコンじゃ面倒だって言ったらしいんだ」


「確かに、バーチャんはノートパソコンは使わず、Padを使ってるのが多いですね」

「二郎くん」


「はい。何ですか?」

「桂子さんを『バーチャん』て呼ぶの?」


 進一さん。

 ニヤニヤしながら俺を見ないでください。


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